公立高無償化と大学の予算削減

2010年2月8日 月曜日

1月27日の読売新聞に「大学予算減、将来像見えず 高校無償化でしわ寄せ」というタイトルの記事が掲載されていました。

2010年度の政府予算案では、文部科学省の予算総額は5兆5926億円(昨年から5.9%増)。その中で、教育予算費は4兆2419億円(昨年から8.1%増)となっており、共に最近30年間で最も多い額となっています。「公立高無償化」に対する予算として計上された約4000億円も含まれています。

さて、日本のGDPに対する公教育予算(公的支出)の割合ですが、2005年時点のデータではOECD加盟国30カ国の中で最も少ない「3.4%」であることがわかっています。トップはアイスランドの「7.2%」、いかに日本が公教育に予算を投じてきていないかがわかります。日本は塾や家庭教師といったいわゆる「私費負担」が多い分、GDPに対する教育費用の率が押し上げられている形となっております。それでも「公的支出+私費負担」の合計はOECD加盟国中下位4分の1の中に位置しており、先進国の中でも低水準です。

今回の予算増額を受けて、この現状はどれほど改善されるのでしょうか。

ここ30年間で最も多い予算額を得た教育分野ですが、単純に喜べないことも起こっています。タイトルにもありますとおり、大学に対する予算配分が削減されているという点です。

人件費や設備維持費などの必要経費として「運営費交付金」というものを国立大は配分されていますが、こちらは2006年度以降は毎年1%ずつ減らす、という数値目標が掲げられています。2010年度予算案でも1兆1585億円(昨年から0.94%減)と、例年通りの削減幅となっています。

しかし、「グローバルCOEプログラム(昨年から約23%減)」「大学院の教育改革推進プログラム(昨年から約62%減)」「大学の学部教育の改革支援(昨年から約35%減)」といった研究や改革に関する予算も削減されることになっています。

日本の大学の学費は世界でもトップクラスの高さである反面、英タイムズ紙が毎年発表している「世界の大学ランキング」ではトップ20内に東京大学1校がやっとランクインするだけで、日本の大学の国際競争力がまだまだであることが示されています。

そんな状況下での予算削減です。大学関係者からは今後の調査・研究に大きな影響を与えるという声が出ているようですし、日本の大学の国際競争力が更に低下する原因となるかもしれません。

OECD加盟国30カ国中、高校の授業料が無料となっている国が26カ国。そういう意味では日本は先進国と呼ばれているにも関わらず「公立高無償化」についてはひょっとすると遅すぎたのかもしれませんが、大学の授業料をとってみても、OECD30カ国中約半分の14カ国で国立大が無料であるなか、日本は年間約80万円が必要です(国立大・初年度納付金)。

「公立高無償化」は喜ばしいことですが、日本の大学が1校また1校と世界水準に値しているという評価を得るために、大学に対する補助・支援を増やすことも必要なのではないでしょうか。