意外と違う 進路についての高校生と保護者の認識②

2011年3月31日 木曜日

高校生を持つ全国の保護者とその子どもを対象としたコミュニケーションの実態とさまざまな進路観に関するアンケート結果に見られる、「高校生と保護者の間での認識の食い違い」について検証しています。

前回のエントリー「意外と違う 進路についての高校生と保護者の認識①」では「高校生の諸君は進路決定についてなんだかんだ言っても父・母を最も参考にしている」というデータを紹介し、保護者の役割・影響力は大きなものになっていることを示しました。

今回のエントリーでは進路選択の段階で高校生と保護者の間で決定的な意識の差が出ている項目4つを取り上げて、高校生・保護者お互いがどう思っているのかを知ってもらい、両者が歩み寄るきっかけとして欲しいと思います。

次のグラフは高校生の「希望進路」と「進路選択における悩みや不安」についてどれぐらいの保護者が知っているか、親子それぞれの認識を聞いたものです。驚くほど認識のズレが見られます(画像をクリックすると拡大します)。

高校生と保護者の認識のズレ①
まず、「希望進路」について見てみましょう。

高校生の回答を見ると、保護者が自分の希望進路を「よく知っている」という回答は35.6%で、「少し知っている」を合わせると83.3%となり、おおむね親子で共有できていると高校生たちは考えているようですが、一方で保護者自身の認識では子どもの希望進路を「よく知っている」「少し知っている」の合 計で89.4%となり、約6%の差が出ています。

高校生が認識している以上に保護者は知っている「つもり」であることがわかります。ここでまず少し注意が必要ですね。

次に、高校生がもつ進路選択の悩みや不安についての保護者との共有状況を見てみましょう。高校生の回答は「よく知っている」「少し知っている」が 51.8%、保護者の回答は68.4%とどちらも半数を超えてはいますが、差が何と16.6%、先ほど以上に意識に差が出てしまっています。こちらも保護者は知っている「つもり」になっていることがわかります。

保護者の皆さんは高校生のお子さんに「悩みは全部分かっているぞ(のよ)」と軽率には言わない・思わない方が良さそうです・・・。

次に、そもそも高校生とその保護者の間で会話が生じているのか?についてのデータと、その会話の中で保護者がよく口にするフレーズについての調査結果を以下にまとめました(画像をクリックすると拡大します)。

高校生と保護者の認識は意外とズレている②

高校生の回答は「よく話をする」が14.7%で、「たまに話をする」を合わせると75.2%になります。今回は未掲載ですが、男女別のデータを見ますと、女子のほうが「話をする」が多くなっています。

一方、保護者の回答は「よく話をする」が24.4%、「たまに話をする」を含めると89.1%で、どちらも高校生の回答より多くなっています。

ここでも保護者の認識が高校生のそれよりも上回っていることがわかります。「私は自分の子どもとちゃんと話が出来ている」と思っていても、実際には高校生諸君はそう思っていない可能性が高い、ということになります。

最後のグラフでは、進路の話をする時に保護者はどんな言葉をよく使うのかについて高校生と保護者に当てはまる言葉を選択肢からすべて選んでもらったものです。

高校生・保護者ともに回答の最多は「自分の好きなことをしなさい」となっています。この点については認識が一致しているので問題はなさそうです。

高校生は2位に「勉強しなさい」を挙げています。アンケート結果によると、この一言は「やる気が失せる」などマイナス反応ばかり出ているようですから、要注意の一言です。

しかも、この項目のポイント数の差が約14%と、高校生と保護者との間で大きく差が開いている点がこの問題をさらにやっかいなものにしています。保護者は強く言ったつもりではなくても、一言この言葉を聞くだけで高校生は相当苛立つのでしょう。それが上のポイントの差に表れているのだと思います。

保護者が挙げた2位の回答は「自分でよく考えなさい」となっていますが、保護者は子どもを信頼して言ったつもりのこの言葉でも場合によっては「何も考えてくれていない」と捉えられがちの一言ではあります。使いどころが難しい一言だと思います。

一通りアンケート結果を見てきましたが、意外に(予想通り?)高校生と保護者の間で認識が異なっているところがあったことをお分かり頂けたと思います。

特に、保護者の皆さんにとって必要とされるのは「的確なアドバイス」だけでなく「自分の悩みを知ってくれているか?」「希望の進路を把握してくれているか?」という、進路選択以前のベーシックな部分であることをご理解いただきたいと思います。

保護者の皆さんにお願いです。高校生たちから最も信頼されているが故に不用意な一言や無関心な態度をとることは避けていただき、出来るだけ進路選択の一助となるようなアドバイスや振る舞いをしていただければありがたいです。