金蘭千里中高 20分テスト

2011年9月14日 水曜日

金蘭千里中の塾対象説明会に行ってまいりました。

なお、昨年の同説明会時の様子はこちらのエントリー「金蘭千里中高 驚異の大学合格実績」でご紹介していますので、合わせてご一読下さい。

説明会の後に校舎見学をさせていただきましたので、その際に撮影した写真を数点織り交ぜながら金蘭千里中高の様子をご紹介してまいります。

金蘭千里中高①

今回は、金蘭千里中高の教科指導にスポットを当ててご紹介を致します。

タイトルにもありますとおり、「20分テスト」というものを大きな柱として据えておられるのが大きな特徴となっています。これは、平常学習の定着を重視するため月~金の毎朝復習テストを行っており、成績の状況によって授業にフィードバック、生徒の理解を深めるものです。短いスパンでの定着確認となるため、生徒は日常の学習の反省材料に、先生方にとっても指導の反省材料となるのが大きなメリットとなっています。

毎朝テストが実施される代わりに、いわゆる「中間・期末テスト」というものは存在していない、ということになっています。

が、しかし、英国数の3教科に関しては1年に2~4回のテストが課されているそうです。

そして、夏休み終了後には夏休みの宿題を範囲とする「課題テスト」が実施されており、休暇中の学習成果もチェックされます。

大学受験に向けた模試ですが、高2で年2回、高3は年4回の実施。また、中2~高3の間にハイレベルの外部テストを受験して全国レベルの実力をみられています。

金蘭千里中高②

さて、続いては2011年度入試結果です。

180名定員のところ、今春は200名が入学しています。金蘭千里中高では「1クラス30名」が基本となっていますが、毎年定員より多い数が入学されている関係で、だいたい33~4名で1クラスになっている様子です。

入試問題の難易度ですが、基本的に前期と後期で同等とされているそうです。

今春入試において「前期不合格⇒後期の再チャレンジで合格」となった受験生が男子で4名・女子で4名の計8名いる、ということをお教えいただきました。その男子4名は平均で20点、女子4名は平均で23点、それぞれ前期から後期にかけて得点をアップさせたそうです。この8名の中には、前期よりも38点アップした受験生もいるそうです。

金蘭千里中高③

金蘭千里中では今春から社会を廃した3科一本での入試となっています。それについての詳細はこちらのエントリー「金蘭千里中 2011年度入試は3科型入試一本で」でご紹介しています。

社会を入試科目から完全に外してしまうことによって懸念されたのが「入学者の社会の力」ですが、地理で地名を知らない子が例年より多いかなというぐらいで、歴史に関しては例年通りの力を持っていることがわかっており、社会を止めても入学してくる生徒像に変化はなかった、と結論づけられています。

また、入試科目である3科目の中では、特に国語において最近「漢字・語彙の力が落ちている」ことが顕著なようで、入学者に対しては国語の授業を工夫して語彙力の増強に取り組んでいる、との発表がありました。

実は、この語彙力の低下については大学入試の世界でも問題になっています。京都大の理系学部ではごく最近の年度から国語が必須とされていますが、それにはこの国語力の低下が理由として存在しているようです。なんでも、「卒論の文章がめちゃくちゃで読めたものではないことを嘆いた教授陣から、理系であっても入試段階で国語力を計って欲しいとの要望があった」というものです。

国語力の低下は相当深刻な所にまで来ていますが、金蘭千里中高では「読書ノート」という、読書の習慣をつけるために生徒が月に一度読書ノートを書くことで自らの読書について思い返したりするツールを活用するなどして対策されているそうです。

2012年度入試についてですが、変更点などは一切ありません。「運動機能検査」が全員に課されますが、「ラジオ体操」程度のものが実施されているぐらいで、瞬発力や跳躍力などの運動能力の測定にはなっていません。ちなみに、この検査の際は着替える必要もない、ということですから、ご安心ください。

中高進学フェア

2011年度滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率⑤

2011年9月13日 火曜日

2011年度滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率①
2011年度滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率②
2011年度滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率③
2011年度滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率④
に続くエントリーです。

2011年度滋賀県公立高入試問題各教科の小問別正答率をご紹介し、「過去問対策する上でのポイント」「試験を受けるにあたって注意すべき点」についてご紹介していますこのシリーズ、今回で最終回となります。

最終回は英語となります。小問別正答率は以下の通りです(画像をクリックすると拡大します)。なお、昨年度の入試である2010年度の小問別正答率などについてはこちらのエントリー「滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率⑤」でご紹介していますので、合わせてお読みください。

2011年度滋賀県公立高 小問別正答率(英語①)

2011年度滋賀県公立高 小問別正答率(英語②)

なお、今年度の英語の平均点は44.3点(100点満点)でした。

以下、滋賀県教育委員会が発表した解答の分析の一部です。

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大問1の聞き取り問題では、絵を見て答えを選ぶ問題の正答率や、初歩的な会話の流れや内容を聞き取る問題の正答率が高く、中学校の授業で英語を「聞く・話す」活動に積極的に取り組ませている成果が現れている。しかし、具体的な内容を聞き取ったり、前後の流れから内容を理解したりする問題では正答率が低かった。日ごろから、相手が何を伝えようとしているのかを注意しながら聞き、話し手の考えについての中心となる部分を理解するような活動を一層充実させることが望まれる。

大問2は留学生と生徒のスピーチを題材にして、話し手が伝えようとすることを読み取る力や場面や状況に応じて英語で適切に表現する力を見る問題である。英文の基本的な構造を理解する問題では、比較的高い正答率であったが、本文の内容理解が必要な問題については正答率は低かった。日ごろから、相手との関係などを踏まえ、自分の意向を明確にしたうえで適切な表現を用いて書く力を育成することが望まれる。

大問3は、生徒たちと先生の会話を題材に、英語の理解力や表現力などを総合的にみる問題である。日常会話における適切な表現を選択肢から選ぶ問題や、会話の流れを把握しているかをみる問題では、比較的高い正答率であったが、場面や状況に応じて適切に表現する力をみる問題の正答率は低かった。まとまりのある英文を読み、その内容を的確に読み取ったり、内容の事実関係や順序などを整理したりする活動をより一層充実させることが望まれる。また、それにとどまらず、自分の考えや気持ちを明確にしたうえで、適切な表現を用いて応じたり書いたりする活動を取り入れることも重要である。

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今年度の英語の問題は「聞く、話す、読む、書く」の4つを総合的に問うことが意識して作られた感じです。実際に中学校で起こりえるような場面設定で出題されていたり、中学校での学習内容をしっかりと踏まえた問題が出題されていたり、問題の量も適当だったりと、良質な入試問題だったようです。

なお、滋賀県教育委員会からは「全体的には、初歩的な英語を聞いて話し手の意向を理解する力や、英文を読んで大まかな流れをつかむ力はあるが、大切な部分を聞き取る力や的確に読み取る力、相手との関係や相手の立場を踏まえ、自分の意向を明確にしたうえで適切に表現する力は十分に定着しているとは言えない。コミュニケーション能力の基礎を養う観点から、英文の正確な語順や構造を意識させるとともに、英語で表現することへの関心・意欲を高める工夫をする必要がある。さらに、他の生徒が聞いたり読んだりしたことについて、その内容を理解するだけでなく、自分なりの感想や意見などをもち、それをもとにコミュニケーションを図るような指導を一層充実することが望まれる。」とのコメントが発表されています。

英語は読んだり書いたりすることももちろん大切ですが、実際の会話において聞いたり話したりすることがさらに重要です。英語が公用語ではない国の中でも特に日本人の英語力が低いのは、前者である読む・書くことに重きを置かれた英語教育になっているからである、ということは周知の事実です。その点を打開する必要があるのですが、滋賀県公立高の英語の入試問題では、初歩的な英語を聞くことや読むことを通して話し手や書き手の意向を理解して自分の考えを英語で表現する、といった実践的なコミュニケーション能力を問う問題が出されています。

公立高の入試問題でそのような「実践的コミュニケーション能力を問う問題」が出ている以上は、中学生もそれに対応するような力を身につけておかないといけない、ということになります。

よって、今後残り半年ほどでは、特に読む・書くという点だけではない、特にコミュニケーション能力を養うような問題を中心に対策を進めていくことが大切になるのではないでしょうか。

今回の英語についてのご紹介をもちまして、当シリーズの全5回が終了となります。滋賀県の中学3年生の皆さんの入試対策のお役に立てば幸いです。

中高進学フェア

追手門学院中高 あたたかみのある進学校を目指して

2011年9月12日 月曜日

追手門学院中高の塾対象説明会にお邪魔してきました。

追手門学院中高

まずは教育内容についてご紹介しましょう。

中学では次の3つのサイクルを柱にして学習の定着が図られています。

①授業のサイクル:予習⇒授業⇒復習 特に復習に注力
②一週間のサイクル:毎週火曜日に前週の内容についてのテスト「リスタトライアル」が行われ、理解度合いの確認やポイントの整理が行われる
③考査のサイクル:定期考査後に詳しい解説・やり直しを行い、その後ミニ考査も実施される

お話を聞いている限りでは、とにかく「出来るだけ短いサイクルで確認・定着をさせる」ことを念頭に置いている様子が伺えました。「熱いうちに」ということですね。

また、学力上位者向けの取り組みとして、高校のTOKKERS(将来的に東京大・京都大・大阪大・神戸大を目指す生徒たちの集まり)につながるメンバーで構成され「TOKKERS Jr」という、ハイレベルな学びの集団を形成されています。Z会の添削指導を主に用いて実力アップに励んでいるこの集まりですが、学力による選定と希望者で構成されており、中学在校生の約40%がここに在籍しているそうです。

また、中学校に在籍している生徒たち全てを対象とした指導方法として、偏差値のカベを克服するために各教科において学力層に応じた学習方法を系統化させた「層別指導」を考案し、各層の重点内容や教材選定等で変化をもたせておられます。これで、上位層には更に実力をつけてもらえるような仕組み・教材を、一方でちょっと勉強についていけていない生徒にも優しく救いの手が差し伸べられるようにされておられます。

ただ、「どのようにしてクラスを分けるのか」「成績が学年途中で大きく上がった(下がった)場合はどうするのか」といった具体的な運営面については語られませんでした。気になる方は秋の説明会等でぜひ学校に直接お聞きになって下さい。

このように、成績上位層に対してはTOKKERS Jrで、他の者に対しては層別指導やサイクル学習で、という風に学力層ごとにやり方を変えて対応している点が大きな特徴であることははっきりしました。

進路指導面でも他校とちょっと違った方針をお持ちです。「大学合格を目標としない」ことを指導の特徴とされているのがそれで、初歩の段階では「自分を知る」ことから始め、最後(高校を卒業するころ)には進路観・価値観を醸成させる段階まで引き上げる、という壮大なプランとなっています。

なお、高校へ進学する際には追手門学院大手前高も選択可能となっている、という点も付け加えておきたいと思います。

続いては高校の取り組みについてです。

今春より3つのコースに再編されていますが、それぞれのコースの進路目標と募集人数は次の通りです。

英数理数選抜:難関国公立大 40名募集
英数理数Ⅰ類:国公立大 80名募集
英数理数Ⅱ類:私立大 120名募集

文系・理系分けはどのコースも2年進級時に実施される、ということです。

選抜の生徒は全員、先ほども中学校の教育内容の所で簡単にご紹介した「TOKKERS」という、東京大・京都大・大阪大・神戸大などの最難関国公立大を目指すために学習する「クラブ」に入ることが義務付けられています。高校のTOKKERSの活動は月・火・木・金の放課後で、他の運動・文化部には所属出来ないことになっています。ここではZ会の添削を中心にして、英会話・プレゼンといった多くの分野を跨いだ学習を行う、というのが大きな特徴です。「ただ闇雲に勉強だけをするクラブ」ということではない、ということです。

Ⅰ類・Ⅱ類に関しては、週ごとに定着度を確認する「週サイクル学習(リスタ)」を中心にした学習プログラムで学力の定着を図られています。

また、中学校と同様に偏差値のカベを克服するために各教科において学力層に応じた学習方法を系統化させた「層別学習プログラム」を考案し、各層の重点内容や教材選定等で変化をもたせておられます。

高校でも上位層に対してはTOKKERSで、他の者に対しては層別指導やサイクル学習で、という風に学力層ごとにやり方を変えて対応している、ということになります。

さて、今春の大学合格実績はどうだったのでしょうか。

国公立大は大阪大2名・神戸大4名を含む30名(昨年12名)、関関同立225名(昨年90名)、産近甲龍249名(昨年197名)と、いずれも昨年から大きく伸ばしておられます。また、早・慶・上智・東京理科・関関同立の合計現役進学者数が大阪府内94校中でベスト10入りしている、ということも明らかになっています。

説明会の冒頭で、「あたたかみのある進学校」という言葉が出ていました。「成績上位者も、勉強が苦手な子も、みんなが自分の成長を感じることが出来て、自分自身を前向きにとらえられるようになってもらいたい」との思いからTOKKERS、層別指導、サイクル学習といった形で、特定の成績層の生徒だけに偏らないシステムが生まれたのだと思います。そんなシステムを作りだされた先生方の思いがあれば、きっと「あたたかみ」を生みだし続けていくことでしょう。

中高進学フェア

立命館大 文学部・理工学部で大きな変更

2011年9月9日 金曜日

立命館大の高校・予備校対象説明会に行ってきました。

立命館大

まずは大学の概要から。

学生数は約33,000名、衣笠Cに16,882名(内女子8,169名・女子比率48.4%)・BKCに16,100名(女3,585名・女子比率22.3%)という内訳になっています。2つのキャンパスには合計で13学部ありますが、衣笠Cは文系学部しかないので女子比率が高い傾向にあるのがわかります。

立命館大と言いますと全国各地から受験生が集まる大学として有名ですが、2011年度入試においても「全国:近畿=52:48」となるなど、近年は近畿地区からの入学者以上に他府県からの入学者が多い傾向となっています。

そこで直面するのが「地元での就職」という点です。立命館大は近畿地区以外から来た学生が多いこともあり、地元での就職である「Uターン」を希望する者が多いそうです。地元国公立大出身者と張り合って負けないようにキャリアサポート体制を充実させている、というお話でした。

就職の話になりましたので、ここで就職率をご紹介しておきましょう。今年卒業生の就職率は91.7%、昨年は93.4%だったので1.7%のダウンとなっています。また、学部・大学院含めての就職把握率は98.1%と高いものになっている点が特徴です。学生1人1人の行き先を最後まで把握されている点に好感が持てます。

さて、立命館大と言えば今一番注目されているのが「2015年を目途に茨木駅前に新キャンパスを開設予定」とされていることです。この度、改めて移転対象となる学部などについてご説明いただきました。衣笠Cから政策科学部、BKCから経営学部、この2つが茨木の地に移転することになっているようです。

ただし、現在の高3生が受験をする2012年度入試でこれら2つの学部に入学した場合、4回生時点でキャンパスの移転に当たることになる点を知っておく必要があります。ご注意ください。

ここからは入試の話題になります。まず、2011年度入試結果についてです。以下の点が2011年度入試における変更点となっていました。

①公募制推薦(10年度は11学部で計197人を募集)を廃止。
②AO入試で「自己推薦方式」(10年度は9学部で計40人を募集)を廃止、従来の 「学部独自方式」と新方式「国際方式」に再編成。学部独自方式では、経済・スポーツ健康科学の2学部が加わり12学部で実施、理工では実施学科を 2→9学科に増やすなど、募集枠を計234人に設定。
③一般入試ではE方式(国語・英語とリスニング)を廃止。
④セ試利用入試では2月実施の4教科型などを廃止するなど、スリム化。

2010年度入試と2011年度入試では総募集定員に変更はありませんでした。定員を維持する一方で入試方式を整理して「よりわかりやすい入試体系」へとし、入学後の学力に不安が残る指定校推薦やAO入試といった秋入試での入学者確保を控え、2月まで受験勉強をしっかりと頑張ってきた受験生たちを集めるためにA方式(スタンダード3教科型)での志願者・入学者増を目指した形です。

結果は次の通りとなりました。

志願者数:75,683名(前年比97.3%)
合格者数:26,857名(前年比104.9%)
最終倍率:2.8倍(昨年3.0倍)

志願者数が減ったにもかかわらず合格者数が増やされているので、結果として倍率が昨年度を下回った形です。ちなみに、一昨年である2009年度は3.4倍、もう少し前の2007年度は3.7倍でした。2007年度と2011年度を比較すると、約1倍もの倍率ダウンになっていることになります。

減少傾向にある志願者数を増やすため、2012年度においても更に様々な変更が実施されます。主な変更点等は次の通りです。

①文学部では10専攻4プログラムから1つを選んで入試を受ける形から、8学域18専攻へ再編。伝統的な哲学・文学・史学・地理学・心理学に加え、文化遺産や芸術、現代アジア文化や観光、英語コミュニケーションなど新たな分野も加わり、専門領域が拡がる。入学時に8つの学域のいずれかに所属した上で2回生で専攻を選択する形へ。

②理工学部を現行の4学系11学科体制から「4学系9学科体制」に移行。現行の「電気電子工学科」と「電子光情報工学科」が統合され「電気電子工学科」に、現行の「電子情報デザイン学科」の名称が「電子情報工学科」に変更、現行の「機械工学科」と「マイクロ機械システム工学科」が統合され「機械工学科」となり、2012年度以降の学系・学科体制は、以下のようになる。

数学物理系・・・数理科学科、物理科学科
電子システム系・・・電気電子工学科、電子情報工学科
機械システム系・・・機械工学科、ロボティクス学科
環境都市系・・・都市システム工学科、環境システム工学科、建築都市デザイン学科

③試験会場に三重・福井・大阪南・松江が追加

文学部・理工学部での大きな変更と、茨木新キャンパス設置がどのように受験生を動かすのか、大変興味深いところがあります。

中高進学フェア

2011年度滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率④

2011年9月8日 木曜日

2011年度滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率①
2011年度滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率②
2011年度滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率③
に続くエントリーです。

このシリーズは、2011年度滋賀県公立高入試で出題された5教科それぞれにおける「小問別正答率」をご紹介しながら、各教科の出題傾向や今後の対策ポイントなどについて考えるものです。

4回目の今回は、理科をご紹介します。理科の小問別正答率は以下のようになっています(画像をクリックすると拡大します)。また、昨年度の理科の小問別正答率はこちらのエントリー「滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率④」でご紹介しています。

2011年度滋賀県公立高 小問別正答率(理科)

なお、2011年度の理科の平均点は46.0点(100点満点)でした。

滋賀県教育委員会が発表している解答の分析についても以下にご紹介します。

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大問1では、鉄と硫黄の化合によって生成する物質や、発生した気体のにおいを調べる方法など、化学変化に関する基本的な事項や化学実験の基礎的な技能を問う問題については比較的正答率が高い。一方、化学変化における物質の量的関係を二つの実験の結果を組み合わせて考察する問題では正答率が低く、今後は複数の実験結果を関連付けて分析し、活用していく力の育成が求められる。

大問2では、植物の花のつくりについて問う問題や、葉緑体でデンプンがつくられることについて問う問題では正答率が高く、植物の体のつくりとはたらきについての基礎的な事項はおおむね理解できているといえる。一方、観察や実験の結果を消化酵素のはたらきと関連付けて考察する問題では比較的正答率が低く、今後さらに基礎的・基本的な知識を活用して考察し、自分の考えを表現する力の育成が望まれる。

大問3は、北の夜空に見える恒星が、時間とともに北極星を中心に回転して見えることや、恒星の高度が変化することについて問う問題では正答率が高く、恒星の見かけの動きに関する基礎的な事項はおおむね理解できているといえる。一方、恒星の日周運動を地球の自転と関連付けてとらえる問題では正答率が低く、今後さらに観測結果や調べたデータをもとに考察する力の育成が求められる。

大問4では、音が空気中を伝わることや、弦を張る強さと弦の振動の仕方との関係を問う問題については比較的正答率が高い。このことから、音についての基礎的な事項を理解することは、おおむね達成できていると考えられる。一方、実験結果のグラフから振動数を求めることや、音の振幅を力学的エネルギーと関連付けて考察し説明することなどの問題については正答率が低く、今後は実験結果を分析し、的確に表現する力の育成が求められる。

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他教科同様、基礎的・基本的な事を出題する問題がある一方で、自然現象などについて科学的な見方や考え方が出来るかどうかや、身のまわりの物や現象を調べたり実験を通して理解したり、といったことが出来ているかどうかについてもしっかりと見られています。

「全体として、個々の基礎的・基本的な事柄や概念についてはおおむね理解できているといえる。しかし、事物・現象を科学的に考察し認識する力、および考察や認識を的確に表現する力はやや弱いと考えられる。今後も自然や日常生活に見られる事物・現象に進んで関わり、基礎的・基本的な知識をもとに科学的に探究し、考察したことを的確に表現する活動を通して、科学的な思考力や判断力、表現力を育成することが求められる。」と滋賀県教育委員会が発表しています。

これも他の教科と同じく、やはり基礎・基本的な事を問われるような、いわゆる「知識問題」の正答率が高い一方で、そういった知識を使いながら科学的な考えや判断をすることが問われている問題の正答率が低い、という傾向です。

普段の生活で見られる物や現象を意識して観察したり知識を得たりする、という学習が今後の対策においてポイントとなるのではないでしょうか。また、こういった身近な物や現象を題材として扱った練習問題を数多くこなすことも良い対策となるでしょう。

次回はこのシリーズの最後となる英語についてです。

中高進学フェア

農学・獣医学・生物環境系 大学進学相談会 今年も開催

2011年9月7日 水曜日

昨年も全国各地で実施された「農学・獣医学・生物環境系 大学進学相談会」ですが、今年も9月から全国各地で実施されることになっています。

全国の実施スケジュールの中から、大阪で実施される回の詳細についてご紹介したいと思います(画像をクリックするとPDF文書が開きます)。

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農学・獣医学・生物環境系 大学進学相談会

農学・獣医学・生物環境系大学進学相談会(2011)

日時:2011年9月24日(土)13:00~18:00
場所:梅田スカイビルタワーウエスト3F 梅田ステラホール

参加校:
麻布大・帯広畜産大・北里大・近畿大・東海大・東京農業大・日本獣医生命科学大・日本大
南九州大・酪農学園大

資料参加校:
宮城大・明治大・名城大

模擬講義:
13:30~14:30
北里大学 獣医学部 獣医学科 獣医生化学
渡辺清隆 教授 「獣医道への誘い」

15:30~16:30
酪農学園大学 農食環境学群 環境共生学類
井上博紀 准教授 「残留農薬が中毒を引き起こすメカニズム」

進路講演:
「他の理系分野との学びとはここが違う ―広がる将来のフィールドをのぞいてみよう」

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農学・獣医学・生物環境系大学・学部が集まってブースを展開し、受験生たちの質問に個別対応する、というだけのイベントではありません。上記の通り、模擬講義があったり、農学・獣医学・生物環境系の学びの特色や卒業後の進路などを分かりやすく解説して下さるような進路講演も用意されているという、大変充実したイベントになっています。

高3生はもちろんですが、特にこれから進路選択を本格化させていく必要がある高1・2生にこそ行ってもらいたいイベントです。

中高進学フェア

立命館宇治中 複雑な推薦型入試

2011年9月6日 火曜日

かなり前に行われたのですが、立命館宇治中高の塾対象説明会の様子をご報告します。今回は中学校についての情報をお届け致します。

まずは教育内容から。

中学では「基礎力を鍛える」こと、特に学習姿勢・生活習慣・自律といった点に重点を置いた指導をされています。具体的には読書力向上のために3年間で200冊・2万ページ読ませたり、文章力をつけるために徹底した添削指導を行ったり、といった本格的なものです。

立命館宇治中と言えば、推薦型入試・一般型入試・帰国生向け入試・スポーツや特技を活かした入試といった様々な形態の入試を経て各自入学してくる学校ですが、帰国生などの英語が堪能な生徒たちは同じクラスに集める処置はとっているものの、基本的にはすべてミックスしてのクラス編成とされています。いろいろな個性の子が居て互いに刺激を与えあうことができるでしょうから、この方が学ぶ生徒たちにとってもメリットは大きいでしょう。

中学から併設高校へ進学する際には「一貫」か「SEL(SIP)」のどちらかのコースを選んで進学することになります。後者は1年間の留学が必須となるコースです。

さて、その高校では活用力・探究力を養成するべく、特に高大連携による高度な学びやキャリア教育に力を入れておられます。

SEL(AIP)コースでは国際バカロレア(IB)の世界水準の共通カリキュラムに基づいたイマージョン教育が実施されている点が大きな特徴となっています。

このIB、日本ではマイナーですが、世界では94万人が学ぶ大変規模の大きなプログラムで、これを経れば世界の名だたる大学に最短距離で入学できるという大きなメリットが得られます。ちなみに、以下は主要な大学における入学者のうちIB資格を持つ者が占める割合です。

ハーバード:13.1% イェール:15.1% スタンフォード:17.6%

続いては入試についてです。立命館宇治中の入試制度は大変難解です。

自己推薦では「模試・内申結果」と、提出は任意となる検定結果・文化・スポーツといった「特技」の面から判定されます。書類選考をパスして出願資格を得れれば、本番では100%合格となっているのも特徴です。

ここで1つ来年度からの変更点があります。自己推薦入試はこれまで入試当日は「作文」のみが課されていましたが、2012年度入試より「標準テスト」に変わります。これは、4教科内容を80分に圧縮して行うもの、だそうです。

i推薦では、「英検準2級以上の英語力」と「模試・内申結果」とで判定されます。

SA推薦というのもありますが、これは「スカラー・アスリート&アーティスト」の略称で、「特技とその実績・将来性」に「模試・内申結果」を加味して合否判定を行うものです。学校には無いクラブ活動における特技であること、が条件となっているものの、サッカーのユース所属者に関してはサッカー部が立命館宇治にありますがSAでの受験・入学は認められる、ということもお知りおき下さい。

上記3つの推薦については10月以降の学校説明会に参加をし、「申請書」「志願理由書」を受け取る必要があるります。

また、これらの推薦の他、一般と国際の2種類の入試もありますが、それらも含めて入試区分別入学者比率は次の通りとなっています。

自己推薦:43%(昨年47%)、i推薦:3%(昨年4%)、SA推薦:1%(昨年12%)
一般:26%(昨年42%)、国際:11%(昨年11%)

年内の推薦型入試が3種類、それで出願資格をもらえなくても年が明けての一般入試でのチャレンジが可能な立命館宇治中。まずは推薦型の入試でエントリーするのが得策でしょう。制度がいろいろあってややこしいのが難点ですが・・・。

中高進学フェア

2011年度滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率③

2011年9月5日 月曜日

2011年度滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率①
2011年度滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率②
に続くエントリーです。

2011年度滋賀県公立高入試で出題された5教科それぞれにおける「小問別正答率」をご紹介しながら、各教科の出題傾向や対策ポイントについて考えているシリーズです。

3回目となる今回は、社会についてです。小問別正答率は以下の通りとなっています(画像をクリックすると拡大します)。なお、昨年度である2010年度の社会の小問別正答率はこちらのエントリー「滋賀県公立高入試 教科別平均点と小問別正答率③」でご紹介しています。合わせて対策にお役立て下さい。

2011年度滋賀県公立高 小問別正答率(社会①)

2011年度滋賀県公立高 小問別正答率(社会②)

今年度の社会の平均点は52.7点(100点満点)でした。

滋賀県教育委員会が発表している解答の分析は次の通りです。

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大問1は、略地図や資料をもとに、時差や大洋の分布などの基本的事項の理解をみるとともに、資料を正しく読み取り、世界の国々の貿易などの特色や、日本の各地方の農業の特色などについて考察し、正しく判断する力や適切に表現する力をみる問題であった。大洋の分布や季節風、農産物についての問題では正答率が60%以上であり、基礎的・基本的な力はおおむね身についているといえる。しかし、各地方の面積と人口からその特徴を読み取る問題や日本の農業の特色を考えさせる問題では、正答率が低く、今後は資料を適切に読み取る力を育てていく必要がある。

大問2は、わが国の歴史的建造物について、書院造、古代・中世の文化、日本の産業革命の特徴などを取りあげて、歴史的事象の特徴を的確にとらえる力や適切に表現する力をみる問題であった。古代・中世の時代の特色や文化についての問題からは、基礎的・基本的な事項の理解はほぼできているといえる。しかし、日本の産業について説明する問題では正答率が低く、資料を読み取り、適切に表現する力を育てていく必要がある。

大問3は、政治や裁判のしくみ、貿易についての基礎的・基本的事項の理解をみるとともに、滋賀県の地産地消に関する資料をもとに考察する力をみる問題であった。国と地方の政治のしくみに関する問題や裁判の種類に関する問題の正答率が高く、公民的分野における基礎的・基本的事項の理解がおおむねできていることがうかがえる。しかし、地産地消について考えさせる問題では正答率が低く、今後は、地域の課題について日頃から関心をもち、自らの生活との関連を考えさせる指導が望まれる。

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社会の問題は、地理・歴史・公民の3分野について基礎的・基本的な事が分かっているか?について問われているだけでなく、多面的・多角的な見方や考え方ができるかどうか?についても見られているようです。また、地理的・歴史的なこと、社会的なことについても、地図・グラフ・図表などの資料を使いながらしっかりと判断する力や適切に表現する力があるかどうか、についても見られている、という点が特徴です。

「全体的に、地理、歴史、公民の各分野における基礎的・基本的事項についてはおおむね理解できている。しかし、資料からさまざまな情報を読み取り、適切に表現する力を身につけさせることが必要であり、基礎的・基本的な知識・技能を活用し、社会的事象を多面的・多角的に思考・判断して、表現する力を育成する指導が望まれる。」と滋賀県教育委員会が発表していますとおり、知識的な問題の正答率は全般的に高いのですが、資料を読み取って適切に表現する力を試される問題では正答率が低い、というのが特徴です。

残り半年の間は、資料からいろいろな情報を読み取る力と、読み取った情報を自分の言葉で上手く表現する力、この2つをしっかりと身につけるように対策を進めて欲しいと思います。もちろん、基礎・基本となる各分野の知識も身につけながら。

次回は理科についてご紹介します。

中高進学フェア

関西大学併設中高 合同説明会 開催

2011年9月2日 金曜日

過去にこちらのエントリー「2011年度中学入試 結果分析③ ~大学附属校 その1~」などでもご紹介しておりますとおり、今や大変な人気となっている関西大学系列校ですが、来る9月23日(金祝)に系列の3中高が一堂に集まって合同説明会を実施されます。関西大学の併設校である関西大学第一中高・関西大学北陽中高・関西大学中高の教育方針や入試概要が一度にわかるという、大変貴重なチャンスです。詳しくは次の通りです(画像をクリックするとPDF文書が開きます)。

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関西大学併設中学校・高等学校 合同説明会

関西大学併設中高 合同説明会

日時:2011年9月23日(金祝)9:30~13:00 【開場9:00】
会場:関西大学千里山キャンパス 100周年記念会館

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なお、説明会の参加には事前の申し込みが必要となっています。関西大学系列各中高のHPから申し込みが可能となっていますので、お早めにお申し込み下さい。

今回のこのイベントですが、関西大の千里山キャンパス内の設備を使って実施されることになっている点についてもあらかじめお知りおき下さい。

このイベントの最大の特徴は「3中高の説明が一度に聞ける」という点であることは先ほどご紹介した通りなのですが、それと同じくらい注目していただきたいのが「同日に千里山キャンパスで関西大のオープンキャンパスが実施されている」という点です。つまり、中高の説明を聞いた後は、関西大のオープンキャンパスで将来内部進学することになる大学の雰囲気を味わうことが可能なのです。

関西大のオープンキャンパスの模様は当ブログでは何度もご紹介しておりますが、直近に実施された参加レポートについてはこちらのエントリー「関西大 進む国際化、2012年度募集定員増」となります。

大学のキャンパスを歩くだけでなく、「大学概要説明」「学部・学科紹介」といった講義型のものや、「キャンパスツアー」といった参加型のイベントなど、実際にオープンキャンパスで実施されているプログラムにも親子そろってぜひ参加してみて下さい。

9月23日(金祝)は、丸々一日関西大にどっぷりつかる日にしてみてはいかがでしょうか?

中高進学フェア

4年制私立大 2011年度入試では4割が定員割れ②

2011年9月1日 木曜日

4年制私立大 2011年度入試では4割が定員割れ①」の続きとなるエントリーです。

新聞各紙に「全国の私立大の4割が定員割れを起こしている」という記事が一斉に掲載されたことを受け、新聞紙上に掲載されていないデータを交えながら私立大の志願・定員充足の状況を詳しく見ていくエントリーです。

前回のエントリーでは「2011年度入試における私立大全体の志願動向」「志願倍率と定員充足率の分布状況」といったデータをご紹介しました。

今回は「地域ごとの状況」や「学部・系統別の人気度合い」といった、もう少し詳しいデータをご紹介しながら「どの地域の大学が人気を落としているのか」や「受験生に人気・不人気の学問はどれだろう」といった点について知っておきたいと思います。

まず、地域ごとの志願倍率・定員充足率についてのグラフをご覧ください(画像をクリックすると拡大します)。

志願倍率 定員充足率②

左側が志願倍率、右側が定員充足率を示すグラフになります。

志願倍率を見ますと、東京・愛知・京都・大阪・兵庫といった極端に高い地域と、甲信越・中国・四国・九州といった極端に低い地域があることがわかります。この状況から、「都会にある大学は倍率が高い」、つまり「志願者が集中している」と言えるのではないでしょうか。

また、右側にある定員充足率ですが、これは定員に対してどれだけの率の入学者数を迎えたか、という指標になります。

このデータを見ても、東京・愛知・京都・大阪・兵庫といった先ほどもご紹介した地域を始めとして、やはり限られた地域しか充足率100%を越えていないことがわかります。

続いては、どういった学部・系統が人気を集めたか、あるいは人気を落としているのか、についてのデータです(画像をクリックすると拡大します)。

志願倍率 定員充足率③

一番上の「医学」の志願倍率は突出しています。昨今の不況で一般企業への就職が厳しいことが受験生の間でも周知の事実となっていますので、「一生使える資格」が持てる医学系統に人気が集まっています。ただ、この系統は志願者数の多さの割に定員自体が極端に少ないのは毎年のことですから、競争の厳しさという点においては例年通りと考えてよいでしょう。

左側の志願倍率を見ますと、社会系・体育学・芸術系を除く全ての系統で志願倍率
が上昇していることがわかります。

特に、社会系にカテゴライズされている学部の中には「法学部」があります。この法学部が今年は非常に人気が低く、全国の法学部全体の倍率が昨年から0.58倍もダウンしています。原因はやはり「法科大学院を出ても司法試験に合格出来ない」ということが挙げられるでしょう。これについては過去にこのブログ内でも詳しく取り扱いました。こちらのエントリー「2010年 司法試験合格率・合格者数」も合わせてお読みください。

また、同じ社会系の中には「社会学部」も含まれております。ここも昨年から1.49倍も倍率を下げています。社会学部は、将来の職業としては「何にでもなれる」と言われていますが、反対に「(いろいろ勉強できるが故に)どっちつかずになってしまう」という弱さも秘めています。「何にでもなれる」という所よりも、医学・薬学、社会学部と同じ文系学部であるならば教員・福祉といった「将来の職業が明確にイメージ出来る学部・系統」に受験生が流れていったものと思います。

「地方の私立大は厳しい」のと、「不況だからこそ将来の職業が見えにくい、実現するには道が険しい系統は避けられている」という現状がわかります。

ずっと続いている不況もそうですが、東日本大震災の影響も物・心の両面でまだまだ続くでしょう。こんな多難な時代に大学進学を迎える受験生の皆さんに対して本当に気の毒に思えて仕方ありません。今回の新聞記事を発端としていろいろ調べていくうちにそんな気持ちになりました。

中高進学フェア