大卒後の年収 学力検査を課されて入学した人は高い

2014年5月2日

大学入試において、昔に比べて現在は入試制度が多様化していることは大学受験生やその保護者の皆さんでしたら周知の事実であると思います。

大学入試に存在する多種多様な入試制度は、以下のように大きく「学力検査を課す入試」と「学力検査を課さない入試」に二分できます。

学力検査を課す入試
一般入試、センター試験利用型入試

学力検査を課さない入試
指定校推薦入試、公募制推薦入試、AO入試、附属校・系列校からの内部推薦入試

「公募制推薦入試」が学力検査を課さない入試に入っていることに違和感を感じる方がいると思います。少し補足をしておきますと、公募制推薦入試の中には「スポーツ推薦」「一芸一能」といった、特定の分野に秀でた生徒をほぼ無試験で選抜される入試を含んでいるケースが結構あり、こちらに入れています。

よく聞かれる話として、「AO入試で入学した生徒の入学後の成績はあまり良くない」「一般入試で入ってきた学生はその後の成績や就職でも良い結果を出す傾向にある」といった、入試の種類とその後の「学力」「就職先」といった所の流れについてのものはありますが、社会に出て以降の入試制度別の評価についての話というものはあまり見かけません。

そんな中、興味深いデータを見つけました。この度ご紹介するデータは、上記の「学力検査を課すor課さない」の違いでその後の年収に違いがあるのか?について調査されたものになります。

以下は、「45歳以下の就業者」を対象として調査された、学力検査を課すあるいは課さない入試を経て入学・卒業した人たちの年収を、国公立・私立それぞれにおいて文系・理系別に集計をしたものです(画像をクリックすると拡大します)。

「45歳以下」といいますと、1970年代以降の生まれ、となります。1990年代以降、AO入試に代表されるような大学入試制度の多様化が急速に進みましたが、今回集計対象となった45歳以下というのは、この多様化の中で大学入試を経た世代となります。「学力検査なし」の入試区分で大学に合格した学生が多くなってきて以降が調査対象なので、「学力検査なし」のサンプル数も豊富にあると思われます。

上記のグラフをご覧頂きましたらすぐにお分かりの通り、学力考査を課す入試制度による入学者の年収は学力考査を課さない入試制度による入学者のそれよりも高くなっていることが示されています。この傾向は特に国公立大理系学部出身者で顕著に出ています。

学力考査を課さない入試制度による入学者の年収が低い理由、について考えてみたいと思います。

一番先に思いつくのは、AO入試に代表されるような「学力考査を課さない入学制度」の多くは高3の秋には合格が決まるので、その後3ヶ月~半年ほどはほとんど勉強しないことです。一方で、年明けの一般入試で入学を目指す受験生は集中的に勉強します。その差が大学入学時の学力差を生むこととなり、ひいては入学後の学習の達成度に影響を与えている可能性がある、ということでしょうか。

例えば、立命館大では指定校推薦枠を削り、AO入試や公募制推薦入試からも脱却を果たし、これまで以上に一般入試に募集定員を配分することで「入学者の質の担保」に動いています。他にも、京都橘大の説明会でも2014年度入試からAO入試の実施学科を大幅に減らすことを明言されていたなど、AO入試に関して見直す大学が出てきています。

朝日新聞と河合塾による共同調査「ひらく日本の大学」によりますと、一般入試を拡大し、推薦入試とAO入試を縮小したい、と考える学長が多いことが記されています。設置者別では、特に私立大で一般入試の拡大を望ましいとする割合が41%と高く(国立大20%、公立大23%)、AO入試については、「拡大・増加の方向」と答えたのは回答全体の14%であるのに対し、「縮小の方向」と答えたのは30%となりました。

大学としても、学力検査を課さないAO入試を縮小し、一般入試のような学力検査でしっかりと選抜する方法で学生の「質の担保」を目指したい、ということなのがこれで明らかです。

その考えの根底にあるのは、まずは大学での学業面と就職実績なのでしょうが、今回ご紹介したような「社会に出てからの活躍」の部分も薄々とは(ひょっとすると「はっきりと」なのかもしれませんが)感づいておられるのではないか、と思います。