大学入試 出題ミスが増加

2010年1月18日

2009年度の国公私立大入試において、大学側の「ミス」が156校・283件に上ったことが1月13日の読売新聞で報じられました。

山形大で過去5年間で合格者400人以上を不合格にしていたミスが2001年に判明したことを受け、文部科学省が2003年入試から本格的な調査を開始しています。その2003年度と2009年度を比較すると、私立大のミスは何と2.6倍にまで増えているとのことです。

読売新聞は「学生獲得のために受験機会を増やした結果、問題作成が多くなってチェックがおろそかになった面も指摘されている」と報じています。

関関同立大を例にとって入試回数(センター試験のみの方式は除く)の多さを検証してみましょう。

かつてはどの学部も1回しか入試機会が無かった同志社大が2010年度入試では少ない学部で2回、多いところでは文化情報学部で4回の入試機会があります。また、立命館大は文系学部では最大8回の入試機会があります。このように、特に私立大では最近、数多くの受験生に受験してもらおう、ということでどの大学も入試回数を増やす傾向にあります。

2009年度に判明したミス283件中223件、率にして約8割を占めるのが私立大です。また、全283件のミスのうち合否に影響したものは国公私立大で計23件もある、ということです。

実際に筆者がかつて開成グループ内で担当していた教室で起こった話です。ある生徒が第一志望のA大学は何度受けても不合格だったので仕方なく第二志望のB大学へ進学しました。やっと「B大学も悪くないな」と思い始めた5月に、第一志望だったA大学から「採点ミスがあり、あなたは合格となりました」という連絡が入りました。

その生徒は大いに悩みました。「B大学ではサークルにも入ったし、友達もたくさんできた。それに、授業ももうB大学で何十回と受けている。」「第一志望のA大学に行けるのはうれしいけど、また一から出直し。それに1ヶ月以上も遅れて入学しても皆に受け入れてもらえるのだろうか?」

その生徒は結局、B大学で積み上げたものすべてを捨て、A大学へ入学しました。

受験生にとって、受験機会が増えるのはありがたいことこの上ないのですが、これによって問題作成や採点がいい加減になってしまい、受験生の進学先、つまりは受験生の「将来」に大きな影響を与えてしまうような事例が増えるのは歓迎できません。

今年は新型インフルエンザ対応ということで、国公立大の66%(116校)、私立大も45%(418校)が追試を実施する予定にしています。「追試をする」ということは「新しい入試問題を作る」「採点する回数が増える」ということになります。先の生徒のような不幸な例が出ないこと、これ以上ミスが増えないこと、ただ祈るばかりです。