4年制私立大 2011年度入試では4割が定員割れ②

2011年9月1日

4年制私立大 2011年度入試では4割が定員割れ①」の続きとなるエントリーです。

新聞各紙に「全国の私立大の4割が定員割れを起こしている」という記事が一斉に掲載されたことを受け、新聞紙上に掲載されていないデータを交えながら私立大の志願・定員充足の状況を詳しく見ていくエントリーです。

前回のエントリーでは「2011年度入試における私立大全体の志願動向」「志願倍率と定員充足率の分布状況」といったデータをご紹介しました。

今回は「地域ごとの状況」や「学部・系統別の人気度合い」といった、もう少し詳しいデータをご紹介しながら「どの地域の大学が人気を落としているのか」や「受験生に人気・不人気の学問はどれだろう」といった点について知っておきたいと思います。

まず、地域ごとの志願倍率・定員充足率についてのグラフをご覧ください(画像をクリックすると拡大します)。

志願倍率 定員充足率②

左側が志願倍率、右側が定員充足率を示すグラフになります。

志願倍率を見ますと、東京・愛知・京都・大阪・兵庫といった極端に高い地域と、甲信越・中国・四国・九州といった極端に低い地域があることがわかります。この状況から、「都会にある大学は倍率が高い」、つまり「志願者が集中している」と言えるのではないでしょうか。

また、右側にある定員充足率ですが、これは定員に対してどれだけの率の入学者数を迎えたか、という指標になります。

このデータを見ても、東京・愛知・京都・大阪・兵庫といった先ほどもご紹介した地域を始めとして、やはり限られた地域しか充足率100%を越えていないことがわかります。

続いては、どういった学部・系統が人気を集めたか、あるいは人気を落としているのか、についてのデータです(画像をクリックすると拡大します)。

志願倍率 定員充足率③

一番上の「医学」の志願倍率は突出しています。昨今の不況で一般企業への就職が厳しいことが受験生の間でも周知の事実となっていますので、「一生使える資格」が持てる医学系統に人気が集まっています。ただ、この系統は志願者数の多さの割に定員自体が極端に少ないのは毎年のことですから、競争の厳しさという点においては例年通りと考えてよいでしょう。

左側の志願倍率を見ますと、社会系・体育学・芸術系を除く全ての系統で志願倍率
が上昇していることがわかります。

特に、社会系にカテゴライズされている学部の中には「法学部」があります。この法学部が今年は非常に人気が低く、全国の法学部全体の倍率が昨年から0.58倍もダウンしています。原因はやはり「法科大学院を出ても司法試験に合格出来ない」ということが挙げられるでしょう。これについては過去にこのブログ内でも詳しく取り扱いました。こちらのエントリー「2010年 司法試験合格率・合格者数」も合わせてお読みください。

また、同じ社会系の中には「社会学部」も含まれております。ここも昨年から1.49倍も倍率を下げています。社会学部は、将来の職業としては「何にでもなれる」と言われていますが、反対に「(いろいろ勉強できるが故に)どっちつかずになってしまう」という弱さも秘めています。「何にでもなれる」という所よりも、医学・薬学、社会学部と同じ文系学部であるならば教員・福祉といった「将来の職業が明確にイメージ出来る学部・系統」に受験生が流れていったものと思います。

「地方の私立大は厳しい」のと、「不況だからこそ将来の職業が見えにくい、実現するには道が険しい系統は避けられている」という現状がわかります。

ずっと続いている不況もそうですが、東日本大震災の影響も物・心の両面でまだまだ続くでしょう。こんな多難な時代に大学進学を迎える受験生の皆さんに対して本当に気の毒に思えて仕方ありません。今回の新聞記事を発端としていろいろ調べていくうちにそんな気持ちになりました。

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