農学系統 地球と人類の今・未来の問題解決が期待される学問

2011年10月4日

こちらのエントリー「農学・獣医学・生物環境系 大学進学相談会 今年も開催」でご紹介したイベントにお邪魔してきました。

イベント名からもお分かりの通り、農学系に特化したイベントです。当日はこちら近畿地区を代表して近畿大がブースを出していた他、麻布大・帯広畜産大・北里大・東海大・東京農業大・日本獣医生命科学大・日本大・南九州大・酪農学園大がブースを出して受験生・保護者からのご相談に乗られていました。

このイベントでは「模擬講義」2つと「進路講演」1つが合わせて実施されていました。今回のエントリーでは、進路講演でお話いただいたことを簡単にまとめてみたいと思います。

今回の進路講演のタイトルは「他の理系分野との学びとはここが違う ―広がる将来のフィールドをのぞいてみよう」というもので、農学・獣医学・生物環境系の学びの特色や卒業後の進路について30分でまとめて下さる、という内容でした。

まずは、農学という学びのフィールドについてご紹介いただきました。後で詳しくご紹介をしますが、農学の学びの範囲は非常に広い上に、今回のエントリーのタイトルにもありますとおり「地球と人類の今・未来の問題解決が期待される」学問分野として、社会から大変注目されている系統でもあります。

そもそも「農学」という学問がどういうもので、どんな歴史をたどってきたのか、ということも次のように簡単にご紹介いただきました。

①人類の生存と繁栄の基盤を提供する
②メソポタミア、古代中国に端を発する
③1840年代に欧州で学問体系化される
④絶えず今日的な問題に取り組む

特に上記の④に関して言えば、現代の農学系は次の3点がテーマとなっていると思います。

①食糧問題
②地球温暖化
③エコロジー、環境問題

さて、前述の通り農学系は間口が広く複合的な学問となっているのですが、現在では次の9分野に大別される、とご紹介をいただきました(学科例も併記)。

①農学(農学科・園芸学科・応用生物科学科・農業生産学科・暖地農学科 など)
②農芸化学(農芸化学科・食品科学科・食品科学工学科・醸造科学科 など)
③農業工学(農業工学科・生物環境工学科 など)
④農業経済学(農業経済学科・園芸経済学科・食糧環境経済学科・食品流通学科・国際農業開発学科 など)
⑤林産(森林科学科・森林資源科学科・森林総合科学科・人間環境科学科 など)
⑥水産学(水産学科・海洋生物資源学科・水産生物科学科・海洋生産システム学科・栽培漁業学科 など)
⑦生物生産・生物資源学(生物生産学科・生物資源学科・生物応用化学科・環境生物科学科・食糧生産科学科 など)
⑧獣医学(獣医学科)
⑨畜産・酪農学(畜産学科・酪農学科・動物資源科学科・動物応用科学科・生物生産環境学科 など)

農学系とひとくくりにしていますが、イメージ通りに「土をいじる」「化学薬品を使う」「生き物を相手にする」ような系統もある一方で、「農業経済学」や「生物資源学」といった学問内容がイメージしにくいものまで、非常に幅広く分野分けされています。

さて、近年の農学系の入試動向についてです。農学・獣医学・生物環境系の入試動向としては3年続けて人気が上昇しており、非常に人気が高い系統となっています。最近では、様々な資格が取れる点、後ほどご紹介するように就職状況が好調である点、食べ物・衣類・化粧品・ペットなどの動物といった身近な生活領域に関わる系統なので興味を引きやすい点、が原因で特に理系進学を希望する女子に人気が出ています。

今回参加したこのイベントも、女子の姿が多かった印象があります。

最後に、農学系学部の就職などの進路についてご紹介します。

農学系の就職・進学の特徴は次の通りとなっています。

①進学率・就職率とも高く、非常に安定している
②専門性を活かしやすい
③公務員試験に有利(公務員になる比率が他系統より高い)
④製造業では医薬品・食品加工業・乳製品産業が多い
⑤研究開発者や製造工程での管理者として期待されている
⑥農協などの金融・保険業界もある

今年卒業した大学生たちの就職の状況は次の通りとなっています。

①農学系統の今春卒業者数は17,235名、うち女性は7,080名で全体の41.1%、就職者数の女性比率は43.3%
②バイオ系が人気で、環境意識の高まりにより女性の比率は年々高まる傾向にある

農学系統の卒業生であれば実験や実習を通して化学の基礎を身につけている、ということが企業側も期待できますし、現在は製造業各社がバイオに強い人材を確保することに力を入れていることもありますので、農学系は非常に高い就職率となっています。

ただ、この系統は大学院への進学率も高くなっています。お聞きした所によると、農学系の今春の大学院進学率は約27%で、簡単に言うと4人に1人が大学院へ進学していることになります。これは、系統別に見た際には理学系・工学系に次ぐ3番目に高い値となっています。

と、ここまでざっと聞いてきた内容を羅列しました。

文章内にもありますとおり、地球温暖化や食糧問題といった現代の地球・人類が抱える問題を解決することが期待されている系統です。まだまだ解明されていない謎も多くある分野でもありますし、新たな発見や前例の無い取り組みが数多く出てくるでしょう。理科が大好きで、将来はその道でどっぷりと・・・、と考えている受験生はもちろんですが、何か新しい発見をしたり新しい取り組みがしたい受験生にもオススメの系統です。

受験生の皆さん。あなたの今のその決断がキッカケで、ひょっとすると遠い未来の地球・人類を救うことになる、かもしれませんね。このブログを読んでくれている受験生の中からそんな人が出て来てくれたら、うれしいです。