兵隊さんがとっても大切にしたもの

 兵隊さんが、生まれ育った国を離れてもう3年たちました。長く長く続いているこの戦争は、まだ終わる気配をみせません。ただ、戦争とはいっても前線から遠く離れたところに駐在する兵隊さんにとっては、自分の仲間が殺し合いをしている。

あまり口数の多くない兵隊さんでしたが、故郷に帰りたいという思いは、強くあったのでしょう。満月の夜は、きまってひとり外に出て、何やら手紙のようなものを読んでいるのでした。「あれは、お母さんの書いた手紙だよ。お母さんのことが恋しくて、何度も何度も読んでいるんだぜ」という者もいれば、「いや,ちがうさ。あれは、国に残した恋人からの手紙だね」とうわさする者もいました。だれが書いた手紙なのか、それはだれにもわかりませんでした。

戦いがだんだん激しくなっていきました。前線がどんどん広がり、やがて兵隊さんがいる町にも敵兵が現れるようになってきました。そして、ついに兵隊さんも、戦場にでなければならないときがやってきました。いつものように起きて身支度を整え、いつもと変わらぬ姿で、兵隊さんは戦いの場に向かいました。

兵隊さんが亡くなったことがわかったのは、それから3日後のことでした。

兵隊さんは、やっと国に戻ることができました。故郷の家に戻ることができました。兵隊さんに泣きすがるお母さんは、兵隊さんの胸ポケットに、なにやら白いものが入っているのに気づきました。お母さんは、そっととりだし広げてみました。

それは、兵隊さんが子どものころ通っていた学校でクラスメートたちがお互いの長所について書いた手紙でした。

「ジョンへ。運動会のリレーで2人追い抜いたよな。あのときは、死ぬほどかっこよかったぜ」

「ジョンは、おしゃべりじゃないけど、重い荷物は必ずもってくれたわ。そんなジョンのことが大好きよ」

「ウサギ小屋の掃除とえさやりをいちばんやってたのは、ジョンです。ジョンの生き物への思いやりの心、わたしも見習わなくちゃ!」

「ルーシーが母さんのことをからかうやつがいると、ジョンは絶対そいつをぶんなぐてったよな。恥ずかしいから言えなかったけど、そんときのジョンて、スーパーマンよりいけたてぜ!」

 クラス40人が、書いたジョンの好きなところ、いいところでした。

ジョンは、戦争に行っても、その手紙をずっともっていたのです。そして、満月の夜には、必ずその手紙を読んでいたのです。戦場に向かうときも、胸のポケットにその手紙を入れておいたのでした。ジョンにとってその手紙は、時には心をいやしてくれ、時には励ましてくれ、時には元気を与えてくれる、そんな存在だったのでしょう。

 

 人から受けた肯定的なストローク(働きかけや刺激)は、深く、深く心に残るものです。誰かにほめられたことや認められたこと、感謝されたことは、何にも勝るうれしいできごとです。そんなふうに感じてもらえることばを他の誰かにもかけていきたいものです。

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