冷蔵庫のプリン①
2010 年 2 月 22 日 月曜日人は意外と正しい判断ができるものだと思います。できないとすれば、それは、「感情」がじゃましているのかもしれません。
中2の桃子さんは、テニス部に入っています。その日も暑い中、へとへとになるまで練習しました。重い足をひきずって帰宅した桃子さんの楽しみは、冷蔵庫の「プリン」でした。甘いものは大好きなのですが、その中でも「プリン」は大好物なのです。やわらかい食感、口の中で広がる何とも言えないおいしさ、冷たいプリンが疲れた体を心地よく癒してくれるのです。「早く家に帰ろう。帰って、昨日、イルカスーパーで買ってきた『北海道フレッシュカスタードデラックスプリン』を食べよう」そう思うと、疲れ切った足も心なしか、軽くなったような気がするのでした。
「ただいま!」家に着くと、靴もそろえず、かばんもリビングに放り出したままで、冷蔵庫にめがけて突進していきました。「がばっ」と勢いよく冷蔵庫のドアをあけて、プリンを探します。 「ない・・・」 おかしい。昨日、ドアのポケットに入れておいたはずなのに。もう一度探す。やはり、「ない・・・」 念のために、冷凍庫や野菜室の中も見てみたが、プリンはどこにも見あたらなかった。
「お母さんっ、わたしのプリン、どこ?知らない?」
「プリンなんてしらないわよう」
どこかまのびした母の声が、庭から聞こえてくる。
ダダダダッ、全速力で階段を駈け上がる。 「犯人はあいつしかいない!」 ドアを開ける。するとそこには、のんきにテレビゲームをしている弟がいた。
「あんた、お姉ちゃんのプリン、知らな・・・」
と言いかけたとき、弟の傍らに、空になった『北海道フレッシュカスタードデラックスプリン』が無惨に横たわっているのに気づいた。
「ちょっと、あんた、何してんのよっ!!」
大声をだしている自分を、もうとめることはできなかった。
「なんで勝手に食べんのよ!このバカっ!」
無意識に、あるいは、本能的に、右手が弟のほほをとらえていた。ぐらっとよろめく弟に、間髪入れず蹴りが入る。(楽しみにしていたのに。楽しみにしていたのに・・・)悔しい気持ちが、心の中からあふれ出てくる。
と、その時、母親が部屋に入ってきた。
「それ、健太のプリンよ。よく見てみなさいよ。あんたのとちがうでしょ」
目の前には、ほほを真っ赤にして涙目になっている弟と『十勝クリームムースプリン』と書かれた空容器が転がっていた・・・。


