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開成教育グループ


2011 年 12 月 12 日 のアーカイブ

「べし」の判別

2011 年 12 月 12 日 月曜日

 11月から、開成ハイスクール西田辺教室にて、高校2年生を対象とした「古典」の講座が開講されました。大学入試に向けた古典対策のスタートということもあり、非常にたくさんの生徒たちが受講しています。高2生にとって、古典というとまずは「文法」という意識が強いらしく、文法についての様々な質問を受けます。
 今回は、よくある質問のうちの1つ、「べし」について述べたいと思います。
 そもそも「べし」の語源は、「宜(うべ)し」の音変化とする説が有力で、上代から現代に至るまで広く用いられています。「当然または必然的にそうなること」もしくは「推量する」の意が原義で、そこからいくつかの意味に分化したと考えられています。また、中世以降「べし」の接続は複雑化し、上一段・下一段・上二段・下二段活用には、イ列音・エ列音に伴うものもみられ、その他、様々な背景や諸説を多々持つ助動詞です。ただ、受験生にとっては「意味用法の判別」が大きく課題となるでしょう。
 「べし」の意味用法は、一般に「推量・意志・可能・当然・命令・適当」の6つです(このほかに予定や義務を用法に加えることもあります)。では、どのようにこの6つの意味を使い分けるのでしょう。
これを明確に線引きするのは、なかなか難しい問題です。というのは、「べし」にはグレーゾーンが存在するからです。例えば、「適当(~するのがよい)」と「当然(~すべき)」はどこで線引きができるのでしょう。まずはこの2つの使い分けをイメージするために、皆さんの古典の先生を思い浮かべてみてください。先生が「君は、もっと古典を勉強すべきだ」と言ったとします。この時の「べき」は、「適当(した方がよい)」or「当然(すべき)」のどちらでしょうか?
 その先生がとても穏やかな先生だったとします。その場合、「勉強すべきだ」の「べき」にはそれほど強制力はなく、「した方がいいよ(適当)」が皆さんの解釈になるでしょう。一方、それがとても厳しい先生だったとします。その先生に「勉強すべきだ」と言われたらどうでしょう。きっと皆さんは「絶対すべきだ(当然[命令])」と解釈しますよね。つまり、同じ使い方であっても解釈は個人によって変わり、また、作者の意図した用法と、読み手の用法が合致するとも限りません。そもそも「適当(した方がよい)」or「当然(すべき)[命令]」は強弱の問題ですから、どこまでが「適当」で、どこから「当然」に変わるのかという明確な区別はできません。
 従って、文中に「べし」が出てくる度に、いちいち悩んでいては読解が進みません。そこで、ある程度大まかな用法の塊を頭にインプットすると読みやすくなります。
 初心者向けの「べし」用法区分の1例を挙げると、

 ①自分(一人称)の気持ちを表す「べし」 例)意志
 ②相手(二人称)に物事を勧める「べし」 例)勧誘・当然・命令
 ③第三者(三人称)を推測する「べし」  例)推量・当然

 このように、人称による3つの用法区分は読解の大きな目安となります。几帳面に6つの意味を考えていくのも場合によっては大切ですが、「べし」のベクトルがどこに向いているのかというような、手際のよい読解技術も必要です。助動詞は、細かい意味用法や文法知識と同時に、要領よく大意の読解に活かしていくことも大切なのです。

開成ハイスクール国語科 重留英明