開成教育グループ

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塾生保護者の子育てエッセイ 子育て百景

アプリス賞

人生の華

Dogwood様

息子が幼い頃、公園の芝生で一緒に走り回って遊んでいると、散歩に来ていたおばあさんが微笑ましそうに声を掛けてくれたことがあった。

「子育てしているうちが人生の華よ」

その言葉が何となく忘れられず、今でも時折ふと思い出す。当時、やんちゃな息子を追い回して体力を消耗し、おしゃれとも縁遠く、幸せながらも自分の時間はままならない日々を送っていた私は、「そうかなぁ?」と正直あまり実感がわかなかった。毎日を全力で楽しんでいた学生時代でもなく、スーツを着てバリバリ仕事に明け暮れていた20代でもなく、育児に追われ、もうそんなに若くもない今が人生の華?と。

しかし、振り返れば、日差し溢れる公園を走り回っていたあの頃は、何ともキラキラと輝いて見える。子育ては、決して後戻りができないという意味で切ないものだ。昔の写真を見ては「この頃はかわいかった」「もう一度あの頃の我が子に会いたい」と過ぎた日々を懐かしみ、二度と戻れないことを寂しく思い、できなかったことに対しては後悔もする。これ以上ないくらい子育てに関わってきたつもりでも、そういう気持ちが常につきまとう。もちろんその時々で大変なことや悩みも多々あった。病気もしたし、学校からも呼び出されたし、中3の塾の面談は常に2時間コース。(チーフに感謝)生活習慣や学習習慣がなかなか身につかない現実を前に、子育てほど思い通りにならないことはないと思ったりもした。それでも、家族や友人、先生方、地域の人たちなど本当にたくさんの人に助けられ、苦労以上の大きな喜びや感動を幾度も味わってきた。子を産み育て、子どもの笑顔と共に一緒に時を過ごせたことは、私の人生で間違いなく一番幸せなことだ。

この春、見上げる背丈の我が子は高校生となった。興味のある分野では親の理解を遥かに超える知識を持つようになり、ふとした時に覗えるしっかりとした意見に、一歩一歩大人に近づいていると感じる。親の小言にはろくに耳も貸さず、「うるさいなぁ」と部屋に直行する思春期の息子に腹を立てることもあるが、きっと息子が大人になれば、幼い息子、小学生の息子、中学生の息子、そして高校生の息子にもう一度会いたい、と未来の私は心から思うのだろう。毎朝お弁当作りが大変でも、高校生の息子と過ごせる今が、何年後かの私にとってはかけがえのない時かもしれない。そんなにもう一度会いたいと切望するであろう高校生の息子が今、私の目の前にいる。そう思うと、大変なことが多少あっても、未来の私の為にも、今できることを目一杯、全力でやっておこうと思う。後悔することのないように、当たり前の一日一日を宝物のように。二度目の青春時代をそばで経験できることに感謝しながら。巣立ちまで秒読み段階に入った今、お弁当作りも、残り少ない母親の仕事かもしれないと思うとそれも楽しめる。きっと、子育てをしている今が、人生の華なのだから。

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