厳しい雇用・就職状況の中を生きる

2010年8月25日 水曜日

8月も下旬に入りましたが、厳しい暑さが収まる気配が一向にありません。そんな中、雇用環境も厳しい状況が続いております。今回のエントリーでは、雇用・就職に関する最近の新聞記事のいくつかをご紹介しつつ、

8月17日の日本経済新聞に以下のような記事が掲載されました(以下引用)。

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失業期間の長期化判明「1年以上」が118万人 4~6月労働力調査

総務省は17日、4~6月期の労働力調査/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3E5E1EBE6E2E3E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NX(詳細集計)を発表した。完全失業者349万人(月平均)のうち、失業期間が「1年以上」の失業者は118万人となり、前年同期に比べ21万人増えた。増加は7四半期連続。求人数が低迷し、職をみつけられない失業者が多いようだ。

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厳しい雇用情勢が続く中、失業期間の長期化に歯止めが掛からない状況となっています。

なお、この118万人という数ですが、データが存在する2002年以降で見てみますと、IT(情報技術)バブル崩壊後の2003年4~6月期(127万人)に次ぐ過去2番目の高水準、となっています。

失業期間別の内訳は次のようになっています。

・2年以上 前年同期比11万人増の62万人(過去2番目の多さ)
・1年以上2年未満 同10万人増の56万人
・6カ月以上1年未満 同7万人増の52万人
・3カ月以上6カ月未満 同11万人減の51万人
・3カ月未満 同26万人減の114万人

新規と短期の失業者は減少傾向となっているものの、失業期間の長期化が進む一方であることがわかります。

そのような厳しい雇用状況となっていますから、新規大卒者の就職活動も大変苦しいものとなっています。7月6日の読売新聞に以下のような記事が掲載されていました(以下引用)。

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就職留年7万9000人 読売調査推計

大卒予定7人に1人・・・「新卒」として再就活
卒業年限を迎えながら留年する学生が全国の大学で少なくとも7万9000人いると推計されることが、読売新聞の「大学の実力」調査で明らかになった。

根強い企業の「新卒一括採用」を背景に、就職が決まらず翌年に再び「新卒」として就職活動(就活)に臨む学生が急増している。卒業予定者数は約56万8000人で、7人に1人は留年している計算になり、就職戦線のさらなる激化を招いている。

卒業者含め「浪人」11万人
国の調査では、約3万1000人が、就職が決まらないまま卒業している。今回、明らかになった留年者約7万9000人を合わせると就職浪人は約11万人となり、その分、就職戦線が激化している計算になる。

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2010年2月時点の新卒就職内定率は約8割となっており、学生の5人に1人は就職できないことになっています。そのような過酷な状況下で少しでも有利に就職活動を進めたい、ということから、今年就職出来なかった学生はあえて卒業を1年見送って(=留年)「新卒」として再度就職活動を行う、ということを編み出した形です。

リーマンショック後、このような「就職氷河期」と呼ぶにはぴったりな状況が続いていますから、「やっぱり就職率が良い大学がいいなあ」と思う大学受験生が最近増えています。しかしその一方で、就職率などのデータについての計算・公開状況は各大学で大きく異なっており、選ぶ側となる受験生にとっては「共通のものさしで比較できない」という状況になっています。就職状況をはじめとする進路情報の公開を文部科学省が義務付ける、という記事が7月12日の産経新聞に掲載されていました(以下引用)。

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「就活」の成果も大学に公開義務付けへ

文部科学省は、大学などに対して、入学者数、卒業者数、就職者数などの進路情報の公開を、2011(平成23)年度から義務付けることにしました。実質的な「大学全入時代」に入り、大学の入り口と出口の情報を広く公開することにより、大学教育の質を保証していくことがねらいです。受験生や保護者にとっては、大学選びの参考資料が増えることになります。

大学進学希望者や保護者にとって最も気になるのが、「学生に関する情報」でしょう。具体的な中身は、収容定員、実際の学生数、卒業者数、(大学院などへの)進学者数、就職者数などとなっています。

ここで、「卒業者数なんて、今までも公開されているのでは」「就職状況などは、大学のパンフレットに載っているけど」などと、疑問に感じたかたもいることでしょう。ところが、実際の入学者数や卒業者数などを、一般に公開していない大学は、実は少なくないのです。また、卒業生の進路情報として就職状況などを載せていても、実際は採用内定者の延べ人数だったりして、学生の就職活動の成果をきちんと反映してないこともあります。就職者の実数などを、簡単には公開できない事情を抱えた大学もあります。学生数にしても、入学者数から4年後の卒業者数を引けば、どれだけの学生が中退や留年したかが、おおよそわかってしまいます。

文科省による入学者数、卒業者数、就職者数などの情報公開の義務付けは、大学の「入り口」と「出口」の部分の実態をできるだけ受験生や保護者に明らかにさせることを通じて、大学教育の質を維持・向上するよう大学側に努力を促すことが目的だと言ってよいでしょう。これまでも、大学設置基準などで、情報公開に努めるよう求めてはいたのですが、学校教育法施行規則ではっきりと情報公開が義務付けられたことにより、大学の進路情報の公開が一挙に進むことが予想されます。

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大学受験生にとっては、これらのデータが大学選びに大きな影響を与えることになるのは必至でしょう。

ただ、1つ気をつけてほしいのは、「就職率が高い大学=自分が希望する会社に入れる」ということではない、ということです(当然ですが)。

就職率が低い大学でも、在学中に自分をしっかり磨いておればどんな会社からも「ウチでぜひ!」と言ってもらえるでしょう。逆に、世間的には知らない人がいないような大学に在籍していても、自分に「これ」といったセールスポイントがなければ厳しい就職活動になるのは目に見えています。

先日、学生向けの就職フェアの風景がNHKのニュースで紹介されていました。その時の学生の言葉がとても印象的でしたのでご紹介したいと思います。

「どんな時代でも自分がしっかりやらないといけない。時代のせいとかにはしてられないので、がんばるしかない。」

時代のせいにするのではなく、現実を受け留めて、その中でいかにして自分らしい人生を選択していくか、と肯定的に捉えている姿が素晴らしいと感じました。

これを読んでいる若い皆さんたちには、どんな現実が待っていようとも突き進んでいけるような「本当の生きる力」を養いながら社会へ出る準備をしていってほしい、そう思います。また、それに向けて我々大人たちには何が出来るのか、を私も考えたいと思います。