私立大 「定員超過厳格化」が受験生にもたらす影響

2015年3月11日 水曜日

都市部の大学にばかり学生が集まることで地方の大学が厳しい生徒募集状況になっていることを受け、文部科学省が私立大の「定員超過」に関して今後は厳格に対応していく方向で動く、という報道がなされました。

以下、毎日新聞が報じた内容をご紹介します。


3大都市圏:私大の学生数抑制へ 文科省、定員超過厳格化
(2015年2月22日毎日新聞)

文部科学省は、首都圏など大都市部にある私立大学の学生数を抑制する方針を決めた。入学定員を超えた入学者の割合(定員超過率)を厳しくする。現在、定員8,000人以上の大規模大学の場合、定員の120%以上なら私学助成金を交付しないが、これを110~107%まで減らす方針だ。大都市への学生集中を抑制し、地方からの学生流出に歯止めをかける「地方創生」の一環。定員8,000人未満の私立大も、現行の130%から120%へ引き下げる。私立大は授業料収入減につながりかねず、反発も予想される。

対象となるのは、首都圏(東京都、埼玉、千葉、神奈川)▽関西圏(京都、大阪、兵庫)▽中部圏(愛知県)の私立大。2014年度の私大入学者は、首都圏20万4287人▽関西圏7万6677人▽中部圏2万9206人。この3大都市圏で計約31万人に上り、全私立大の入学者の65%、国公私立合わせた入学者のおよそ半数を占める。

このうち入学定員を超過した人数は、3大都市圏で計約3万3000人。規模別では定員1,000人以上の大学に集中している。私立大側は財政を安定させるためにもできるだけ学生を受け入れたいのが本音で「定員超過している大学は基準ぎりぎりまで学生を取っている」(大学関係者)のが現状という。

日本私立学校振興・共済事業団によると、定員の110%以上の学生がいる大学は全国で約170校あるという。文科省の調べでは、3大都市圏で定員の110%以上の学生数は約2万6000人で、新基準が適用されると、現在の超過人数の多くが不交付対象になるとみられる。

文科省の方針について、関西圏の大規模私大の担当者は「財政を直撃するだけに深刻だ」と話す。大学財政の根幹は学費収入だ。

一方、東北地方の私立大幹部は「定員割れしている地方大には一定の効果はある。学生は増えるのではないか」と見る。四国の私立大関係者も「ありがたい話」と歓迎。ただ「それで受験生が地方大を向くかというと、そう単純な話でもないと思う」とも指摘する。

政府の地方創生総合戦略は今後、大都市圏への集中を解消し、地方の学生が自分の住む県の大学に進学する割合を2020年までに36%(13年度は33%)に引き上げる目標を掲げる。国立大の定員超過率も現行の110%から引き下げを検討する。


私立大は国から補助金の交付を受けており、定員(入学定員:1年次の入学定員/収容定員:4年または6年課程全体の定員)の充足率に応じて基準額が調整され、定員超過率が一定以上(つまり「入学生の取り過ぎ」)になっている場合は、補助金が「減額」または「不交付」になります。

入学定員を超えた入学者の割合(定員超過率)が現状からどのように下げられる予定なのか、以下にまとめてみました。

定員8,000人以上の大学:定員の120% ⇒ 同110~107%
定員8,000人未満の大学:定員の130% ⇒ 同120%

上記が適用されることによって「厳格化」されるとなると、2014年度での統計を基に考えると「3大都市圏で定員の110%以上にあたる約2万6000人」といった数が基準をオーバーしていることになります。

私立大の収入に関して、こんな統計があります。

学生生徒等納付金 3兆2,334億円(約77%)
補助金 3,622億円(約11%)
※私立大の2009年度帰属収入(速報値)

おおざっぱに言うと、私立大の収入の8割は学生からの納付金が占めていますものの、約1割が私学助成金による補助が占めている、ということになります。

少し超過しても、一定の範囲内で定員を守っているのであれば私学助成金が交付されますから、大学としては是が非でも定員を守って補助金の減額・不交付は避けたいところです。

都市部にある大学での定員超過が著しいことが引き起こしたこの基準の強化なので、都市部にある難関~上位の私立大において「私学助成金の減額・不交付」を避けるために「合格者数を絞り込む」こと、一言で言うと「難化」が予想されます。

なお、この補助金の減額・不交付ですが、今回ご紹介した「極端な定員超過」だけでなく、定員割れが著しい場合でも同様の措置が講じられます。後日のエントリーでは、定員割れを防ぐために各大学が講じている策、無理して入学させたがために学内で歪みを起こしている例、といったものをご紹介します。