文部科学省 253大学に改善を求める

2015年3月18日 水曜日

過日、こちらのエントリー「私立大 「定員超過厳格化」が受験生にもたらす影響」では、都市圏にある大学だけに学生が集中することを防ぐため、文部科学省は今後「定員超過」に対してより厳格に対応していく方針である、ということをお知らせしました。

私立大は国から補助金の交付を受けており、定員(入学定員:1年次の入学定員/収容定員:4年または6年課程全体の定員)の充足率に応じて基準額が調整され、定員超過率が一定以上(つまり「入学生の取り過ぎ」)になっている場合は、補助金が「減額」または「不交付」になります。

このように「入学生を取り過ぎ」ると大学は怒られますが、反対に「定員割れ」も一定の割合を超えてしまうと補助金の減額・不交付の対象となるようです。

補助金にも影響を及ぼすため、著しい定員割れを起こすことが無いよう各大学は知恵を出し、様々な入試制度を創設するなど、あの手この手で学生を確保すべくご努力されています。中には、大学生として相応しいと思われる学力に到達していない受験生もお預かりになっている、そんな大学もあるようです。

そんな状況の中、この程文部科学省は講義内容や運営方法などに不備があるとして、改善を求める大学253校を公表しました。

定員割れを防ぐために各大学が講じている策、無理して入学させたがために学内で歪みを起こしている例、そんな数々をご紹介します。まずは、過日に日本経済新聞が報じたものです。


253校に改善要求 文科省、新設大学など調査
(2015年2月19日(木)日本経済新聞 より)

文部科学省は(2015年2月 筆者補足)19日、新設された大学や学部などが申請通りに運営されているかどうかを調べる2014年度の「設置計画履行状況調査」の結果を発表した。今回調査した502校のうち、253校に対し改善を要求。教員数が基準を下回っていたり、低いレベルの授業で単位を認定したりしていた31校には、早急に見直しを求める「是正意見」を出した。

調査は卒業生をまだ出していない新設の大学や学部、大学院などを対象に05年度から実施。従来は「留意事項」という表現で改善すべき点を指摘していたが、今回から「改善意見」として対応を求め、さらに法令違反など重大な問題があれば「是正意見」を出すことにした。

是正意見に応じない場合は、設置者からの新たな認可や届け出を認めないなどのペナルティーを科す。

是正意見では、教員の質や数に対する指摘が目立った。07年度に開学した岐阜保健短大(岐阜市)は看護学科で教員の退職が相次ぎ、13年度末時点で約5割が入れ替わっていたため、教育の質を担保するよう求めた。純真学園大(福岡市)は大学設置基準上で必要な教授数を満たしていなかった。

教育課程への是正意見も多く、千葉科学大(千葉県銚子市)は環境危機管理学科の「英語1」などが、「大学教育水準とは見受けられない」と指摘された。大学がホームページで公開しているシラバスによると、英語1は「英語論文を理解するためにトレーニングを行う」として、be動詞や一般動詞の過去形などを学習内容に挙げている。

北翔大(北海道江別市)が是正を要求されたのは大学院の学生の募集要項。「可能な限り受け入れる」などの表現について「適切な入学者選抜が行われていない印象を与える可能性がある」と指摘があった。法政大(東京・千代田)に対しては、大学院で定員の超過が続いているとして是正意見を出した。

大学の組織や教育内容を点検する仕組みとしては、今回の調査のほか、すべての大学を対象に、独立行政法人や公益財団法人などの評価機関が7年に1度チェックする制度が04年度から導入されている。文科省は今回の調査結果を参考として各評価機関に提供する予定。


文部科学省は調査結果を事細かにまとめられ、今回の報道の基となる「設置計画履行状況等調査の結果等について」という文書を公表しています。

筆者もその文書を読みました。

今回、改善を求められている大学の多くが「学生が集まっていない(定員を充足していない、0.7倍未満)」「教員にお年を召した方が多い」という指摘なのですが、中には少し驚くようなことも含まれています。

近畿地区の私立大に関してのみ、今回日本経済新聞が報じられた例以外で一部をご紹介しますと・・・
(設置計画履行状況等調査の結果(文部科学省)より抜粋)

・教員免許の取得のためには他学科の授業科目を履修する必要があるにもかかわらず、大学案内等には本学科の授業科目のみで教員免許の取得が可能であると受け取られかねない表現が記載されている(東大阪大 こども学部 アジアこども学科)

・アグリーメント入試について、学生と大学が同意に達したら入学を許可するものとの説明であるが、同意以外の大学側の合否の判断基準が明示されておらず、どのように合否を決定しているのか不明(太成学院大)

・留年生が多数生じており、また、在籍学生の学年ごとの評定平均が下の学年ほど低くなっていることについて、教員が面談を行ったり補習、補講を実施して対応しているとのことである。その一方で、学生確保のためにAO入試の募集定員を増やしていることや、設置計画における進級要件では進級できない学生が多く出てしまうため設置時より進級要件を緩和し、「仮進級」という制度を新たに設けている学科があることを踏まえると、アドミッションポリシーに沿った入学者選抜が実施されておらず、教育研究の質が担保されているのか疑義がある(宝塚医療大)

18歳人口の減少に対し、大学の数や定員数は減るどころか増えていく一方の大学入試の世界。学生を確保しようとするあまり、無理が生じてしまっている大学が少なからず現れているようです。

 

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