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2013 年 12 月 9 日 のアーカイブ

猫の絵画あれこれ

2013 年 12 月 9 日 月曜日

 記録的に暑くかつ長かった夏がやっと終わり,ようやく秋らしい時期がやってきた,と思っていたところ,秋は一瞬のうちに終わり,今年もあっという間に12月.ほんとうに 1 年は早いです.しかし,今年の秋も芸術の秋らしく各地でいろいろな催しがあったようでした.電車で滋賀まで通勤すると,いつも目に入るのが,京都でしていた「竹内栖鳳展」の広告です.
 この竹内栖鳳は明治から大正,昭和初期に活躍した日本画家で,この竹内栖鳳展の目玉は「班猫」というタイトルの作品です.これは斑猫を描いた作品であり,本来「斑猫」と書くはずですが,本人が「班猫」と書いているので,このタイトルになっています.竹内は「獣を描けばその臭いまで描き出す」といわれた日本画の大家の一人で,この絵を見たある人によると「この絵が目に入ったとき,猫の目が動いたような気がした」というぐらいリアリティのある絵です.残念ながら,私は非常に混んでいる時に見たので絵の前に人だかりがあり,そのような経験はできませんでした.日本画だから人は少ないだろうとタカをくくっていたのですが,数年前の伊藤若沖ブーム以降,最近はやはり人気が高いようです.  
 このリアリティは,竹内の対象を徹底して観察する姿勢があったようです.竹内が間近でスケッチをしていて (うろ覚えですが,おそらく闘鶏をスケッチしていたと思います),鶏が自分の方に迫ってきて飛びのく写真や,残された大量のスケッチを見ると,その徹底ぶりがわかります.この「班猫」に限りませんが,竹内栖鳳は是非見ておいて欲しい絵を描きます.私個人としては,同時に第1回の文化勲章を受章した日本画家である横山大観よりもはるかに好きです.
 猫ついでに,他に猫の絵で面白いのは誰がいるか.好みは分かれますが,西洋画の世界では,私は熊谷守一が面白いと思います.没後30年以上経ちますが,熊谷も最近は少しブームのようで,先日も雑誌「クロワッサン」で取り上げられていましたし,今年もそして来年用のカレンダーも売り出されているようです.仙人のような風貌をし (でも山の中に住んではいず,東京に住んでいましたが),文化勲章の受章も「これ以上,家に人が来るようになると困る」と言って辞退した孤高の人物でした.絵はどう見ても西洋画なのですが,西洋画の遠近法を無視した画面構成 (といってキュビズムとも違います.影響は受けているとは思いますが) は,まるで日本画のようにも感じられます.線もシンプルで本当に素朴な絵であり,一見素人か子供が描いたのかとも思わせる絵ですが (サインもカタカナで「クマガイモリカズ」と書かれています.かつてある高貴な人物が熊谷の絵を見て「これは何歳ぐらいの人 (子供) が描いたのか」と問うたそうです.熊谷本人はそれを伝え聞いて大いに喜んだそうです),それでも個性が伝わるところが熊谷のすごさです.『熊谷守一の猫』という本まで出版されています.
 もうここまで来たら3人目に行きましょう.いろいろな人物が挙げられますが,ちょっと毛色をかえて,槙下晶さんを取り上げましょう.彼女の肩書きはどうしたらいいのだろう.絵本作家,画家,イラストレーター,版画家… うまく言い表せません.毎年,イタリアのボローニャで行われる国際絵本原画展 (このときの世界各国の入選作品は,毎年日本でも公開されます.関西では夏から秋にかけて西宮にある大谷美術館で公開されます.これは面白いので好きな人にはお勧めです) で2008年,2011年に入選していた絵本『アミューズメントミュージアム』が今年ようやく日本でも発売されました.これはネコの遊園地を舞台にした絵本です.擬人化されてもいますが,熊谷守一とは異なり,絵は細かい線でモノクロの濃淡を駆使して描かれています.といっても竹内栖鳳とも異なります.普通の猫だけでなく,ネコ科全般のさまざまな種 (例えば天王寺動物園にもいるスナドリネコなど) も描かれています.
 あれこれと書いてきましたが,私の文章力では何も伝わりませんね.語彙力も表現力も不足しています.やはり,食べ物と同じで現物を直接,間接を問わず見ていただくのが一番です.ところで,なぜネコを取り上げたのだと言われそうです.大学入試の英文では結構ネコのネタが多いのです.絵画とネコの文章も出題されたこともあります.大学の先生にはイヌ派よりネコ派のほうが多いのだろうか,などと勘ぐってみたくもなります.ある言語学の先生は,興味がある言語の一つとして「ネコ語」を取り上げていました (ただし,バウリンガルがイグノーベル賞を受賞するよりずいぶん前の話です).それにしても,大阪大学のある入試問題では,ネコの鳴き声やのどを鳴らす音を表す単語がいくつか出てきて大変でした.私のこの文章が,そのような英文の読解の際に,少しは参考になることを願いつつ...

開成ハイスクール 片岡尚樹