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開成教育グループ


2017 年 12 月 25 日 のアーカイブ

数学と科学・技術 その17

2017 年 12 月 25 日 月曜日

みなさん、こんにちは。このブログが掲載されるのは、12月25日、クリスマスの日でしょうか?この時期に店に行くと、さまざまなクリスマスソングが流れていますし、年末年始に向けて、「歳末大セール」などの様々なアナウンスが流れ、大賑わいであったりもします。一方、夜になり、雪などが降ると、音が雪に吸収されて、シーンと静まりかえった静寂の時が訪れたりもします。そこで今回は、この「音」について書いてみることにします。
さて、歌番組などを見ると、ソロで歌ったり、グループで歌ったりなど様々な人が出てきますが、ここで少し不思議なことが起こっていることに皆さんはお気づきでしょうか?ソロで歌っている場合と、デュエットで歌っている場合を比べてみると、歌声の大きさは2倍になっているかというと、「そんなことはない」と皆さん感じるでしょう。1+1=2にはなっていないのです。「相手に合わせて、声の大きさを小さくしているからじゃないか?」と思う人もいるかもしれませんが、50人、100人の大合唱を想像してみればわかるように、決して歌声の大きさが50倍、100倍にはなっていないことがわかると思います。何が起こっているのでしょうか?それを理解するには、音の正体と、音を聞く人間の感覚について理解する必要があります。まずは、音の正体から考えてみましょう。これは、理科の授業で教わったように、「音は空気の振動である」というのが正解です。ただし、「振動」は実際は「波」であって、前回の記事で紹介したように、三角関数であらわされるのですが、より正確には、「音の正体は空気の圧力変化である」と表現したほうがいいでしょう。数式で書くと

となり、音の強さは、三角関数の振幅で表されます。

二人が声を出せば、音は、足し算になります。

さて、このままだと、音の強さは、単なる足し算ですから、2倍になってもおかしくないのですが、実は人間は、鼓膜では、足し算で音を聞くのですが、それが頭の中で処理されて音の大きさを違う形に変えてしまいます。数式で表現すると、

という形で理解できることが知られています。こんなところに対数関数が現れましたね。なお、「基準音圧」は、人間が感じとれる最小の音量で、木の葉が触れ合う音や、時計の秒針の音くらいの大きさで、このときの音の大きさは20、単位は「デジベル」を使って、20デジベルと表します。また、人間の普通の会話は60デジベル程度といわれています。秒針の音の3倍くらいのうるささ、と言われると、「そんなもんかな」と感じるのではないでしょうか?さて、最初の問題に戻りましょう。二人で合唱した場合を考えると、音の強さは最大2倍になって鼓膜に届くのですが、音の大きさは、

となって、60デジベルとほとんど変わらない、1.1倍程度ということになります。100人集まって、うまいこと声を合わせてようやく100デジベル、2倍にも満たないというのが人間の音感覚になっています。
さて、実は、人間の感覚には、このような対数関数を使って表されるものというのがたくさんあって、ウェーバー・フェヒナーの法則として知られています。例えば、星の明るさを表すのに、「等級」というのがあると習ったと思いますが(5等級差で100倍の光量差)、これなども対数の法則が使われています。中学までの数学だと、「比例・反比例」程度しか習わず、皮膚感覚と違うところも多いのですが、高校の学習、そして大学での学習を通して、扱える範囲、世界が広がっていきます。よく学び、よく生かしていってください。

開成ハイスクール数学科 村上豊