センター試験でまさかの成績
その男子生徒は同じ部活の仲間に紹介される形で私の教室に入塾しました。入塾から毎日根気強く頑張っていたのは『国公立の大学に行きたい』という強い思いが支えになっていたと思います。私や担任フェローからのアドバイスも素直に聞いて、自分に取り入れ順調に成績を伸ばしていきました。
しかし彼に「まさか」が起きました。センター本番での成績が今までの模試よりも大きく落とす結果となってしまったのです。その結果に私は彼に国公立の受験校変えてはどうかと話をしました。しかし、彼は可能性が非常に低くなっても本来の受験校を受験することを決めました。今まで私のアドバイスを素直に聞いてくれていた彼のこの決断に、私は申し訳ない気持ちでいっぱいでした。大学受験は自分の目標に向かって走りきることが彼らにとって何より大事だということを改めて感じさせられました。夢に向かって一直線に頑張る彼に私ができることは、背中を押してあげることと「もしも」の時の道を準備してあげることでした。
彼は目標としている志望校へ全力で臨みましたが、結果は思うようにはいきませんでした。ただ全力で臨んだ彼には後悔はなく、堂々とした気持ちで志望校と同レベルの私立後期試験に臨むことにしました。
その後、彼の友人はどんどん希望する大学に合格していき、一人また一人と教室を巣立っていきました。
しかし彼は教室のその年最後の受験生になっても毎日教室に来ては最後まで勉強を続けていました。そして彼は見事に難関私学の後期試験で合格を勝ち取ることが出来ました。それは志望の国公立大へ合格することよりも難しいものだったと思います。
あの時、彼に希望の国公立大への受験を無理に止めていたらこの結果はなかったかも知れません。彼の受験は本人にとっても私にとっても大きな成長を与えてくれました。
そして彼はその後自分が最後まで通った教室で担任フェローとして、後輩達に諦めない事の大切さを伝えていってくれています。
受験を通して学んで欲しいこと
受験頑張ろうと思った日から使い始めたノート、参考書、ちょっとしたメモ書きや計算に使ったルーズリーフ。それら全てを受験本番の日まで全部大事に残しておいてください。そして受験前日その全てを見返してみてください。部活終わってから本格的に受験を始めた人でも膨大な量になっているはずです。3年生になる前から始めた人はもっと多くの量になっています。それは皆さんが頑張ってきた努力の証であり、それは必ず自信となって受験当日の不安を抑えてくれるはずです。
また、これだけ長期間に一つの目標に向かって莫大な時間をかけて頑張る機会は大人になってもなかなか訪れません。大学受験を頑張ったという経験は、それだけでこの先の人生において大きな糧となります。
「大学受験を頑張る」
そのたった一言の中には受験生一人ひとりの努力や創意工夫が詰まっています。限られた時間で少しでも多く勉強するために生活習慣を見直したこと。模試の結果を見て自分にとって最優先かつ緊急でやらなければいけない課題を決めたこと。受験の際に行う一つひとつの考えや行動は社会において必要なスキルです。みなさんが大学に合格する為に行う努力は実は社会人になってからの人生に活かされるのです。
ただ忘れないで欲しいことが一つあります。受験は『一人ひとりの戦い』ですが、『一人で乗り切らなければいけない戦い』ではありません。あなたの周りにはあなたを応援してくれている人がいるはずです。ご家族や学校の先生・友達、塾の先生。その人達に相談することも受験において、そしてこれからの人生においても大事なことです。その相談相手の一人に私はなりたいと思っています。どんな些細なことでも構いません。受験のことで困ったことや迷うことがあれば気軽に相談に来てください。
※本文中の赴任教室名・部署名は原稿当時のものです。現在とは異なる場合があります。
好きな言葉 「彼を知り己を知れば百戦危うからず」
元は中国の兵法ですが、何事にも通じる言葉だと思います。戦では敵を、仕事では仕事相手を、人間関係では相手を、受験では志望校を。目標とするものの情報はしっかり知っておく必要があります。
みなさんは自分の志望校がどんな傾向の問題を出題するか正確に理解できているでしょうか。受験ではただやみくもに勉強するのではなく、合格する為の勉強が求められます。また定期的な模試を受験して自分の現状を知ることもまた大事なことです。自分の成績と志望校。その両方を正確に把握することが合格への絶対条件だと考えています。