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物理学は21世紀の主役にもなりうるか?

 2012年になって,物理学の世界ではいろいろなニュースが飛び込んできています。1月には、ハイゼンベルクが1927年に提唱した「不確定性原理」をより精度のよいものとした「小澤の不等式」(発表は2003年)を裏付ける実験結果が発表されました。このときは小さくではありましたが、新聞の1面に掲載されました。物理学や数学に関する研究成果が新聞の1面に掲載されるということは、ノーベル賞の受賞者の決定以外では極めて珍しいことです。
 しかし、7月になってもっと大きな事件が起こりました。「ヒッグス粒子」が発見された(かもしれない)というニュースです。前述の「不確定性原理」の精度を高める「小沢の不等式」については、日本人が関連したニュースだったがゆえに新聞の1面に掲載された可能性もありますが、今回の「ヒッグス粒子」については(日本人が全く関与していないわけではないのですが)、そういうことを越えた大きなニュースでありました。
 この「ヒッグス粒子」は、1964年にイギリスの物理学者ヒッグスによって提唱された「ヒッグス機構」の中で導入された素粒子です。この「ヒッグス機構」は、2008年にノーベル賞を受賞した南部陽一郎博士の「自発的対称性の破れ」の考えに基づく理論仮説であり、素粒子に質量を与えるメカニズムを示したものです。その中で、万物に質量を与える素粒子とされたのが「ヒッグス粒子」です。素粒子物理学の世界では、その基盤となる理論に登場する素粒子は「クォーク」や「ニュートリノ」など全部で17種類ありますが、この中で唯一の未発見の粒子が「ヒッグス粒子」であったわけです。
 私自身、これ以上わかりやすく詳しく語るだけの知識も能力もありませんが、この「ヒッグス粒子」(らしきもの)の発見は、物理学が新たな段階に入り、さらなる飛躍につながると見られています。昔も今も何もかもを統合するのが大好きな物理学者が今、目指しているのは、自然界に存在する4つの力(電磁気力、強い力、弱い力、重力)をすべて説明する超大統一理論の構築ですが、この「ヒッグス粒子」(しつこいようだが、らしきもの)の発見は、それにもつながる「神の粒子」(そう呼ばれたこともあるそうです)の発見でもあります。もしかしたら、この発見は、21世紀の主役も物理学が張れるきっかけになるかもしれません。
 20世紀、とくにその前半期は物理学の世紀でした。19世紀までにニュートン力学とマクスウェルの電磁気学が登場し、古典物理学は完成していましたが(残念ながら高校で学ぶ物理はここまでです)、20世紀になって、アインシュタインによる相対論、プランク、ボーア、ハイゼンベルク、シュレディンガーらによって量子論という現代物理学の2大理論が登場し、パラダイムシフトが起こされました。しかし、21世紀は生物学の世紀になるであろうと言われています。これは、物理学において大きな発見がなされなくなり、生命を扱う学問である生物学が学問の社会への貢献が要請される現代の状況に合致することが背景にあると言われていました。東日本大震災もあり科学への懐疑も広がっています。しかし、ひょっとすると今回の発見は、新たなるパラダイムシフトへつながるかも、と期待されます。
 歴史を紐解いてみると、19世紀末、すなわち相対論、量子論が登場する直前の状況も現代と非常に似ていました。物理学では、ニュートン力学と電磁気学の完成を受けて、もうマクロな現象はすべて説明されると考えられ、もはやこれからの解くべき問題は小数第5位、第6位の世界だけかと言われていました。ニーチェは「神は死んだ」と言い、科学も行き着くところまで行き着いたと言われていたぐらいです。科学への懐疑も強く、人は電燈の明るさに感動しつつも電燈から電気が漏れ出して人類は滅亡しないかと恐れてもいました。そのような中から、物理学は次々と新たな発見をし、主役の座を得たわけです。また、歴史は繰り返されるのでしょうか?
 最後に余談ですが、ひょっとするとこの発見のニュースは来年度の大学入試にも影響を及ぼすかもしれません。もちろん物理や数学、あるいは化学といった自然科学系の科目に影響を及ぼすことも考えられますが、英語の読解問題にも影響を及ぼす可能性があります。大学を問わず、英文読解に自然科学分野の英文が出題されることが増えていますが、とりわけ物理学に関する英文が増える可能性があります。最近では、2005年がアインシュタインの相対性理論発表から100周年、アインシュタイン没50周年にあたる年でしたが、それを受けてかこの年は、アインシュタイン、あるいは物理学(宇宙物理学などもふくむ)に関する英文の出題が多かったように思えます(あくまで印象論です。統計的な裏付けはしていません。あしからず)。
ちょっとは予備知識があった方が、物理、化学、数学はもちろん英語にも有利になるかもしれません。

開成ハイスクール 片岡尚樹


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