秋になりました。食欲の秋ですね。
ということで、今回は、「食べ物」に関するお話を。
皆さんは英語を学習していて、不思議に感じたことはありませんか。
豚=pig 豚肉=pork
牛=cow / ox 牛肉=beef
羊=sheep 羊肉=mutton / lamb
鹿=deer 鹿肉=venison
あれ、動物の呼び名と肉の呼び名で、単語が変わるぞ?
これを説明するには、イギリスの歴史を学ぶ必要があります。
もともとイギリスは、アングロサクソン人が支配していました。しかし、11世紀中ごろから約300年間、フランス(ノルマン人)に征服されます。いわゆる、ノルマン・コンクエスト[The Norman Conquest of England]です。日本は直接外国に占領された歴史がありませんから、なかなか実感がわかないと思いますが、外国(別民族)による支配を受けると、言語や文化に大きな影響を受けます。アングロサクソン人が話していた英語(古英語)が、ノルマン人の支配により、フランス語の影響を受けることになりました。
当時、動物(家畜)を育てていたのが、支配されること(=召使)となったアングロサクソン人であり、その肉を食べたのが、支配層であるノルマン人(=フランス人)です。ノルマン人には肉食の文化があり、アングロサクソン人には肉食の文化があまりありませんでした。
つまり、生きている状態(=家畜)でその動物を見ているのは、英語を話すアングロサクソン人であり、肉となった状態で見るのは、フランス語を話すノルマン人であったということです。ですから、動物・家畜を表す言葉は古英語由来のpig / cow / sheep / deerとなり、肉を表す言葉はフランス語由来のpork / beef / mutton / lamb / venisonとなるわけです。
では、鶏[chicken]はどうなの?
鶏=chicken / hen[雌鶏] / cock[雄鶏] 鶏肉=chicken
昔のイギリスでは、肉といえば「鶏肉」が主流であったため、chickenだけは、そのまま残ったといわれています。それ以外の「牛」「豚」などについては、その肉を食べる習慣自体が、フランスから流入してきたため、フランス語のほうを用いるようになったということです。ちなみに、動物と肉で単語を使い分けること自体が、言語的に見ても稀な現象です。フランス語では当然、「豚」と「豚肉」は同じ単語を用います。
さて、高1、2年生のみなさんの中には、これから志望校・学部を決める人もいるかと思います。今日お話しした内容は、「英語学」を専攻すれば、大学で学ぶことができます。「英語学」ってどんな学問だろう?と疑問に感じている人がいたら、参考にしてみてください。
開成ハイスクール英語科
