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開成教育グループ


新指導要領と数学

 みなさんこんにちは。梅雨の季節、じめじめした日が続いて憂鬱になることもありますが、みなさんはどうでしょうか?とにかくカラッとした日になることを、私は、日々心待ちにしています。
 さて、今回は新指導要領について書くことにしましょう。みなさんもよく知っているように、今年度から、高校の数学の指導要領が変わりました。今回の改訂の大きな特徴のひとつは、「統計」という分野がかなり取り入れられたという点でしょうか。近年のコンピュータ技術の発展と情報化社会の進展をうけて統計が取り入れられたのですが、統計とは何をする分野かご存知でしょうか?
 少し唐突かもしれませんが、みなさんにひいきの野球のチームがあったとしましょう。そして、そのチームが日本シリーズに出場し、日本一を争うとしましょう。何戦目のチケットを買えば優勝の瞬間に立ち会える可能性が高くなるでしょうか?(日本シリーズとは、2チームが戦って、先に4勝したものが優勝を勝ち取るルールになっています。)この問題に対して、みなさんの中には、次のように考える人がいるかもしれません。「今年は、史上最強に強いから、4連勝して優勝するに決まっている!」
 また、ひいきにしている分だけ、そのチームの欠点が見えている人もいるでしょう。そういう人は「何回か負ける可能性もあるよな」と少し冷静に考えて、過去のデータに当たってみるかもしれません。今は便利な時代なので、少し調べると、過去のデータを見つけることができます。私が調べたデータを以下の表で示します(割合は小数点以下一桁まで計算しています)。

試合数 4 5 6 7 合計
回数 7 15 20 20 62
割合 11.3% 24.2% 32.3% 32.3%

 この表は、過去62回の日本シリーズで何試合目に優勝が決定したかを示すデータです(ただし、引き分けは無効試合にして回数にはカウントしていません)。表を見てすぐにわかることは、6試合目と7試合目が一番多く、同じ回数であるということです。データを調べてみた人は、この表を見て次のように考えるでしょう。「なるほど、さすが日本一を争うだけある。激戦を繰り広げて、一番試合数が多くなるようになっているのだな。よし、6試合目のチケットか、7試合目のチケットを買うことにしよう。」
 さて、最初の人と別の結論が出てしまいました。一体何が起こったのでしょう。実は、このことを明らかにするのが、「統計」という分野になります。実際、高校で習う反復事象の確率の考え方を応用すると、理論上、何試合目に優勝が決定するかということを計算することができます。実際の計算は省略して、それを以下の表で示しましょう。

試合数 4 5 6 7 合計
割合(実測値) 11.3% 24.2% 32.3% 32.3%
割合(理論値) 12.5% 25.0% 31.3% 31.3%

 先ほどの実際の値と並べて、理論値を書き並べました。なお、この理論値を出すために、2チームは互角の力をもっていると仮定しています。さて、表を見てすぐわかることは、1%程度の誤差はありますが、実測値と理論値が非常によく一致していることです。こうして、理論的にも6試合目、7試合目で終わる可能性が高いことが立証されたといえます。では、最初の人が考えた「今年は、史上最強に強いから、4連勝して優勝するに決まっている!」という考えは間違いなのでしょうか?統計の考え方をすれば、実はそういうことは言えません。数行前にさらっと書きましたが、理論計算をする時に「2チームは互角の力をもっている」と仮定していたのです。したがって次のように考えるのが妥当でしょう。「長い目で見れば、日本シリーズに出場する2チームは互角の力をもっているのだろう。しかし、時には圧倒的に強いチームが出場することもある。実際、過去62回のうち、7回は4戦目で終わっているのだから。」
 さて、以上で統計の話を終えますが、どうだったでしょう。「なんだ、当たり前の結論じゃないか」と思う人もいるかもしれません。しかし、数学においては、この「当たり前」に至るプロセスが大事なのです。問題に当たったとき、最初はいろいろな意見があります。そんな中で、実際にデータを調べ、そこに理屈を見出し、しっかりした結論を導き出す、このプロセスが数学で大事にされる点です。皆さんの中には、普段、点数という結果で計られることばかりで「憂鬱だな」と感じている人もいるかもしれませんが、そういった結果、結論にばかり縛られるのではなく、定期テストの勉強や、受験のための勉強をする中で、よく調べ、考え、正しい答えを導き出す訓練をしていってください。

開成ハイスクール数学科 村上 豊


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