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開成教育グループ


朝顔あれこれ

「朝顔につるべ取られてもらい水」千代女
これはよく知られている俳句の一つで、一般には、「朝顔につるべ取られてもらひ水」という形で知られています。ところが千代女の直筆には「顔や」と書かれているものがあります。(「に」から「や」に推敲)。
では「に」と「や」ではどのような違いがあるのでしょうか。なんだか古文の問題のようで申し訳ありません。文法的にはどちらも間違っていません。それならどっちがいいのでしょうか。わかりやすいのは断然「に」の方です。朝早く起きて井戸まで水を汲みに行くと、朝顔のつるが釣瓶(の綱?)に巻きついていました。そこで擬人法的にこう詠んだと解釈できるからです。わざわざ「もらひ水」をした理由がはっきりしていますね。
それが「や」だと少々複雑になります。俳句の「や」はいわゆる「切れ字」ですから、一度そこで文が切れます。そのため朝顔と「つるべ取られて」以下が直接結びつきません。そのかわり「朝顔や」とすることで、何より朝顔の花の美しさに感動していることが感じられます。一方「朝顔に」では、朝顔の花の美しさが伝わりにくいのではないでしょうか。それぞれ一長一短があるのです。もちろんつるが巻きついているだけですから、それをほどいてあるいはちぎって、水を汲むことも可能です。そうしないで近所で水をもらうところが千代女の優しさであり、この句の見所ではないでしょうか。
朝顔は英語では、morning gloryといいます。直訳すると「朝の輝き」、なんだかカッコいいですよね。ちなみに朝顔は、アメリカやヨーロッパではそれほどメジャーな植物ではないように思います。日本人にとってみれば、昼になるとしぼんでしまうその儚さゆえに美しく感じるわけですが、欧米の人からすると、「それだけしか咲かないなんて」と思ってしまうのかもしれません。
花名の朝顔は、朝に花を咲かせ、昼にしぼんでしまう様子を「朝の美人の顔」にたとえた「朝の容花(かおばな)」の意味といわれています。朝顔の花言葉は、「はかない恋」「固い絆」「愛情」。花言葉の「はかない恋」は花が短命であることから、「固い絆」は支柱にしっかりとツルを絡ませることに由来します。
日本には奈良時代末期に遣唐使によって中国から伝わった朝顔。牽牛子(ケンゴシ)という別名は、種子に下剤や利尿剤としての効果があり、中国では牛と交換されるほど高価だったことに由来します。江戸時代に2度の朝顔ブームが起こり、それを機に品種改良も進み観賞用植物となったそうです。
今日は立秋、暦の上では秋が来たとはいえ、まだまだ暑い日の続く8月、まだ涼しい朝に早起きし、勉強の前に朝顔など眺めてはいかがですか。

開成ハイスクール 英語科 松本 雄


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