大阪府立高校 中途退学率について

2017年5月2日

入学式、始業式を経て、高校もようやく落ち着いてきたこの時期ですが、残念ながら5月6月は最初に中退者が出てくる時期でもあります。年間で最も多いのは年度替わりの3月だそうですが、これは留年が決定した、他の学校に変わるために単位だけでも確保しておきたい、という理由のようです。

さて、大阪府立高校の中退率に関する資料を手に入れましたので、グラフ化してみました。どのように変化しているのか見てみましょう。

 

残念ながら大阪府は全国に比べて高校を中途退学する率が高いといわれています。しかし、大阪府立高校については2007年(平成19年)の2.9%をピークに一気に下がっています。

その理由は何でしょうか。大阪府の橋下知事による教育改革の効果でしょうか。

そこで、大阪府の教育に関する大きな変更を書き込んでみました。橋下府政が始まったのと中退率が急落している時期が同じなので、改革の成果と思われがちですが、実はその前の学区統合の効果だと考えられます。学区が統合されることで、より個々人のニーズに合った学校を選ぶことができるようになったという事でしょうか。

 

ところで、中途退学の理由の一つに、学習面でついていけない、というのがあります。確かに英語ひとつ例にとっても、高校の英語教科書は一気に冊数も増え、内容も高度になっていますので、その科目が不得意な生徒にとっては辛いと感じることでしょう。

大阪府は中学校での基礎学力に不安のある生徒に対してそのフォローを目的とした「エンパワーメントスクール」という制度を作り、一部の学校を指定しました。その効果でしょうか、その時期からも中退率が下がっています。今では学区が撤廃されていますので、広い範囲からその学校を選ぶことができるようになり、ここ15年で中退率は最低水準まで下がっています。

 

と、ここまでこの文章を読んでいる方、では大阪の高校教育は良くなっているのだなぁと感じられたと思いますが、2013年の私立も含んだ大阪府全体としては2.4%とまだ全国最悪レベルなのだそうです。府立高校の中退率は下がりましたが、私立高校の中退率は約3.8%と推計されます。実は2011年に拡充された私立の授業料無償化によって、従来は格安な公立高校を選んでいた経済的に厳しい環境の子どもも私立高校に進むことができるようになりました。そのような背景から経済的な理由での中退者が私学に移っているとも考えられます。

 

中退といえば、勉強に対する意欲を失って学校に行かなくなるという、本人に理由があるかのような古いイメージを持っている人もいますが、意欲を失わせたのは社会だともいえますし、意欲があっても通えなくなる生徒をひとりでも減らすのが社会の責任だといえます。学校はもちろん、私たち学習塾も含めて地域全体で子どもが学びたくなるような環境を提供することや、私学に対する助成や経済的な扶助システムの拡充が求められるところです。