「学校選び」とは

2016年12月30日 金曜日

2016年もこのブログをお読みいただきありがとうございました。明日から年末年始のお休みに入り、このブログの更新もしばらくできなくなりますが、ここで、「学校の選び方」について書いてみたいと思います。

昔、野球が大好きなので、野球部が強い学校を選んだ生徒がいました。あこがれの野球部に入部したところまでは良かったのですが、そこは各中学から強豪たちが集まってきていたため、残念ながら高2になっても彼はレギュラーメンバーに入ることができませんでした。そこで彼は部活をやめてしまうのですが、張り合いが無くなってしまったのでしょうか、学校も長期欠席するようになってしまいました・・・。

この生徒のように部活の強さという一面だけで、学校選びをさせてしまったのは、学習塾として痛恨の極みです。自分の夢や進路を叶えるために学校を考えるばかりではなく、もっと多面的に学校をとらえてもらうようアドバイスをするべきだったと思います。

まず、万人にとって「良い学校」、「素晴らしい学校」というのは存在しません。学校は先生のみならず先輩、理事会、地域といった人の集団で運営されていますので、それぞれ個性というのがあります。その個性と子どもの個性がマッチした時、初めて「良い学校」に行った、と実感できるわけです。例えば学習意欲が高い子どもは、自習や先生に自由に質問できる時間と空間が準備されている学校が合うでしょうし、周りの雰囲気に流されがちな意志がそれほど強くないタイプの子どもは、勉強面だけでなく、生活面でも厳しく引っ張ってくれる学校で大きく成長するでしょう。

また、学校は毎日生活する場でもありますので、設備や環境も大切です。教室や実験室など授業のための設備だけでなく、たとえば成長期の子どもはおなかが空くものですから、お弁当を作ってもらえなかったときのために学校に食堂があるかどうか、放課後でもパンなどの軽食が入手できるかといったことまで考えながら学校見学をしてみると良いでしょう。水泳が不得意なのでしたら、最初からプールが無い学校を選ぶという考え方もあります。この子どもにとっては、「無いということ」がメリットになるわけですね。

男女別学と共学もそれぞれにメリットとデメリットがあります。男女別学といえば近畿では私学しかありませんが、「女子校だから(男子校だから)ダメ」と決めつけるのではなく、そうであるからこそ、学校はこんなこともできる、生徒はこんな風に成長できる、という部分も聞いてみましょう。

1月になると中学入試・大学入試が、2月には高校入試が本格化しますが、次の受験生である今の小5、中2、高2にとっては学校選びのスタートラインでもあります。今後もお読みいただいている皆さんのお役に立つような、皆さんと学校との素晴らしい出会いのお手伝いができるような情報を「学校選びの道しるべ」としてお届けしたいと思います。よろしくお願いします。

 

 

仏教系大学 学生数ランキング

2016年12月29日 木曜日

昨日に続きまして、本日は仏教系大学の学生数ランキングを紹介しておきます。昨日同様、元データは「大学ランキング2017」朝日新聞社刊 です。

大学名の後に宗派を記号で示しています。(真言宗のみ、(真言)と表記しています。)

㋔=浄土真宗大谷派

㋛=浄土宗

㋞=曹洞宗

㋢=天台宗

㋥=日蓮宗

㋭=浄土真宗本願寺派

㋷=臨済宗

 

この学生数上位27大学のうち、浄土真宗本願寺派が7校、浄土真宗大谷派が5校と、浄土真宗だけで12大学と圧倒的なシェアを占めます。浄土真宗の門徒数は仏教徒の3割強程度に対し、学生数でも仏教系の中で4割ほどと大きなシェアを占めています。浄土真宗は教育に積極的な宗派だといえるでしょう。

仏教系の大学のキリスト教系大学との違いは、長い歴史があるところです。キリスト教系の大学はいずれも明治期以降に設立されたものですが、たとえば四天王寺大学はその起源を聖徳太子の時代にまで遡れますし、龍谷大学も1639年、西本願寺境内に作られた学寮が起源になっています。元々は僧侶養成に重点が置かれていましたが、次第に信徒の教養教育、技芸教育にも力を入れるようになり、「寺子屋」と呼ばれる民間教育機関を併設するところも出てきました。これらの教育のノウハウが一般の人々からも支持されるようになり、大学とその付属高校、中学校を擁する学校法人にまで発展したところもあります。今では人文系、福祉系、教育系、のみならず、駒澤大学や愛知学院大学、佛教大学のように医療系の資格取得や、龍谷大学や埼玉工業大学のように、理工系や生命科学系などの最新のテクノロジーの研究ができる大学にまで発展したところもあります。

学校選びは偏差値や設置学部だけなく、このような背景を調べることで、その特徴を知ることもできます。気になる大学の歴史も調べてみてはいかがでしょうか。

キリスト教系大学 学生数ランキング

2016年12月28日 水曜日

年末年始は何かと宗教行事の多い時期です。キリスト教系の学校では、クリスマスに向けて、様々な飾りつけや聖歌隊の演奏などが行われるミサなど、この時期を祝う行事が続きます。

キリスト教系大学の学生数をグラフ化しました。(元データ「大学ランキング2017」朝日新聞社)大学名の後ろに★がついているのは同じキリスト教でもカトリック系の修道会が運営している学校です。同志社をはじめとして星印がついてない大学は、プロテスタント系です。プロテスタント系はカトリックと違ってその中でさらに宗派に分かれているので、それぞれの宗派が学校を作ることによって学校数は多くなっています。たとえば学生数1位の同志社と2位の関西学院は同じプロテスタント系で、どちらも日本基督教団指定の神学部を設けていますが、同志社は「会衆派系」、関西学院は「メソジスト系」と少し違いがあり、関西学院は同志社より同じメソジスト系の青山学院の方と仲が良いようです。

同志社では毎年クリスマスの時期に、「全同志社メサイアコンサート」を行います。ヘンデルのオラトリオ、「メサイア」全曲をオーケストラと合唱併せて200人近い学生が、外部のホールを借りて演奏するという一大イベントです。約2時間半の長大な曲ですから一般の演奏機会は少ないのですが、キリストの誕生を祝う内容の名曲の演奏を毎年楽しめるというのは、同志社大生の特権でしょう。聖歌を大切にしたといわれるマルティン・ルターの考えがここにも生きているのでした。
(明日の「仏教系大学 学生数ランキング」に続きます)

全国高校駅伝大会が開催されました

2016年12月27日 火曜日

駅伝ファンの皆様、お待たせしました。今年も恒例の「全国高校駅伝競走大会」が京都市内を舞台に開催されました。男子は第67回、女子は第28回となるそうです。個人で競うことが多い陸上競技ですが、駅伝は区間ごとの距離やアップダウンなど条件が異なるため、どこにその選手を配置するべきかなどチームプレイとしての側面と、合計でのタイムで競うわけですから選手層の厚さがものをいう競技です。今回もトップ集団の順位が途中で入れ替わるなど、目が離せないレース展開でした。男子は倉敷(岡山)が初優勝、女子は大阪薫英女学院が2年ぶり2回目の優勝を果たしました。 

この大会は記念大会を除くと各都道府県から1校しか参加できませんので、高校野球よりも出場のハードルが高いといえるでしょう。元々長距離走に向いた生徒が入学しているケースもあると思いますが、他のスポーツと同じように練習方法や監督の指導など、総合力でが勝っている学校が常連校となっています。

 男女の結果です。入賞の順位である1位から8位までは全国の高校から、それ以下は大阪、奈良、京都、滋賀、兵庫の学校のみリストアップしています。

 

男女とも入賞の西脇工業高校は、機械科、電気科、工業化学科、情報・繊維科、総合技術科の5つの専門科を持つ兵庫県立の高校です。特に長距離走の選手を集めているわけではないと思うのですが、上位入賞の常連校となっています。

同じく近畿から男女とも出場しているのが、奈良の智辯学園。県代表になっている段階で十分強いと思うのですが、さらに練習環境を向上させるために、同じ学校法人が運営する智辯奈良カレッジに活動の拠点を移すという話も伝わってきています。

京都の洛南も2年連続の入賞。関大北陽も2009年からの8年間に6回大阪代表になる常連校です。

女子は大阪府摂津市の大阪薫英女学院が2年ぶり2度目の優勝となりました。この学校は英検の合格率で有名な学校ですが、バスケットボールも全国高校バスケット選抜優勝大会で全国ベスト4に進むなど(12月26日現在)スポーツも盛んです。

薫英女学院についてはこのブログでも以前紹介していますので、併せてお読みください。

http://www.kaisei-group.co.jp/nyushiblog/juniorhigh/25579.html

 冬は長距離走の季節です。陸上に興味のある方や駅伝が好きな方はこれらの大会結果も学校選びの参考になさってはいかがでしょうか。

 

 

小学校英語 教科化 2018年より先行実施

2016年12月26日 月曜日

12月22日の毎日新聞によりますと、2020年から導入予定の新指導要領の目玉の一つである「小学校英語の教科化」が2018年より先行導入されるとの報道がありました。2020年導入ということは、関係するのは現在の小1以下の学年だと見られていましたが、この先行実施によって現在の小3以下の学年が影響を受けることになりました。

 

(毎日新聞Online http://mainichi.jp/articles/20161222/ddm/002/100/163000c より引用)

ここで、気を付けたいのは、指導要領によって「教科として」教えられる科目になるということは、今でも私立中学校入試で一部選択として扱われている英語が本格的に導入されるばかりでなく、公立中高一貫校の適性検査も変わってくることが予想されます。さらに、中学入試を考えていない生徒にとっても、中1の英語の教材から、現行のようなアルファベットと簡単な単語といった導入段階が消え、ある程度のまとまった会話文や文章からスタートすることになるなどの影響を受けることになります。

加えて新聞記事には最後に書かれていましたが、新指導要領では高校の間に学ぶ英単語の数を、現在の3,000語程度から5,000~6,000語程度に増やすとのことです。従って大学入試に出題される英語長文のレベルも上がると考えられます。(実は、今の大学入試で使われている英語の長文は、雑誌記事や小説を題材に使っているものが多いのですが、原文のままではなく、高校生でもわかるように、表現技法や単語のレベルを落として書き直しているものがほとんどです。)つまり、今の小3以下の学年が大学受験をするころには英語圏で実際に使われている本格的な素材文を早く読んで的確に理解する力が必要になるというわけです。

小学校が全面的に外国語を取り入れるのは史上初めてのことであり、教員の研修も含めて授業の質を保証する方法についての詳細が決められていないタイミングで、さらに工程を短くする答申に対しては今後議論も起こるでしょう。しかし、導入時期が決まったことによって一部の私立小学校や公立の研究校で行われている実践が紹介される機会も増えると思います。

 

 

平成28年一級建築士試験「設計製図の試験」合格者3,673人の主な属性

2016年12月22日 木曜日

平成28年一級建築士試験「設計製図の試験」の合格者が発表されました。この「設計製図の試験」というのは、一級建築士の2次試験(最終試験)で、この試験に合格できれば資格が手に入るというシステムになっています。

一級建築士を受験するためには、二級建築士合格後、2年以上の実務経験が必要です。しかし大学院在学(および必要な単位)によってその代わりにすることもできます。つまり受験資格を得るためには大学院を卒業するか、学部卒業後、2年の実務経験を経る2つの方法があります。最短でも高校卒業後、6年間経なければ受験資格が手に入らないというハードルの高さですが、そのうえ1次試験の「学科」と2次試験の「製図」両方合格できたものは12.0%と資格試験としては難関の部類に入ります。

今年の設計製図試験の課題は「子ども・子育て支援センター」(保育所・児童館・子育て支援施設などの複合施設)を設計せよ、というものだったそうですが、今必要とされている施設という意味では実態に即した試験だといえるでしょう。

受験資格に「大学・各種学校」を書いている人は約76.2%ですが、その中でのランキングが発表されています。全国一位は日本大学の180名、2位は東京理科大学の123名、3位は芝浦工業大学の90名と関東勢がベスト3を独占しています。そこで、ここでは10名以上の合格者が出た近畿の大学・専門学校を紹介します。

 

近畿1位は全国では5位の近畿大学です。次は国立大学が3校続きますが、近畿で5位は関西大学、文系学部が多く、元気な関西大学ですが、理系の建築学部も目覚ましい実績を上げています。大阪工業大学と二つ下の摂南大学は同じ学校法人ですので、合計すると63名と近畿で3位ともいえます。

女子大で唯一ランクインしているのは武庫川女子大学。薬学、看護学も有名ですが、食物栄養なども含む生活環境学部の中に、建築学科があります。本学と少し離れたところにある建築学科ですが、近くの工場の中庭の設計や現在高架工事中の阪神電鉄の駅の見学など、実習や見学を数多く取り入れている実践でも有名です。

一級建築士という巨大な公共物の設計もできる資格があれば、文字通り「地図に残る仕事」ができるのです。これから大学選びをする皆さん、いかがですか?

 

 

3月に(早くも)オープンキャンパスが開催されます

2016年12月21日 水曜日

大学のオープンキャンパス情報をお知らせしておきます。

「え?そろそろ出願だというこの時期に??今頃???」と思われた方、そう思うのも無理はありません。実は高3向けのオープンキャンパスではなく、その次の年度に向けて3月に行われるイベントの話なのです。

 

摂南大学はさりげなく6月~12月までの日程に続けて3月の日程が紹介されていますが、この大学は3月5日が最後の入試日ですので、ここにある3月18日は高2以下向け、という事になります。思わず見落とすところでした。

ここでは摂南大学のオープンキャンパスを紹介しましたが、それ以外にも昨年には近畿大学などが3月にオープンキャンパスを開催しています。このようにすでに次の受験生向けのイベントも今後発表されていきますので、気になる大学のホームページを定期的に巡回しておきましょう。

 

 

国立大学2次試験 87.5%が「記述式」

2016年12月20日 火曜日

大学入試改革についての議論が進み、大学入試センター試験にかわる新テストが実施される2020年には記述式を導入しようという方針で進んでいます。ところで、国公立大学の一般入試を受験する生徒は今でも記述式の模試を受けるなど、準備するのが一般的になっています。実際に国公立大学はどの程度、記述式を採用しているのでしょうか。

12月19日の朝日新聞に、すべての国立大学82校について調査した記事が載っていました。

調査したのは東北大学のグループです。○×式や選択式以外の、採点に人の判断が必要となる解答方式を「記述式」と定義して、分類して数えだしています。

すると、なんと全24,068問中、21,065問が記述式だったそうです。割合にしますと87.5%になります。

その記述式の問題をさらに分類したのがこのグラフです。


やはり、数学は記述式が多いようです。計算結果を聞くよりも、○○を導け、○○を証明せよ、という数学的思考力をじっくりと問う機会は、むしろ国公立の2次試験しかないともいえます。

英語でも数十語以上の英作文が増えるなど、すでに記述が難化、高度化する傾向にあります。国公立入試を考えている皆さんは、数学の途中式と英作文を書くことを習慣にすると良いでしょう。

 

獣医師に近い大学

2016年12月19日 月曜日

「動物が好きなので、獣医さんになりたい」という相談を生徒さんから、時々聞くことがありますが、獣医師になるためには「獣医学科」のような養成機関に6年間在籍してから国家試験の受験資格を得て、その試験に合格して初めて「獣医師」になることができます。

ところが、その受験資格を手に入れられる大学が日本には16校しかありません。医学部医学科は80校(国立43校、公立8校、私立29校)ありますから、それと比べると学校数はちょうど5分の1ですが、定員の合計は医学部の約10分の1の930名と狭き門になっています。

 

難易度はベネッセの数値です。大学名を薄く色を付けているところは私立大学です。御覧のように近畿圏では大阪府立大の「生命環境科学域・獣医学類」が唯一の国家試験の受験資格が得られる教育機関となります。

 

さて、国家試験の合格率はどのようなものか見てみましょう。この表は2016年の獣医師国家試験の合格率の高い大学を順に並べたものです。東京農工大は全員合格。先ほど挙げた大阪府立大も9割近くと高い数値になっています。(サンデー毎日12月25日号より引用)

昔は、獣医師はペットの病気を治すというより、産業動物と呼ばれる家畜の健康管理が主な守備範囲でした。今年も家畜の伝染病のニュースが報道されていますが、その診察や対策は獣医師が中心となって行われています。このように、獣医師の資格を手に入れた後はその専門性を生かして約半数が公務員や農業関係団体、製薬メーカーの研究員や大学の研究者になっています。動物園にも獣医師が必要ですが、そもそも動物園の数が少ないので、それほど大きな就職先にはなっていません。そして動物病院に就職したり、開業したりしているのは51%と約半数がペットのお医者さんになっているようです。

大阪府立大の獣医学類はセンター試験で80%以上の得点が必要です。獣医さんを目指す方は、ひとまずそこを目標に頑張りましょう。

 

大阪工業大学 梅田キャンパスができました

2016年12月16日 金曜日

JR大阪駅、阪急梅田駅のすぐ近くで建築されていた地上22階、地下2階の巨大なビルが完成しました。「大阪工業大学梅田キャンパス」です。大阪駅の近くには以前ここで紹介した関西大学のように、就職支援のためのオフィスを構えている大学がいくつもありますが、ここは次の4月から大阪工業大学「ロボティクス&デザイン工学部」が開設されるなど、毎日学生が通うキャンパスとして利用されることになります。

先日、見学会が実施されましたので、行ってきました。学校関係者や高校生が多く参加しています。まず、6Fのラーニングコモンズという場所で新たな学部の説明が行われます。


その後、真新しい教室を見せていただきます。まだ、完成したばかりで備品はあまり入っていませんが、ここは学生実験室です。机といす8個セットが一つの研究室、となるそうですが、このような柱の無い大空間の中に島のように配置されているので隣の研究室と壁も何もない、というわけです。


大阪工業大学 梅田キャンパス  内観4

このような高層ビルタイプのキャンパスでは授業前後でエレベーターが込み合うという問題が生じるものですが、ここでは1フロア上の学生が居場所にする「デザインスタジオ」との間にはエレベーターを使わなくてもいい様に吹き抜けの階段があります。

ビルには免震装置がついています。解説のプレートもついています。こういう構造物を見せるというのもさすが工業大学ですね。

最上階にはレストランがあります。お昼には学生用にランチが数百円で提供される予定です。ここは一般の人も利用できるように別のエレベーターがあり、大学に迷い込まないようにゲートもついています。HEPの観覧車を下に見ながらのランチが食べられる大学というのも素晴らしいですね。

今回は完成したばかりのビルを見ながら、新学部のコンセプトを説明していただくというイベントでしたが、この大学から未来のロボットやデザインといった新たなものを生み出すといった熱意を十分感じることができました。