国際数学・理科教育調査(TIMSS)の結果が発表されました

2016年12月2日 金曜日

昨年に行われた国際数学・理科教育調査(TIMSS)の結果が11月29日に発表されました。この調査は、学校教育で得た知識や技能がどの程度習得されているかを評価するために、国際教育到達度評価学会(IEA)が行う小・中学生を対象とした国際比較教育調査です。TIMSSとは「Trends in International Mathematics and Science Study」の頭文字です。名前の通り、数学と理科の学力を調査するものです。この調査は1970年には理科、1981年には数学など不定期に行われていましたが、1995年以降は4年に1回、オリンピックイヤーの前の年に行われています。(ただし、2003年は中学生のみ。)

回によって多少の増減はありますが、近年では世界40か国以上が参加しています。

応用的な力を測るOECD(経済協力開発機構)が行っているPISA (学習到達度調査)より、学校で学んだ能力が発揮できる内容となっていますので、学校教育のシステムが整備されているアジア勢が毎回上位を占めます。アジア諸国のランキングの推移を挙げておきます。

まず、小学校4年生の推移です。(台湾、韓国は参加していない年がありますので、線が切れています。)

次に、中学2年生のランキング推移です。

この件に関する松野文部科学大臣コメントを一部引用します。

「今回の調査結果によると、我が国の算数・数学、理科の結果は、比較できる範囲で最も良好な結果であり、国際的に見ても引き続き上位に位置するとともに、小中学生の算数・数学、理科の意識についても改善が見られることが分かりました。これは、各学校や教育委員会において、「確かな学力」を育成するための取り組みをはじめ、学校教育全般にわたり教職員全体による献身的で熱心な取り組みが行われてきたことの成果であると認識しています。」

確かに、上位を維持することができただけでなく、最上位グループの人数割合が増えたなど、全体的に改善している兆候は見られます。ただし、算数・数学に関しては、他国との比較では特に順位の上昇にはつながっていません。この結果だけから「脱ゆとり」の目覚ましい効果があったとはいえないと思います。

理科の観察や実験を日常的に行い、数学でも新たな解法を見つけるための議論に時間をかけるなど、理数系教育に力を入れ、その成果を上げている私立中学校や公立中高一貫校の優位性は、ひとまず変わらないと思われます。