高校社会の科目変更か

2016年6月6日 月曜日

読売新聞 平成27年5月10日(火) 朝刊

文部科学省は高校の社会科について、科目とその扱いを変更する案を発表しました。選挙権年齢の引き下げに合わせ、主権者教育の必要性は様々な方面で主張されてきましたが、6年後にようやく実施される見込みが出てきました。しかし、それより大きい変化は、現行では世界史が必修だったので、世界史Aを学んだあとに日本史Bや地理Bを履修するケースも多く、その連携が上手くいっていたとは限りません。(中には世界史の中でも日本との関連の部分を強調して、日本史にもうまくつながるよう巧みな授業を行う先生もいらっしゃいましたが・・・。)それを歴史総合という形でその後日本史、世界史のどちらを選択しても連携が取れるようにしたのは大きいと思います。但しそれに加えて地理が必修化というのは科目の負担が増えることになるので、この案が通れば、2022年の高校生(現在の小学4年生)からは社会でも差がつくようになる事でしょう。地理の統計などは変わりますが、地名や地域名、気候区分・農業区分などはそうそう変化しませんので、世界地理や、同じように大きく変化しない世界史に興味を持ってもらえるようにカラフルな地図や資料集、歴史事典などを、小学生がいらっしゃるご家庭ではご用意されては如何でしょうか。

 

大阪市 5歳児教育無償化予算案 可決

2016年4月12日 火曜日

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読売新聞 3月30日

◇市議会 16年度予算可決

大阪市議会は29日、政令市で初となる5歳児の教育費無償化を盛り込んだ2016年度一般会計当初予算案(1兆6509億円)などを可決し、閉会した。無償化は4月の導入が正式に決まった。

5歳児の教育費無償化は、吉村市長が掲げる目玉政策。市内の幼稚園や認可保育所に通う約2万人を対象に、幼稚園の保育料について公立で全額、私立では年30万8000円を上限に無償とする。保育所は幼稚園の保育料相当額にあたる5~6割を減額する。

http://www.yomiuri.co.jp/local/osaka/news/20160329-OYTNT50339.html

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大阪市では5歳児教育を無償化する予算案を3月末に可決しました。幼稚園の保育料については公立で全額、私立では年30万8千円を上限に無償とする。保育所は幼稚園の保育料相当額に当たる5~6割を減額する、としています。政府も5歳児教育無償化を検討していますが、財源の問題から年収制限を設ける見込みですので、大阪市の制度はそれよりも踏み込んだ内容となっています。

大阪市の吉村市長によりますと、アメリカ、ドイツでは5歳から教育費が無償で、イギリスは3歳から、フランスでは2歳からと、先進国の中で最も遅れているとの指摘です。しかし、保育園整備の問題など育児関連予算に加えて、さらに育児関連の費用が予算化されることに財政上のバランスを問題視する声もあり、他の自治体が追従するかどうかは不透明です。従って地域によって子育てにかかる費用に差が生じるという新たな問題も生じそうです。

 

2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会中間発表

2016年4月11日 月曜日

文部科学省の諮問機関である「学校の情報化に関する懇談会」が4月8日にそれまでの議論をまとめた中間発表を行いました。

論点を簡単にまとめると以下のようになります。

急速な情報化の進展により、コンピュータやスマートフォンを利用したインターネットの活用が進んでいる。が、さらにAI(人工知能)やIoT(情報機器以外のものまでインターネット接続されること)、ビッグデータなどにより人間生活が質的に変化する。

このような社会の変化に子どもは受け身で対処するのではなく、主体的に向き合っていく必要がある。このような能力は教科ごとの学習ではなく、教科横断的な視点での学習が必要である。そこで、情報活用能力が必要である。

また、学校のICT(情報通信技術)化は民間企業に比べて遅れているため、教員の時間的・精神的余裕を確保するためにも、校務の情報化が有効である。

さらに、地域や大学・民間との連携にもICTは有効に利用できる。

今後は、「生徒一人一台コンピュータ環境」と「堅牢な校務支援システム」を前提とした「スマートスクール構想」構築のための実証研究を行う。

というものです。しかし、コンピュータの購入の金銭的負担や教員の研修など、現実的に解決しなければいけない問題も多いと思います。従って、公立の学校の「スマートスクール」化がどのように進むのか、また、既に「スマートスクール」化による差別化をしている私立の学校がどの部分で優位性を確保するのかなど、教育環境に与える影響は少なくないと思います。

文部科学省HP(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/

__icsFiles/afieldfile/2016/04/08/1369540_01_1.pdf)より

 

 

大阪の英語力は全国最低??

2016年4月8日 金曜日

(2016年4月5日読売新聞 webニュースより抜粋)

文部科学省は4日、全国の中高生らを対象にした2015年度の「英語教育実施状況調査」結果を発表した。高校3年生で「実用英語技能検定(英検)準2級程度」以上の英語力を持つ生徒は34.3%、中学3年生で「英検3級程度」以上の英語力を持つ生徒は36.6%で、いずれも前年度比で2ポイント以上増えた。

調査は昨年12月、全公立中学、高校計約1万3000校の中3生、高3生について、各都道府県教委などを通じて実施。「英検準2級程度」「英検3級程度」については、試験で資格を取得した生徒に加え、教員が普段の授業などから同等の力があると判断したケースを含めて集計した。それによると、中3では、「英検3級程度」以上は前年度比2ポイント増の36.6%、高3では、「英検準2級程度」以上は同2.4ポイント増の34.3%で、中3は3年連続、高3は2年連続の増加となった。今回は、各都道府県の実情にあった取り組みを促すため、都道府県別のデータも初めて公表。中3では、千葉が52.1%で唯一、政府の目標を上回ったほか、秋田(48.6%)、東京(47.9%)など9都府県は40%台だった。

一方、高知(25.8%)、熊本(26.9%)など8道府県は30%を切った。

高3では、群馬(49.4%)、千葉(45.5%)、福井(42.5%)など5県で40%を超えたが、沖縄(21.8%)、和歌山(22.5%)など11道府県は30%に達しなかった。

文科省は「英検準2級程度」以上、「英検3級程度」以上を測る統一的な基準を示しておらず、高知県教委では「学校現場の判断に任せた」などと説明。このため、文科省では「都道府県間の単純な数字の比較は難しい」としている。

(以上抜粋)

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大阪の中3生のうち、英検3級以上取得者の割合は9.7%で全国47位と最下位に、学校ごとに英語教員が英検3級以上相当の力があると思われる生徒を加えても28.9%と全国平均の36.6%を大きく下回り、42位となりました。

これは英検に対する学校毎の取り組みが現れた資料ですので、実際の英語力をランキングにしたわけではないのですが、やはりここまで順位が低いというのは、英語に対する取り組みが遅いのは確かなようです。

 

小学校からの英語教育に関心のある方はこちら


 

 

小学英語 2020年からの本格導入について

2016年3月25日 金曜日

2020年度から小学校で導入予定の英語教育について、文部科学省の中央教育審議会の作業部会は授業時間を確保する報告案を大筋で了承しました。

新指導要領では小学校3年・4年では外国語活動を週1コマ相当、5年・6年では英語を週2コマ相当行う事が決定しています。しかし「脱ゆとり」として授業時間数が多くなっている上にさらに5年・6年では年間70コマの授業が増える計算になります。

しかしすでに6時間目まで授業が入っている5年・6年でさらに授業を追加すると7時間授業が定常的に行われることとなり、生徒の学習効率の低下や課外活動や校外での習い事や学習塾通いが困難になるなどの問題点が指摘されていました。

そこで、どのような形でこの授業時間を確保するのかが議論されていたのですが、時間割を柔軟に編成できるというアイディアが示されました。

それによりますと、標準の45分授業を15分授業に3分割して授業前の「朝の会」の時間を使う方法や、逆に60分授業に組み替えて、夏休みに行うなどの方法やそれらをミックスする方法などを提案しています。

すでに夏休みについても8月末までではなく、1週間程度早く終わってしまう地域が多いのですが、学校によってはさらに短くなる可能性があります。

夏休みには山や海で真っ黒になるまで遊んで、全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)が終わってから夏休みの宿題に取り掛かる、といったのんきな夏の過ごし方は昔話になるのでしょうか。

小学校6年の例

(現行の週28コマ)

7限目を使う案

0限目を使う案

土曜日を活用する案

夏休みなど長期休暇を活用する案

小学生段階で英語に強くなりたいなら! 

 

大阪私立学校展 今年も開成教育グループが講演をしました!

2015年8月21日 金曜日

こちらのエントリー「大阪私立学校展 2015/8/15土・16日に開催」でご紹介を致しました、去る8月15日(土)・16日(日)に開催された大阪私立学校展において、昨年に引き続き今年も開成教育グループ 入試情報室が講演を担当させて頂きました。

その時の様子をご紹介致します。

大阪私立学校展は2日間の開催でしたが、その2日間ともで講演を担当致しました。

内容については2日間とも同じもので、「近年の私立高校入試の動向」「新しい公立高校入試制度の整理と注意点」といったものに加え、「学校の選び方、説明会の聞き方・回り方」といった点について各1時間のお話、とさせていただきました。

上の2枚の写真はいずれも15日(土)の回の時のもので、立ち見の方が多くおられました。立ち見で大変御辛い思いをされました方、大変申し訳ございませんでした。

2日間の講演のうち、特に上の写真の回である15日(土)の講演終了後には大変多くの保護者様にお並び頂き、個別のご相談を賜りました。

ご来場頂きました皆さんには厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。今回お話させて頂きました内容が、学校選びに際しご参考になるものであれば大変嬉しいです。

開成教育グループ 入試情報室では、今回のような講演会であったり個別相談コーナーであったりと形態は様々ですが、今後も各学校様・業者様の説明会等に出向き、社会貢献を果たしたいと考えています。

当ブログの読者の皆さまと、いつかどこかでお会いできることを楽しみにしています。

 

関連記事:
大阪私立学校展 2015/8/15土・16日に開催
(昨年度の様子)大阪私立学校展 開成教育グループが講演をしました!

 

 

ご挨拶

2015年4月1日 水曜日

春は出会いと別れの季節。

これまで慣れ親しんだ学び舎や友たちと離れ、今まさに新たな環境で一歩を踏み出そうとしている皆さんは、全国にたくさんおられることと思います。

そんな方々を元気づけ、見送ってきた(と勝手に思っている)当ブログ筆者の私にとっても、ありふれたフレーズですら今年は少しだけいつもと違う響きで聞こえてきます。

日頃このブログ「学校選びの道しるべ」をご愛顧下さっている皆さまに向けて、ご挨拶せねばならないことがあります。

 

この4月1日をもちまして、当グループ内の組織変更によって「入試対策課」という名称を「入試情報室」へ改める運びとなりました。

それに伴い、当ブログの名称も一部変更になります。

 

長い間使っていた名前が変わる、ということで、ひょっとすると読者の皆さまにご迷惑や不都合なことが起こるかもしれませんが、その節はどうぞご容赦下さいますようお願い致します。

どうぞこれからもご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

(意味ありげなタイトルと、たいそうな出だしで始まりましたが、大して意味がないエントリーで申し訳ありませんでした。一度こういう書き方をしてみたかっただけです。)

 

 

文部科学省 253大学に改善を求める

2015年3月18日 水曜日

過日、こちらのエントリー「私立大 「定員超過厳格化」が受験生にもたらす影響」では、都市圏にある大学だけに学生が集中することを防ぐため、文部科学省は今後「定員超過」に対してより厳格に対応していく方針である、ということをお知らせしました。

私立大は国から補助金の交付を受けており、定員(入学定員:1年次の入学定員/収容定員:4年または6年課程全体の定員)の充足率に応じて基準額が調整され、定員超過率が一定以上(つまり「入学生の取り過ぎ」)になっている場合は、補助金が「減額」または「不交付」になります。

このように「入学生を取り過ぎ」ると大学は怒られますが、反対に「定員割れ」も一定の割合を超えてしまうと補助金の減額・不交付の対象となるようです。

補助金にも影響を及ぼすため、著しい定員割れを起こすことが無いよう各大学は知恵を出し、様々な入試制度を創設するなど、あの手この手で学生を確保すべくご努力されています。中には、大学生として相応しいと思われる学力に到達していない受験生もお預かりになっている、そんな大学もあるようです。

そんな状況の中、この程文部科学省は講義内容や運営方法などに不備があるとして、改善を求める大学253校を公表しました。

定員割れを防ぐために各大学が講じている策、無理して入学させたがために学内で歪みを起こしている例、そんな数々をご紹介します。まずは、過日に日本経済新聞が報じたものです。


253校に改善要求 文科省、新設大学など調査
(2015年2月19日(木)日本経済新聞 より)

文部科学省は(2015年2月 筆者補足)19日、新設された大学や学部などが申請通りに運営されているかどうかを調べる2014年度の「設置計画履行状況調査」の結果を発表した。今回調査した502校のうち、253校に対し改善を要求。教員数が基準を下回っていたり、低いレベルの授業で単位を認定したりしていた31校には、早急に見直しを求める「是正意見」を出した。

調査は卒業生をまだ出していない新設の大学や学部、大学院などを対象に05年度から実施。従来は「留意事項」という表現で改善すべき点を指摘していたが、今回から「改善意見」として対応を求め、さらに法令違反など重大な問題があれば「是正意見」を出すことにした。

是正意見に応じない場合は、設置者からの新たな認可や届け出を認めないなどのペナルティーを科す。

是正意見では、教員の質や数に対する指摘が目立った。07年度に開学した岐阜保健短大(岐阜市)は看護学科で教員の退職が相次ぎ、13年度末時点で約5割が入れ替わっていたため、教育の質を担保するよう求めた。純真学園大(福岡市)は大学設置基準上で必要な教授数を満たしていなかった。

教育課程への是正意見も多く、千葉科学大(千葉県銚子市)は環境危機管理学科の「英語1」などが、「大学教育水準とは見受けられない」と指摘された。大学がホームページで公開しているシラバスによると、英語1は「英語論文を理解するためにトレーニングを行う」として、be動詞や一般動詞の過去形などを学習内容に挙げている。

北翔大(北海道江別市)が是正を要求されたのは大学院の学生の募集要項。「可能な限り受け入れる」などの表現について「適切な入学者選抜が行われていない印象を与える可能性がある」と指摘があった。法政大(東京・千代田)に対しては、大学院で定員の超過が続いているとして是正意見を出した。

大学の組織や教育内容を点検する仕組みとしては、今回の調査のほか、すべての大学を対象に、独立行政法人や公益財団法人などの評価機関が7年に1度チェックする制度が04年度から導入されている。文科省は今回の調査結果を参考として各評価機関に提供する予定。


文部科学省は調査結果を事細かにまとめられ、今回の報道の基となる「設置計画履行状況等調査の結果等について」という文書を公表しています。

筆者もその文書を読みました。

今回、改善を求められている大学の多くが「学生が集まっていない(定員を充足していない、0.7倍未満)」「教員にお年を召した方が多い」という指摘なのですが、中には少し驚くようなことも含まれています。

近畿地区の私立大に関してのみ、今回日本経済新聞が報じられた例以外で一部をご紹介しますと・・・
(設置計画履行状況等調査の結果(文部科学省)より抜粋)

・教員免許の取得のためには他学科の授業科目を履修する必要があるにもかかわらず、大学案内等には本学科の授業科目のみで教員免許の取得が可能であると受け取られかねない表現が記載されている(東大阪大 こども学部 アジアこども学科)

・アグリーメント入試について、学生と大学が同意に達したら入学を許可するものとの説明であるが、同意以外の大学側の合否の判断基準が明示されておらず、どのように合否を決定しているのか不明(太成学院大)

・留年生が多数生じており、また、在籍学生の学年ごとの評定平均が下の学年ほど低くなっていることについて、教員が面談を行ったり補習、補講を実施して対応しているとのことである。その一方で、学生確保のためにAO入試の募集定員を増やしていることや、設置計画における進級要件では進級できない学生が多く出てしまうため設置時より進級要件を緩和し、「仮進級」という制度を新たに設けている学科があることを踏まえると、アドミッションポリシーに沿った入学者選抜が実施されておらず、教育研究の質が担保されているのか疑義がある(宝塚医療大)

18歳人口の減少に対し、大学の数や定員数は減るどころか増えていく一方の大学入試の世界。学生を確保しようとするあまり、無理が生じてしまっている大学が少なからず現れているようです。

 

関連記事:
私立大 「定員超過厳格化」が受験生にもたらす影響

 

私立大 「定員超過厳格化」が受験生にもたらす影響

2015年3月11日 水曜日

都市部の大学にばかり学生が集まることで地方の大学が厳しい生徒募集状況になっていることを受け、文部科学省が私立大の「定員超過」に関して今後は厳格に対応していく方向で動く、という報道がなされました。

以下、毎日新聞が報じた内容をご紹介します。


3大都市圏:私大の学生数抑制へ 文科省、定員超過厳格化
(2015年2月22日毎日新聞)

文部科学省は、首都圏など大都市部にある私立大学の学生数を抑制する方針を決めた。入学定員を超えた入学者の割合(定員超過率)を厳しくする。現在、定員8,000人以上の大規模大学の場合、定員の120%以上なら私学助成金を交付しないが、これを110~107%まで減らす方針だ。大都市への学生集中を抑制し、地方からの学生流出に歯止めをかける「地方創生」の一環。定員8,000人未満の私立大も、現行の130%から120%へ引き下げる。私立大は授業料収入減につながりかねず、反発も予想される。

対象となるのは、首都圏(東京都、埼玉、千葉、神奈川)▽関西圏(京都、大阪、兵庫)▽中部圏(愛知県)の私立大。2014年度の私大入学者は、首都圏20万4287人▽関西圏7万6677人▽中部圏2万9206人。この3大都市圏で計約31万人に上り、全私立大の入学者の65%、国公私立合わせた入学者のおよそ半数を占める。

このうち入学定員を超過した人数は、3大都市圏で計約3万3000人。規模別では定員1,000人以上の大学に集中している。私立大側は財政を安定させるためにもできるだけ学生を受け入れたいのが本音で「定員超過している大学は基準ぎりぎりまで学生を取っている」(大学関係者)のが現状という。

日本私立学校振興・共済事業団によると、定員の110%以上の学生がいる大学は全国で約170校あるという。文科省の調べでは、3大都市圏で定員の110%以上の学生数は約2万6000人で、新基準が適用されると、現在の超過人数の多くが不交付対象になるとみられる。

文科省の方針について、関西圏の大規模私大の担当者は「財政を直撃するだけに深刻だ」と話す。大学財政の根幹は学費収入だ。

一方、東北地方の私立大幹部は「定員割れしている地方大には一定の効果はある。学生は増えるのではないか」と見る。四国の私立大関係者も「ありがたい話」と歓迎。ただ「それで受験生が地方大を向くかというと、そう単純な話でもないと思う」とも指摘する。

政府の地方創生総合戦略は今後、大都市圏への集中を解消し、地方の学生が自分の住む県の大学に進学する割合を2020年までに36%(13年度は33%)に引き上げる目標を掲げる。国立大の定員超過率も現行の110%から引き下げを検討する。


私立大は国から補助金の交付を受けており、定員(入学定員:1年次の入学定員/収容定員:4年または6年課程全体の定員)の充足率に応じて基準額が調整され、定員超過率が一定以上(つまり「入学生の取り過ぎ」)になっている場合は、補助金が「減額」または「不交付」になります。

入学定員を超えた入学者の割合(定員超過率)が現状からどのように下げられる予定なのか、以下にまとめてみました。

定員8,000人以上の大学:定員の120% ⇒ 同110~107%
定員8,000人未満の大学:定員の130% ⇒ 同120%

上記が適用されることによって「厳格化」されるとなると、2014年度での統計を基に考えると「3大都市圏で定員の110%以上にあたる約2万6000人」といった数が基準をオーバーしていることになります。

私立大の収入に関して、こんな統計があります。

学生生徒等納付金 3兆2,334億円(約77%)
補助金 3,622億円(約11%)
※私立大の2009年度帰属収入(速報値)

おおざっぱに言うと、私立大の収入の8割は学生からの納付金が占めていますものの、約1割が私学助成金による補助が占めている、ということになります。

少し超過しても、一定の範囲内で定員を守っているのであれば私学助成金が交付されますから、大学としては是が非でも定員を守って補助金の減額・不交付は避けたいところです。

都市部にある大学での定員超過が著しいことが引き起こしたこの基準の強化なので、都市部にある難関~上位の私立大において「私学助成金の減額・不交付」を避けるために「合格者数を絞り込む」こと、一言で言うと「難化」が予想されます。

なお、この補助金の減額・不交付ですが、今回ご紹介した「極端な定員超過」だけでなく、定員割れが著しい場合でも同様の措置が講じられます。後日のエントリーでは、定員割れを防ぐために各大学が講じている策、無理して入学させたがために学内で歪みを起こしている例、といったものをご紹介します。

 

 

伸びる生徒の保護者に見られる「共通点」とは?

2015年1月22日 木曜日

中学・高校・大学入試が真っ只中となっているこの頃。当ブログでも目の前にある各入試に関する情報をご提供する記事が多くなる時期となっています。

そんな中、今回は少し視点を変えて、これから次年度以降に入試をお迎えになるお子さんを持つ保護者の皆さんに向けた、大変興味深いデータをご紹介致します。

サンデー毎日臨時増刊「志望校を決める」2015年度入試版に掲載されていた、「伸びる生徒の保護者に見られる共通点」について首都圏の学習塾で塾長あるいは教室長をされている方々にアンケート調査をしたものです。

集計結果のうち、占有率が高いものから10個を拾い上げ、グラフ化しました(画像をクリックすると拡大します)。

「子どものことをよく見ていて、適性や能力を把握している」がトップとなっています。これに似た「自分の子どもを客観視できる」という項目も8番目にあります。まずは、なにはなくとも「子どものことをよく知る」ということが大切なのだと思います。

子どものことをよく知るためには、やはり子どもとの対話が最も有効です。「子どもとのコミュニケーションがよくとれている」が2位にランクインしていることが、それを端的に示しているように思います。

また、子どもから直接見聞きすること以外で子どもに関する情報を得る機会を持つことが、客観的な判断をする助けになることでしょう。その意味では、3位にある「塾(教師)を信頼し、聞く耳を持っている」にあるような、(塾に限らず)他者の意見にも耳を傾けるという行為が重要になってくると思います。

子どもとのコミュニケーション、塾や学校の先生などからの子どもに関する情報、といったものを得ましたら、次は保護者ご自身が適切な判断をしなければなりません。そのためには、「知識」「情報」が重要になってくると思います。

今回ご紹介している10個の項目のうち、7番目の「常識がある」という項目がこれにあたります。「常識」といっても広い意味にも、反対に狭い意味にも捉えられますが、当ブログの筆者は「入試制度」「学校の選び方」といったベーシックなものに加え、「昨今の教育関連の話題や問題点」「これから先に想定される社会の姿」「日本や世界で必要とされる人材像」といった所までを含んだものを「受験生の保護者として知っておくべきこと」ではないか、と考えます。

お子さんの適性や能力を把握していても、それが先々世の中や他者の役に立たなければ「宝の持ち腐れ」となってしまいます。せっかく持っている能力を活かすことが出来る進路を選んでほしいので、保護者の皆さんにはその案内人になってほしいと思います。

まだまだ若い受験生自身では集められない、判断出来ないことを率先して知るようにしていただき、判断の手助けをしてあげてください。