大阪府公立高校入試、グローバル系学科の志願動向(2)

2021年9月9日

学校ごとの状況がこちらです。複数の学科を持っている学校は、第1志望者だけでカウントしています。2021年度入試では14校中8校が定員割れを起こしており、普通科を志願していた受験生が第2志望のグローバル系学科に回されるという事態も珍しくなくなりました。

箕面高校のみ2倍を超えていますが、それでも4.68倍でピークだった2018年度に比べると大きく低下しています。どうしてこのように低下しているのでしょうか。

(英語学習の低年齢)

まず、一つに英語力取得の低年齢化が挙げられます。小学校でも英語が教科化されましたが、英検等民間検定の低年齢化は進行しており、高校に入ってから英語力を取得する、というニーズの低下が考えられます。実は2017年度から大阪府では英検等外部資格の取得者は、例えば英検2級なら80%、英検準1級なら100%の得点が保証されるみなし得点方式が導入されており、高校受験の段階で英検2級以上を取得している受験生が年々急増しています。(2017年度344名→2021年度2290名)2021年度入試では北野高校出願者の、なんと約8割が2級以上取得者です。もちろん英検などの民間検定だけが英語学習ではありませんが、彼らにとって英語との戦いは既に高校受験の前に終了しているわけです。それに伴い高校で英語を特化して学びたいという中学生は減少しているのではないでしょうか。

(私学との関連)

次に、考えられるのが私立高校との競争です。グローバル系の学科といっても、公立高校ですので経済的に大きな負担となる長期間の海外研修や少人数授業の実施には限界があります。その点、私立高校の中には1年前後の長期留学や、海外の高校と提携して両方の卒業資格を得られる、中には海外の有名大学への進学に有利になる国際バカロレアのディプロマ取得ができるなど、大きく異なるカリキュラムを備えているところもあります。また、大学進学準備を考えたとき、高校の3年間ではなく、中学からの6年間の中に海外研修を配置しているカリキュラムは安心感が違います。つまり、皮肉なことに英語力やグローバル感覚への関心の高まりと、それに応える私学の学習環境の向上が、相対的に公立高校のグローバル系の学科の競争率低下につながっているとも考えられます。(続く)