金曜日の答え

2017年2月20日 月曜日

では、金曜日の問題の答えです。

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1 「うつ」

a 「打つ」、つまり打ち水をすることですね。単に水を撒くだけでなく、その場を清めるといった宗教的なイメージになります。
b 印をつけることも「打つ」といいます。鏨(たがね)を槌(つち)で叩いて石に印をつけるイメージから、文章に読点を付けるときも「打つ」といいます。
c 本来は芝居の準備をする、つまり舞台を打って作ることを「打つ」といったようですが、「ひと芝居打つ」=(人をだますための演技をする)といったよくない使われ方もします。
d 周りにおもりの付いた投網(とあみ)を投げ入れる動きが水面に網を打ち込むように見えることから「打つ」といいます。川や浅瀬で行われる漁法ですので、その様子を一般の人が目にする機会も多かったのでしょう。

2 「かかる」

a 「掛かる」とは支えられる状態を示します。つまりお医者さんに支えられるというイメージの言葉ですね。
b 芝居を興行することを「芝居がかかる」といいます。感情表現などが大げさであたかも演技しているとして「芝居がかった口調で・・・」という使い方を思い出していただくとわかりやすいと思います。映画が大衆化されたのは20世紀ですが、芝居と同じイメージで「掛かる」を使ったのでしょう。
c 動物を捕まえるためのわなにはいろいろな種類があります。落とし穴にクマやイノシシが落ちても、「掛かる」というイメージがつかめないのですが、スズメなどの小鳥を捕まえるための「カスミ網」というわな(今日では特別の許可を得た人でなければ使うことはできません。)に足が網に絡まった小鳥がさかさまにぶら下がっている様子を「掛かる」と表現したものです。そもそも落とし穴のような大規模なわなを日常的に作る事はなかったようです。
d お金が掛かる、時間が掛かるという使い方も aの支えられるイメージからきた言葉でしょう

3 「つる」

a 専門的な言葉で「有痛性筋痙攣(ゆうつうせいきんけいれん)」と呼ぶそうですが、この痙も攣も「つ(る)」と訓読みします。何かで吊り上げられたかのような不随意性から「つる」という和語があてはめられたのでしょう。
b 「人につられる」という場合は、「連られる」と慣習的に書かれますが、「釣られる」の方が正しいようです。つまり、影響を受けて引っ張られるイメージです。
c これはまさに「釣り上げる」という使い方です。魚釣りは一般的ですが、土に穴を掘って暮らしている虫を、草の茎などを差し込んで釣り上げるという伝統的な遊びもあります。同じ方法で釣れる貝類もあります。
d これは「吊る」ですね。この「吊」という漢字はもともと「弔」の俗字で棒に蔓状のものが巻き付いて下にたれている状態を表す象形文字だそうですが、いまでは「吊」をとむらうという意味では使いません。
4 「とおる」

a 「その理屈は通らないな」と否定表現でしばし使われる言葉です。
b 議会などで案が可決されることを「通る」といいます。これも正当性が認められるというイメージからの言葉です。
c まんべんなくゆきわたるという意味でつかわれますが、肉の塊など大きな食材の中心部まで加熱されている状態が外からの熱が到達したというイメージから「通る」と使ったのでしょう。
d これも伝達したという結果よりも、その途中をイメージした使い方です。声の質を「よくとおる声」と表現したりします。

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どれだけの知識を持っているかというより、どのように思い出すのかという能力が試される良い問題だと思います。国語の学習では読解力、表現力に力点が置かれがちですが、正確な言葉の知識を的確に取り出す能力も大切だと教えてくれるような問題でした。