「文部科学省は8日、学士課程と修士課程を5年一貫で修了できる大学を増やすため、制度を改める方針を示した。2025年度内に省令を改正し、26年度からの導入を目指す。特に学部卒業で社会に出ることが多い文系学生の大学院進学を促し、高度人材を増やす狙いだ。」(日本経済新聞Web版 10月8日12:14配信)
文部省(当時)は1991年に大学院重点化方針を打ち出し、大学院設置の自由度を高めました。これにより大学院が急増していくのですが、1996年の予算措置によってさらに大学院の定員が増加していきます。文部省と科学技術庁が統合し、文部科学省となった2001年頃から国際競争力強化を目的に博士課程中心の大学院教育改革を進めますが、残念ながら大学院への進学率は伸び悩んでいます。
特に文系分野では学部卒と修士卒の初任給の差が小さく、むしろ大学院卒の方が年齢を理由に就職には不利になるケースがあるということや、進行している少子化によって大学などの高等教育機関、研究機関が縮小していく中で、研究者としてのポストも限られるということが伸び悩みの理由として考えられます。
こういう中で、今回の文科省の方針は、大学院の学費の節約+年齢ハンディの回避、という点では評価できますが、出口としての研究者としてのポストが増えない限りは、大学院進学希望が増えるのは考えにくいと思います。MBAを取得して金融系企業でのコンサルティング業務、法科大学院を出て企業の法務関連業務といった、具体的な道筋が見えている分野もありますが、早く大学を卒業して就職し、具体的な業務を覚えたいという学生の方が多いような気がします・・・。