都立高の取り組みに見る大阪府「進学指導特色校」未来予想

2010年8月10日 火曜日

7月に入って以来、「東京都立高が復権に向けて取り組んでいる」という内容の新聞記事を頻繁に目にしています。

東京都と言えば、私立高校通学率が58.9%と全都道府県中唯一公立高校よりも私立高校に通う生徒の方が多いという、私立人気が高い地域となっています。

それゆえに、危機感を抱いた都教委が日比谷高など4校を東大などの最難関大を目指す「進学指導重点校」に指定したのが2001年の出来事です。その後2003年に3校増やし、2007年には新宿高など5校を「進学指導特別推進校」を2番手グループとして追加指定するなど、活発な動きを見せています。

東京都は進学指導重点校7校の成果指標を東大・東京工大・一橋大・京都大といった国立最難関4大学と国公立医学部への現役合格者数としていますが、日比谷高が今春躍進したものの、その他の高校では残念ながら目立った成果が出ていないのが現状です。

こういった進学に特化した高校は「進学指導に実績がある教員の(公募制による)優先配置」「教員の加重配分」「教員に対する進学指導研修の実施」などの優遇措置を受けているのですが、それにもかかわらず実績が出ない学校は重点校から外して、代わりに他の学校を入れるという「入れ替え制」とすることでより一層の活性化を図ることが発表されました。以下2010年7月8日の朝日新聞から一部引用です。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「難関大現役合格15人」都立の進学重点校選定に新基準

「東大など難関大学の現役合格15人以上」。東京都教育委員会は、現在7校を指定している都立高校の「進学指導重点校」の選定に当たって、2013年度からこんな基準を導入することを決めた。重点校に選ばれると教員配置の優遇措置があるが、伝統校といえども実績次第で指定を外すことを打ち出して、一層の「努力」を促すという。私立に対抗し、様々な進学指導策を打ち出す都教委の「強化路線」の一つだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

基準についてもう少し詳しくご紹介しますと、

・難関国公立大(4大学とその他の医学部)の現役合格15人以上
・3年生の6割が5教科7科目で大学入試センター試験を受験、1割以上の受験者が8割程度以上の得点

の2点となっており、両方を満たすことが原則のようですが、進学指導の力の入れ方なども勘案して決められるようです。

では、これら進学に特化した都立高では現在どういった取り組みが行われているのでしょうか。

2010年7月17日の毎日新聞によりますと、都立高の教師が受験のプロでもある予備校講師に授業を見てもらい、アドバイスを仰ぐ事業が始まっているようです。以下のように報じられています(以下引用)。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

進学実績上げたい・・・予備校講師に学べ復権目指す東京都立高

都教委は今年度、ベネッセと河合塾、駿台予備学校、代々木ゼミナールの大手4社と契約し、新宿高校など10校の授業内容を「診断」してもらう「都立高校学力向上開拓推進事業」を始めた。予備校側は国数英など4教科の授業を年間4回ずつ診断。これとは別に校長らを対象に進学実績を上げるためのアドバイスもする。予備校による派遣授業は珍しくないが、教諭の授業方法や学校経営に対する指導まで仰ぐのは異例だ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

各校は夏休みの補習や実力テスト等を実施するなどしてきたようで、今年から始まった予備校による「診断」もこうした流れの延長にある、とも報じられています。

さて、大阪府では「進学指導特色校」として10校が指定されています。先般、大阪府のHPに進学指導特色校10校のカリキュラムが公開されるなど、少しずつではありますが情報が明らかになってきてはいるものの、大阪府の進学指導特色校についてはまだまだ未知の部分がたくさんあります。

しかし、これら10校についても入れ替えの話が出ているのはご存知でしょうか。2010年2月2日付毎日新聞に小さく載った記事に「進学特色高 知事『入れ替えを』 3年に1度 府教委に指示」というものがありました。

まだ詳しいことはわかりませんが、一説によると「早速3年後に授業評価などが行われた上で特色校の見直しが行われ、11位・12位の学校と入れ替える」という話があります。評価基準は秋口に発表される予定である、ということも耳に入ってきています。

また、予備校が公立高に入り込んで指導のお手伝いをする、ということについても、大阪府下公立高でもすでに「放課後の補習」などで予備校の先生が教えているという所が一部あるようです。進学指導特色校でもそういった動きが出てくるのではないでしょうか。

まだ走り出してもいない大阪府立高 進学指導特色校の取り組みですが、恐らくは先に歩みを進めている東京都立高の取り組みと似通った部分が多く出てくると思います。その意味では、今回ご紹介した東京都立高に関する新聞記事2つについてはよく記憶にとどめておくべきでしょう。