意外と違う 進路についての高校生と保護者の認識②

2011年3月31日 木曜日

高校生を持つ全国の保護者とその子どもを対象としたコミュニケーションの実態とさまざまな進路観に関するアンケート結果に見られる、「高校生と保護者の間での認識の食い違い」について検証しています。

前回のエントリー「意外と違う 進路についての高校生と保護者の認識①」では「高校生の諸君は進路決定についてなんだかんだ言っても父・母を最も参考にしている」というデータを紹介し、保護者の役割・影響力は大きなものになっていることを示しました。

今回のエントリーでは進路選択の段階で高校生と保護者の間で決定的な意識の差が出ている項目4つを取り上げて、高校生・保護者お互いがどう思っているのかを知ってもらい、両者が歩み寄るきっかけとして欲しいと思います。

次のグラフは高校生の「希望進路」と「進路選択における悩みや不安」についてどれぐらいの保護者が知っているか、親子それぞれの認識を聞いたものです。驚くほど認識のズレが見られます(画像をクリックすると拡大します)。

高校生と保護者の認識のズレ①
まず、「希望進路」について見てみましょう。

高校生の回答を見ると、保護者が自分の希望進路を「よく知っている」という回答は35.6%で、「少し知っている」を合わせると83.3%となり、おおむね親子で共有できていると高校生たちは考えているようですが、一方で保護者自身の認識では子どもの希望進路を「よく知っている」「少し知っている」の合 計で89.4%となり、約6%の差が出ています。

高校生が認識している以上に保護者は知っている「つもり」であることがわかります。ここでまず少し注意が必要ですね。

次に、高校生がもつ進路選択の悩みや不安についての保護者との共有状況を見てみましょう。高校生の回答は「よく知っている」「少し知っている」が 51.8%、保護者の回答は68.4%とどちらも半数を超えてはいますが、差が何と16.6%、先ほど以上に意識に差が出てしまっています。こちらも保護者は知っている「つもり」になっていることがわかります。

保護者の皆さんは高校生のお子さんに「悩みは全部分かっているぞ(のよ)」と軽率には言わない・思わない方が良さそうです・・・。

次に、そもそも高校生とその保護者の間で会話が生じているのか?についてのデータと、その会話の中で保護者がよく口にするフレーズについての調査結果を以下にまとめました(画像をクリックすると拡大します)。

高校生と保護者の認識は意外とズレている②

高校生の回答は「よく話をする」が14.7%で、「たまに話をする」を合わせると75.2%になります。今回は未掲載ですが、男女別のデータを見ますと、女子のほうが「話をする」が多くなっています。

一方、保護者の回答は「よく話をする」が24.4%、「たまに話をする」を含めると89.1%で、どちらも高校生の回答より多くなっています。

ここでも保護者の認識が高校生のそれよりも上回っていることがわかります。「私は自分の子どもとちゃんと話が出来ている」と思っていても、実際には高校生諸君はそう思っていない可能性が高い、ということになります。

最後のグラフでは、進路の話をする時に保護者はどんな言葉をよく使うのかについて高校生と保護者に当てはまる言葉を選択肢からすべて選んでもらったものです。

高校生・保護者ともに回答の最多は「自分の好きなことをしなさい」となっています。この点については認識が一致しているので問題はなさそうです。

高校生は2位に「勉強しなさい」を挙げています。アンケート結果によると、この一言は「やる気が失せる」などマイナス反応ばかり出ているようですから、要注意の一言です。

しかも、この項目のポイント数の差が約14%と、高校生と保護者との間で大きく差が開いている点がこの問題をさらにやっかいなものにしています。保護者は強く言ったつもりではなくても、一言この言葉を聞くだけで高校生は相当苛立つのでしょう。それが上のポイントの差に表れているのだと思います。

保護者が挙げた2位の回答は「自分でよく考えなさい」となっていますが、保護者は子どもを信頼して言ったつもりのこの言葉でも場合によっては「何も考えてくれていない」と捉えられがちの一言ではあります。使いどころが難しい一言だと思います。

一通りアンケート結果を見てきましたが、意外に(予想通り?)高校生と保護者の間で認識が異なっているところがあったことをお分かり頂けたと思います。

特に、保護者の皆さんにとって必要とされるのは「的確なアドバイス」だけでなく「自分の悩みを知ってくれているか?」「希望の進路を把握してくれているか?」という、進路選択以前のベーシックな部分であることをご理解いただきたいと思います。

保護者の皆さんにお願いです。高校生たちから最も信頼されているが故に不用意な一言や無関心な態度をとることは避けていただき、出来るだけ進路選択の一助となるようなアドバイスや振る舞いをしていただければありがたいです。

意外と違う 進路についての高校生と保護者の認識①

2011年3月30日 水曜日

社団法人全国高等学校PTA連合会とリクルートは共同で進路に関する保護者と子どものコミュニケーションのあり方や、大人ができる高校生のよりよい進路選択へのサポートを探るために、全国の高校生をもつ保護者とその子どもに対してコミュニケーションの実態や進路観に関して調査をされています。

最新の調査結果がこの度公開されましたので早速見てみましたところ、進路に関する様々なデータの中に「高校生と保護者の間で認識の食い違いがあるぞ」と思われるところがいくつか見られました。

今回を含めた2回のエントリーで、高校生と保護者がお互いに考えていることを知ってもらうことで家庭内での円滑な進路決定に結び付くことを願って、進路選択の際に両者の衝突を招いているものと推測出来る大きな認識の違いについてご紹介したいと思います。

まずは、高校生の諸君が進路決定について誰(何)から影響を受けているのか、についてのアンケート結果(上位10個)をご紹介します。

高校生は何から影響を受けている?

「母親」が最多で、それに「父親」「友人」が続く形となっています。リクルートのページでは男女別の集計結果も掲載されていますが、男子は「父親」が「母親」と同率でトップとなっています。

母親・父親から影響を受ける、ということの理由としては「一番相談しているから」「働いている姿を見て尊敬した」など、態度や行動が影響しているようです。一方で、「父親に半強制で進路を決められる」という回答があるなど、父親が絶対的な力でもって息子・娘を従わせている、というケースもあるようです。高校生本人の意思を尊重した進路決定を心がけて欲しいところです。

さて、この結果を見て「なんだかんだ言ってもやっぱり父・母の影響は大きいんじゃないか」と喜ばれるのは早計です。頼りにされているからこそ、高校生たちの期待に応えることができるような的確なアドバイスをしてあげねばなりません。せっかく頼ってきたのに場違いな回答をしたり、ましてや「自分のことを全くわかってくれていない」ことが露見されるような回答をしたり、一番言われたくないことを口走ってしまったりすると、親子間に取り返しのつかない亀裂が生じかねません。

次回のエントリーでは、進路選択の段階で高校生と保護者の間で決定的な意識の差が出ている項目4つを取り上げ、核心に迫りたいと思います。

立命館大附属3中高 合同入試分析会&相談会 開催

2011年3月29日 火曜日

2010年春には関西大学中等部・高等部(高槻)と関西大学北陽中が開校し、関西大学の附属校が3校になりました。この件に代表されるように、関関同立の附属校や連携したコースがここ数年で急激に増えています。

大阪では関西大学附属3校が位置しており、今年の中学入試でも大変高い人気を博しましたが、京都では同志社大と立命館大それぞれの附属校複数が大変熾烈な争いをしています。

こちらのエントリー「大学附属校合同説明会 続々開催!」でもご紹介しましたが、昨年は(関西学院を除く)関関同立それぞれの附属校が大学の名の下に1つになって説明会を行う、というスタイルを確立した年でした。附属校それぞれが単体で学校の魅力をアピールしあうよりも、同志社系列なら同志社大を、立命館系列なら立命館大を、というようにそれぞれの大学の魅力や教育理念を前面に押し出して受験者獲得を狙う、という形です。

昨年は夏ごろの実施が目立ったこの「大学附属校の合同イベント」、2011年度入試が終わってすぐではありますが、立命館大の附属校3校が合同で入試分析会と入試相談会を実施することがわかりました。以下、詳しくご紹介します(クリックすると拡大します)。

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立命館附属校 入試分析会&入試相談会

立命館附属校 入試分析会&入試相談会

日時:2011年4月16日(土)10~12時
場所:ホテルグランヴィア京都
内容:入試分析会(中学)、入試分析会(高校)、入試相談会
特典:過去の入試問題(抜粋)と解答(抜粋)がもらえる

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3校の附属校が一緒に入試の説明会を行うのは、今回が初めてだそうです。JR京都駅直結のホテルが会場となっていることもありますので、アクセス上も大変便利です。

立命館大の附属校が一度にわかるこのイベント、お見逃しなく。

京都女子大 春のオープンキャンパス 行ってきました

2011年3月28日 月曜日

3月20日(日)に行われた京都女子大のオープンキャンパスにお邪魔してきました。

京都女子大 オープンキャンパス案内板

上の案内板の左横にある紫色ののぼりですが、京都女子大へ上がる、京女生が必ず歩く道である「おんな坂」のいたる所にも設置されており、イベントを盛り上げていました。

京都東山の緑の中で広い範囲に広がる京都女子大のキャンパス、当日配られたマップでもその広さが伺えます(画像をクリックすると拡大します)。

京都女子大 キャンパスマップ

この広いキャンパス、たくさんある校舎の中から「J校舎」と呼ばれる校舎で各種催し物が行われました。

J校舎

上の写真がJ校舎です。

いろいろなイベントがありましたが、今回参加した「入試必勝講座」と「入試ガイダンス」の様子について少しずつご紹介します。

まずは、「入試必勝講座」の様子です。

入試必勝講座

お話のあちこちに笑いを入れられながら、京都女子大の魅力、入試や今後の対策のポイントについてご説明いただきました。中でも、会の冒頭にご紹介された「(数年前のデータだそうですが)お嫁さんにしたい大学 No.1」や「京都女子大は京大生がお嫁さんにする大学 No.1」ということが紹介されると、会場からはどよめきが起こっていました。

入試問題の特徴としては、他の同レベルの大学よりも入試問題が難し目に作られている点が挙げられます。実際に、今年度の公募推薦入試において法学部で出された問題を見てみましたが、国語の問題の出典が「社会関係の多様化と法学」ということでズバリ法律に関する出典が採用されているなど、受験時点で必要とされる力が高めとなっています。

続いて、「入試ガイダンス」の様子です。

入試ガイダンス

入試制度の解説だけでなく、大学の全般的な紹介もしていだだきました。

さて、現時点ではまだ決定ではないのですが、次年度に向けて入試科目に変更が入る予定があるようです。特に食物栄養を目指す方には大きな影響がある変更のようです。お見逃しなく。

神戸市灘区女子中高一貫校3校 合同説明会 当日の様子

2011年3月25日 金曜日

こちらのエントリー「神戸市灘区女子中3校 合同説明会 今年も開催」でご紹介しました神戸海星女子学院中・松蔭中・親和中 3校合同の説明会に参加してきました。

今年で実施3年目となるこのイベントですが、一昨年は大変人気を博したことを受け、昨年は2月中旬と3月下旬の2回開催にされたほどでした。今年はどのような様子だったのでしょうか?

会場の様子①

会場の様子②

当日は西宮プレラホールで実施されたこのイベント、ホールは約300席あるのですが、ご覧のように満席。上の方の写真では若干写っていますが、立ち見の方もおられました。

会場の外の様子

上の写真のように、ホールの外に設けられたモニターとスピーカーから流れてくる音声に耳を傾けている方々が5~60名ほどおられました。ホール中にいる立ち見の方々と合わせると、大体100名は席に座れていなかったと思われます。

このように、今年も多数の方がご来場になったイベントとなりました。

神戸海星女子学院・松蔭・親和の順に、それぞれの学校の先生方によって約30分ずつ学校紹介が行われました。

各校の取り組み内容とは別に、特に印象的だったのが松蔭中の先生によるお言葉でした。

出産・育児・親の介護に代表されるように、女性の人生は男性より変化に富んでいます。その分、人生の様々な局面において「選択」が迫られることになります。女性が「私はこう生きたい」と思っても、中々そう思った通りにならないのが現状です。

そんな中で、それぞれの選択の場面で最良の選択を選ぶことが出来るよう、精神的に自立することを目指して女子教育を行っている、とのことでした。

確かに女子だけの学校であれば、「女の子だから」というフレーズは通用せず、例えば皆を引っ張るリーダーも、力仕事をやるのも、何もかも女子がしなければなりません。

男子が居ない、一からすべて自分たちでやりとおさないといけない状況で6年間を過ごすと「自立した女性」としてこの厳しい世の中を生き抜く力や知恵を得ることが出来るのかもしれないな、と思った説明会でした。

上宮中高 共学化1年目の入試結果は?~高校編~

2011年3月24日 木曜日

前回のエントリー「上宮中高 共学化1年目の入試結果は?~中学校編~」の続きとなります。共学化を迎えて爆発的な人気となった上宮中高の入試結果をひも解いています。今回は高校入試結果を詳しく見ていきたいと思います。

早速、今年の入試結果をご覧いただきたいと思います(画像をクリックすると拡大します)。

上宮高 2011年度入試結果

中学入試結果では受験者・合格者の男女別人数が公開されていませんでしたが、高校入試に関しては男女の詳しい分布が判明しています。上の表では、今年の男女別受験者・合格者数はもちろんですが、男子校だった昨年との男子受験者・合格者数の比較、今年と昨年の総合格者数の比較が分かるようにしています。掲載する数字が多いため、資料が非常に細かくなっており見にくくなっている点、ご了解下さい。

受験者全体では2.27倍。「共学化」ですから、これまでの男子だけの募集から女子も応募が可能になりますので、単純に考えると女子が増える分だけ受験者数は増加します。しかし、その増え幅たるや想像以上のものとなりました。

受験者全体を専願・併願に分けて見てみますと、専願が2.68倍・併願は2.13倍という内訳になっています。特に専願での受験者が増えたことがわかります。

男子のみの受験者数を比較してみますと、専願1.81倍・併願1.28倍、合計で1.42倍となっています。こちらも専願で大きく増えていることがわかります。

上の表の下にもありますとおり、募集定員360名に対して専願で608名が合格しています。定員の1.7倍もの受験生が入学を確定させた事になります。現時点では公立高入試が全て終わっていませんので、併願での合格者の進学先が決まっていない状態です。仮に併願合格者のうち10%が入学することになると仮定しますと、1355名の10%ですから135名が先ほどの608名に加算されることになります。その結果、約750名が入学する、という結果になります。

・・・1学年の入学者数だけで1つの高校の1~3年生全員分ぐらいになります。恐ろしい数字です。

男女の比率を見てみますと、専願受験者では男子:女子は大体2:1となっているのに対し、併願受験者では女子が占める比率がもう少し高くなっています。最終的な合格者数は男子:女子は1221:742となり、男子62.2%・女子37.8%となり、2:1よりはやや女子の比率が高めになっていることがわかります。このまま併願の入学者を迎えても恐らくはこの2:1の割合が大きく崩れることはないと思います。

最終的な入学者数が確定していないものの、中学入試と比べて大幅に受験者・合格者、そして恐らくは入学者数も増加することになった高校入試となりました。

さて、この上宮中高の大成功を見て、本格的に共学化の検討に入っていると思われる学校がいくつかあるようです。今年の募集状況だけでなく、他校の学校運営方針にも大きな影響を与えることになるのでしょうか。そう考えると、上宮中高の共学化がもたらす影響についてはまだまだ出てきそうです。

上宮中高 共学化1年目の入試結果は?~中学校編~

2011年3月23日 水曜日

今年の大阪府私立中学・高校入試において最も衝撃的な話題だったのが「上宮中高 共学化」です。こちらのエントリー「上宮中高 2011年度より共学化」を皮切りに、当ブログでも幾度となく上宮中高の話題をご提供してまいりました。年間を通して当ブログの上宮中高 共学化関連記事は非常に多くの方に読まれておりましたし、学校内で実施される説明会やその他出版社や学習塾などで行われる合同説明会などでも「例年の3倍の来場(相談)者がいる」ということもあり、大変多くの受験生から注目を集めていることは明白でした。

私立中・高入試が終了した今、改めて上宮中高の入試結果がどのようなものであったのかを詳しく分析する必要があるでしょう。今回・次回のエントリーで中学・高校それぞれでどれほど受験者が増えたのか?や気になる男女比はどうなったのか?についてひも解きます。

まずは、今回のエントリーでは中学入試結果についてご紹介します。以下は2011年度の入試結果を、2010年度入試結果と両年の比較を掲載したものです(画像をクリックすると拡大します)。

上宮中 2011年度入試結果入試日程・コースごとの受験者・合格者数と、2010年度入試から2011年度入試ではどれほど増えたのか、を示した表となります。

残念ながら受験者・合格者数は男女合算で発表されていますので詳しいそれぞれの人数は不明ですが、男女別の手続き者数をお教えいただいていますので、それも合わせて掲載しています。

3回の入試トータルでみると昨年の約4割増の受験者数となりましたが、統一解禁日である15日(土)の受験者数は昨年対比で112.4%、つまり約1割増に留まっています。特進の受験者数が昨年を下回っているのが足を引っ張った形です。

その後、2次Aと2次Bでは昨年の1.7~1.8倍の受験者を集めました。このことと統一解禁日の受験者数が伸び悩んだことと合わせると、「第一志望として積極的に考えるのではなく、第一志望校の滑り止め先としてチョイスした」という受験生が多かったものと推測出来ます。

各日程での標準コースの受験状況について、表内で赤く示しています。これら3回の入試の標準コースでは受験者数の増え幅に対して合格者数の増え幅が少な目になっています。特に2次Aと2次Bが極端な例になっています。

このことから、2次Aと2次Bに関しては例年よりも入学に必要とされるレベルが高くなったのではないか、と予想出来ます。

さて、男子・女子がどのような比率で入学するのか?が非常に気になるところです。この記事を書いている3月頭時点では、先ほど挙げた表の通りの手続き者数となっています。

特進コースについては予定通り1クラス編成とされますので、男子25名・女子10名の合計35名学級となることが確定しました。良いバランス、と言って良いと思います。

標準コースは男子74名・女子25名が手続きを終了しています。こちらは3クラス編成の予定とされています。女子25名を3クラスで割るのであればざっくりと「8名×3クラス」となります。この「1クラス8名」というのが少ない、と思われる向きもあるにはありますが、現時点では「男子のみのクラスを作る予定はない」という事のようです。

次回のエントリーでは高校入試結果についてご紹介します。

大阪府立大 2012年度入試 募集人員が判明

2011年3月22日 火曜日

大阪府立大の説明会に参加してきました。

大阪府立大 説明会

当ブログでは過去にこちらのエントリー「大阪府立大 学部改組予定は2012年度へ延期」でご紹介したとおり、現在の7学部25学科を2012年春から4学域13学群に改組することが決まっています。

もう一度おさらいをしておきましょう。新しい4学域は次のような学類で構成されます。

現代システム科学域→ 知識情報システム学類・環境システム学類・マネジメント学類
工学域 → 電気電子系学類・物質化学系学類・機械系学類
生命環境科学域 → 獣医学類・応用生命科学類・緑地環境科学類・自然科学類
地域保健学域 → 看護学類・総合リハビリテーション学類・教育福祉学類

現在高校2年生の方々が受験を迎える年からの変更、ということとなりますが、それに先だって大々的な説明会を実施して、受験生だけでなく、高校や塾・予備校で進路指導をしている先生方にも新体制に関する情報を知ってもらうことが狙いのようです。

ちなみに、今回催されたような大学独自の説明会は初めての実施だそうです。今回は梅田と上本町の2か所で実施されたのですが、共に多くの先生・受験生が訪れたそうです。

さて、気になる点としては「学域それぞれの募集人員は?」「中期日程での入試が引き続き行われるのか?」といった所だと思いますが、それらについての情報もしっかりと入手して来ています。

2012年度からの新体制での募集体系は以下のようになっています(画像をクリックすると拡大します)。

大阪府立大 2012年度入試区分と募集人員

前期・中期・後期それぞれで入試を行う学域は・・・

前期 → 現代システム科学域、生命環境科学域、地域保健学域
中期 → 工学域
後期 → 現代システム科学域、生命環境科学域、地域保健学域

となっています。工学域では中期日程での入試が行われることが確定しています。一安心ですね。

学類が基本単位となる、大くくりな形での入試となり、学年が上がっていくにつれて専攻を絞りこんでいく、というのが特徴です。

ただし、資格系となる獣医・看護・総合リハビリテーションの各専攻については入試段階で早々と決定されることになります。

もう1つの特徴として、現代システム科学域の後期試験です。後期では学類に分ける入試ではなく、学域全体の募集となります。この後期で入学した生徒たちは、2年次に学類を選ぶ形となります。

ただ、残念なことに大学全体の募集人員が現在から約50名減少することも合わせて決定しています。また、今回の学域・学類への再編に伴い、言語文化学科が新しい学域の中に組み込まれていない(つまり、廃止となる)など、今まで大阪府立大で学べた内容が一部無くなっている点も残念ではあります。

2005年には大阪女子大と大阪府立看護大との合併という大きな転機を迎え、今回は学部・学科から学域・学類への改編となります。ここ数年で大きな変化が何度も起こっているなど、絶えず活性化が図られている大阪府立大。改編初年度の2012年度入試ではどのような人気となるのか、今から注目です。

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新中3生 高校生活・大学入試を見据えた高校選びを

2011年3月18日 金曜日

センター試験 難易度別に2種類に分割?理科8科目化?」の続きとなるエントリーです。センター試験は2015年から理科が8科目になることと、2016年から難易度別に2種類に分割されること、について新聞記事を引用しながらご紹介しました。

今回のエントリーでは、これら大学入試センター試験の大きな変更点が大学入試に与える影響についての予想と、それに対して2015・16年に大学入試センター試験を迎える方々が今から準備しておくべきことをご紹介しておきたいと思います。

2015・16年に大学入試センター試験を受験する学年と言いますと、現在の中2・中1の方々に当たります。特に今中2の皆さんは今年の4月には中3、つまりは「受験学年」となります。実は、次に中3になることになる1996(H8)年生まれの方は、「これまで」と「これから」の学習内容、それから前述の通りの大学入試センター試験での大きな変更、これらにとても大きな影響を受けることになる、とても「不運な学年」なのです。

次の表は現在の学習指導要領と新指導要領への移行期間を、生まれた年に対応させた表です(クリックすると拡大します)。まずはこれで、新しく中3生になる皆さんがこれまで学んできたことやこれから学ぶものがどういうものなのか?を検証してみたいと思います。

学習指導要領が与える影響

2002(H14)年から始まった現在の学習指導要領(通称 ゆとり教育)の期間は黒地に白抜き文字で、新指導要領への移行期間を青地に黒い字で、それぞれ示しています。また、今年4月から中3生になる学年については赤い枠で囲っています。

新学習指導要領が実施予定とされている年度と、移行措置開始年度は次の通りです。

小学校:2011年度から(2009年度より新学習指導要領の一部が先行実施)
中学校:2012年度から(2009年度より新学習指導要領の一部が先行実施)
高校:2013年度から(2012年度より理科・数学など一部から新学習指導要領を先行実施)

上の表によると、1996(H8)年生まれの学年は小学校6年間をゆとり教育の下で過ごし、中1から高3の6年間は新指導要領への移行期間という「ゆとり教育の揺り戻し」的な内容の中で学ぶことになります。しかも、そのうちの高校3年間は高校で初めての新指導要領実施(移行措置期間ではありますが)となりますので、各校でもいろいろと混乱が起こることが予想されます。

つまり、この春中3生になる皆さんは小学校~高校の12年間は新旧の学習指導要領に大きく振り回されることが運命づけられているのです。

さて、次に大学入試について話を移しましょう。

上の表内で示したとおり、1996(H8)生まれの皆さんが大学入試を迎える年である2015年には「センター試験 理科8科目化」が待ち受けています。また、その次の年である2016年には「センター試験が2種類に分割される予定」ともなっています。

このように、大きな変更が予定されている前の年の入試では、浪人してしまって翌年の新制度で入試を迎えるという「ややこしい」ことを避けるために、受験生が自分の持つ力と比べて比較的手堅く合格出来そうな大学を選ぶ、いわゆる「安全志向」となります。

今回の例では、「来年はセンター試験が2種類になるし、全ての教科・科目が新課程内容になるから面倒くさそう。何としても浪人だけは避けなければ!」ということで、現役合格にこだわって受ける大学の難易度を落とすことが予想されます。

次に中3になる皆さんが大学入試を迎える年には、いわゆるチャレンジ受験者が減少して、絶対に合格できる大学を志望する受験生が増えるでしょう。その結果、各大学の入試難易度がアップすることになるでしょう。

最後に、今年の春に中3になる皆さんにこれまで起こったことや今後待ち受けていることをまとめてみますと・・・

①小学校の間は「ゆとり教育」の下で育った
②高校の新学習指導要領の移行期間は混乱が予想される
③大学入試を迎える年には、センター試験の理科が8科目化される
④その③の翌年はセンター試験が難易度別に2分割される予定
⑤浪人することで④に巻き込まれるのはイヤなので、現役合格にこだわって受験校を下げる
⑥その⑤の結果、各大学のレベルが上がる

新中3生の皆さん、そしてその保護者の皆さん。

目の前に迫っている高校入試のことで頭がいっぱいでしょうけども、この機会に高校生活や大学入試のことも視野に入れた高校選びをするように心がけて欲しいと思います。

そのためには、早めから準備をしておくことが肝要です。特に開成教育グループは高校入試の対策はもちろんのこと、個別指導学院フリーステップを筆頭に大学入試についてもしっかりとしたサポートをご提供しています。

高校入試だけではなく、高校生活や大学入試も視野に入れた塾選び。新中3生にはこの点が重要になるでしょう。この機会に開成教育グループ各教室にお越し下さい。

センター試験 難易度別に2種類に分割?理科8科目化?

2011年3月17日 木曜日

1月15・16日に実施されたセンター試験ですが、ここの所矢継ぎ早にセンター試験にまつわる様々な報道がされています。新聞記事を引用しながらまとめてご紹介したいと思います。

まず、何はともあれ、現在のセンター試験がどの程度の規模で実施されているのか、を知っておく必要があります。先般、高校3年生・浪人生が受験した今年のセンター試験の出願者数について、昨年末の新聞記事で確認してみましょう。

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センター試験:志願者増 55万8983人に(2010年11月30日毎日新聞より)

大学入試センターは30日、来年1月15、16日に実施されるセンター試験の確定志願者数は、前年より5615人多い55万8983人と発表した。

志願者のうち高校などを来春卒業予定の現役は44万2420人で、現役の志願率は41.5%と過去最高だった。志願者全体に占める割合は79.1%。既卒者は11万211人、高校卒業程度認定試験(旧大検)の合格者らは6352人。

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18歳人口が減少している昨今ではありますが、大学進学を希望する率が年々高まっています。それがセンター試験の現役志願率41.5%という、「過去最高」の数字に表れています。それが志願者数の増加にもつながっています。

そんなセンター試験ですが、現時点で様々な問題点を抱えています。特に、東京大・京都大のような日本最難関の大学を受験する人も、短期大学を受験する人も、同じセンター試験を受験して学力の査定が行われている点を問題視する声が多く聞かれるようになっています。それに合わせ、大学入試センターはセンター試験を難易度別の2種類に分けることを検討しています。

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センター入試、難易度別に2種類 16年導入を検討(2010年10月25日朝日新聞)

大学入試センター試験を難易度別に2種類にする検討を、独立行政法人「大学入試センター」が始める。新しい学習指導要領で学んだ高校3年生(現在の中1)が受験する2016年1月実施が目標になる。えり好みさえしなければ誰でも大学に入れる「全入時代」が迫り、受験生の学力の幅が広がったことなどから、1回1種類のセンター試験で学力をつかむのが難しくなったためだ。

現段階で想定されているのは、試験科目を主に国公立大(一部の私大も含む)の志願者向けのものと、私立大向けの基礎科目型に分ける2種類の試験。大学が二つのうちどちらかを選び、志願者が受験する仕組みが考えられる。両試験とも一定量は同じ問題を出し、それぞれの得点を換算できる仕組みにするという。

また、ペーパー試験を課さないAO・推薦入試の受験生を対象に、高校段階の学力を把握するテストを、センター試験とは別に導入するかどうかも検討するとみられる。

センター試験は今年1月、国公私800を超える大学・短大が利用し、約52万人が受験した。試験問題は平均60点水準で作られている。だが、成績分布のグラフが上位と下位の二つの山になっている科目もあるなど受験生の学力格差が広がる兆候が表れてきた。

背景にあるのは、少子化と大学の定員増だ。18歳人口が92年の205万人から120万人に減少。一方で、大学の定員は増え、AO・推薦入試は私大の入学定員の半分以上を占める。志願者数に対する入学者数の比率は90年の6割台から9割台に。「全入」も目の前に迫る。

受験生の質も変化。個を重視する教育のため、普通科高校の卒業単位に占める必修科目の比率が減り、共通の科目を学ぶ受験生が減った。

その結果、難関大学ではセンター試験での結果で差がつかなくなり入学者選びに役立ちにくい一方、学力が一定程度に達していない受験生には問題が難しいという指摘も出てきた。同一試験で全体の学力を把握するのが難しくなっていると指摘され、早めに手を打つ必要が出てきた。

センター試験については、今春の事業仕分けや、文部科学省による09年度業務実績評価でも、入試センターが入試改善を視野に入れた取り組みの中心的役割を果たすことが必要と指摘された。同時に今後の検討についても文科省は理解を示している。

同センターは11年度から始まる5年間の中期目標、中期計画に本格的な入試改善を進めることを盛り込む考えを固めている。入試改革を議論する理事長の私的な懇談会を11月中にも開き、議論を始める予定だ。

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「新しい学習指導要領で学んだ高校3年生(現在の中1)が受験する2016年1月実施が目標」とあります。新指導要領で学ぶ子どもたちが大学受験を迎えるころには、大変大きな話題となっていることでしょう。

最後にご紹介するのは、この中で最も新しく報道された、センター試験の理科で出題科目を現行の6科目から8科目に増やすことが検討されている、という件です。

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センター試験、理科は8科目に(2010年12月11日毎日新聞)

大学入試センターは10日、2015年のセンター試験で実施する数学と理科の2教科について、出題科目案を公表した。関係者らからの意見聴取などを経て、来年3月に正式決定する。

案によると、理科は現行の6科目から8科目に増え、「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」「物理」「化学」「生物」「地学」に変更する。数学は現行通り4科目で、名称も変わらない。

高校の新学習指導要領は13年度から実施されるが、数学と理科は12年度から先行導入されるため新指導要領で学んだ生徒が受ける15年1月のセンター試験から対応することにした。浪人生には、現行の指導要領に即した問題を別に作ることを検討。理数以外の教科も来年秋までに新しい出題科目案を発表する予定。

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・・・ここにも「新指導要領」という言葉が出てきました。

2つ目の記事といい、3つ目の記事といい、先行導入される学年も含めて新指導要領で学ぶ子どもたちから導入開始が予定されているものです。それだけ、新指導要領下で学ぶ子どもたちに期待をしたい、そういうことなのでしょうか。

共通一次からセンター試験へと変貌を遂げたように、センター試験にも今後また大きな変革が待っています。そしてその変化が大学入試動向にどのような影響を与えるのか?そのために今からどう準備すべきなのか?については、また別のエントリーで詳しくご紹介することに致します。