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開成教育グループ


2017 年 7 月 のアーカイブ

数学と科学・技術 その15

2017 年 7 月 24 日 月曜日

ある村に、ヒツジ飼いの男の子がいました。来る日も来る日も、仕事はヒツジの番ばかり。男の子はあきあきしてしまい、ちょっといたずらをしたくなりました。
「たいへんだ!オオカミだ。オオカミだ」

皆さんご存知の、イソップ寓話です。何度も嘘をついて、とうとう信用されなくなってしまった少年の話ですが、どうして信用されなくなったのでしょう?「嘘をついたからじゃないか」と当然思うでしょうが、ここでは、少し数学的に考えてみることにします。

村人はおどろいて、かけつけてきました。それを見て、男の子は体を折り曲げて大笑いしていました。

最初、村人は驚いて駆けつけてきました。少年を信用していたのですね。しかし、この1回の嘘で少年の信用度は下がったはずです。どれくらいになったかを見積もることにしましょう。実は、こういったことを扱う数学として、高1で習う条件付き確率があります。そこで少し状況を整理しておきましょう。「少年は正直に言っている(H)か、嘘をいっているか(L)のどちらか」です。そして「狼は来ている(C)か、来ていないか(N)のどちらか」です。いつでも嘘を言うわけではないですし、正直に言ったつもりが、見間違いで狼が来ていると勘違いしている恐れもありますから、(H)=(C)ではないですし、(L)=(N)でもないですね。色々と入り組んでいますので、定量的に見間違いが起こる確率などを設定して状況を整理してみます。

正直に言っている(H)ときに、狼が来ている(C)=正しく警告をする確率を 70%
正直に言っている(H)ときに、狼が来ていない(N)=見間違いをする確率を 30%

としてみましょう。10回中3回の見間違いは多いのでは、と感じる人もいるかもしれませんが、まだ少年なので、それほど熟練の羊飼いではない、ということにしておきます。一方、

嘘を言っている(L)ときに、狼が来ている(C)=羊が食べられる確率を 10%
嘘を言っている(L)ときに、狼が来ていない(N)=村人が騙される確率を 90%

にしてみます。村人はかなりの高確率(90%)で騙されると思ったからこそ、少年は嘘をついたのでしょう。さて、少年は1回、嘘をついてしまいました。信用度はどれくらいになるでしょう?何を見積もればいいかは、条件付確率の公式が教えてくれます。狼が来ていない(N)という結果のもとで、少年が嘘をついた(L)のは何割くらいかを考えればいいのですから、高校の数学が教えることによれば、

を計算すればいいことになります。今は、狼が来ていない(N)という結果が判明していますから、分母(母数)に、狼が来ていない(N)確率をもってきて、分子に、そのうち嘘をついていた(L)確率を持ってくる、というのがこの式の意味です。確率とくるとピンとこない人は、確率を総数と読み替えれば、これが「嘘つき度合い」を表すということに納得するでしょう。では、分母、分子を計算してみます。分母は、狼が来ていない(N)確率なので、①正直(H)→狼が来ていない(N)の場合と、②嘘(L)→狼が来ていない(N)の2通りを足せばよく、

で計算できます。少年が正直者かどうかは最初のうちはわかりませんが、わざわざ嘘をつく人はそんなに大勢いないので、正直者は 8 割いるとします。

その結果、

となります。次に分子ですが、それは今計算した (1) の式のうち、②嘘(L)→狼が来ていない(N)部分になるので、

になります。したがって嘘つき度合いは、

2割くらいしか嘘をつかないと思われていたのが、4割強、嘘をつくとみなされるようになりました。かなり「嘘つきだ」とみなされるようになってしまいました。しかし、まだ「嘘つき度合い」は半分以下です。少年は図に乗ってしまいました。

何日かして、男の子はまた大声をあげました。「たいへんだ!オオカミだ。オオカミだ」村人は、こんども飛び出してきました。男の子はそれを見て、またもや大笑い。村人は怒って帰っていきました。

「嘘つき度合い」はまだ半分以下だから、村人は飛び出してきたのでしょうか?何はともあれ、村人はまた騙されてしまいました。少年の信用度はどうなったでしょう?1回目の経験を考慮して(2)の式のところを

と「嘘つき度合い」が4割強になった数字で同じ計算をしてみます。その結果は、

とうとう、「嘘つき度合い」が7割近くになってしまいました。この後、どうなったでしょう。皆さんご存知のとおり

ところがある日、本当にオオカミがやってきて、ヒツジの群をおそいました。男の子はあわてて、叫び声をあげました。「オオカミが来た!オオカミが来た!本当にオオカミが来たんだよ!」けれども村人は、知らんぷりです。なんども嘘をいう男の子を、だれも信じようとはしなかったのです。かわいそうに、男の子のヒツジは、オオカミにみんな食べられてしまいました。

嘘はつかないほうがいいですね。
ん、オッといけない、この文章の表題は「数学と科学・技術」でした。今の話は、どう科学に関連しているのでしょう。実は、今の思考過程を検討してみると、「狼は来なかった」という結果から、「少年は嘘つきである」という原因を探る、ということをしていたと考えることができます。このように結果や、経験をもとに、原因を探るという手法は色々な分野で応用がなされています。例えば、「この薬を飲んだら体調がよくなった」から「薬には薬効がある」という結論を定量的に出す(薬にはフラシボー効果というのがあって、薬効がなくても体調がよくなることがあるので、本当に効くかどうかを、客観的に測らないといけないのです。)などが有名ですし、「不良品が発見された」から「A工場が怪しい」という結論を出す問題は、高校数学の問題集にも載っていますね。世の中には色々な数字が飛び交っています。その中で正しく考えるというのは難しいことですので(特に確率の問題はよく誤解が起きるといわれています。)、若いうちにしっかりと学んでください。

開成ハイスクール数学科 村上豊

定期テスト真っ盛り!!

2017 年 7 月 17 日 月曜日

いよいよ夏本番。目の前には夏休みが待ち構えています。高3生にとっては正念場と言ってもいいこの夏休みをどう過ごすか、とても大事ですね。今回は短期戦、長期戦の両方の面から「計画」について考えてみたいと思います。

私は高校3年間部活動に明け暮れ、引退は高校3年の11月。もちろん夏休みは練習、練習、試合、練習と休む間もありませんでした。11月に引退したとき、来るべき1月のセンター試験、3月の2次試験までどう過ごすのかというのは大きな課題として私の上にのしかかりました。わずかな時間で成果を上げるには時間を少しも無駄にはできません。そのために「計画」がとても重要だったのです。周りのいろいろな意見を参考に自分なりに計画を立てました。ある人は大まかな長期予定を立て、それを日ごとに分割。毎朝、細かいその日のタイムスケジュールを作り、その通りに取り組んでいました。またある人は使用する教材を決定すると、教材に合わせて期日を決め解き進めていくというスタイル。その他にもいろいろな計画の立て方がありました。その中で私が採用したスタイルは「期間設定型計画法」です。私は最初に「今日から2週間数学」「その後2週間物理・化学」「その後1週間で英語」という期間を設定したプランをスケジュール帳に書き込みました。そして期間を設定した中で、具体的なスケジュールを割り振るといったプランニングです。また、一日のタイムスケジュールは「10時から夜10時までで10時間勉強」「日曜は絶対勉強しない」という、これも期間を定めるルールから始めました。そして、この通りに解き進め、受験を乗り切りました。

さて、この計画には私自身の性格に合わせた2つのポイントがあります。1つは2度勉強できない「背水の陣」を盛り込んだことです。時間に制約がある私にとって2度同じことを勉強するだけの時間はありません。だからこそ決められた期間に定めた勉強を是が非でも終わらそうという決意が生まれました。もう1つは計画を必ず成功できるように計画に「余裕」を持たせたこともポイントです。
まわりの人の例を聞いていて感じたことは「計画」は立てるだけではなく、成し遂げないといけないということです。極端な話「勉強しない」と計画で決めたなら、その時間は何があっても休憩をとるという徹底も必要です。細かい計画を積み上げることが苦手な人は、最初に中長期的な計画を立ててみることから始めると、案外細かな計画や順序が見えてくることがあります。夏は受験の天王山です。強い意志を持って、目標に向かって「計画」を成し遂げましょう。

開成ハイスクール 数学科 木村智一郎

2次関数から微分・積分へ

2017 年 7 月 10 日 月曜日

● 中学数学から高校数学へ

今回の指導要領変更の根幹は、知識・技能の習得・習熟からそれを活用する能力へと軸足を数歩踏み出しています。では、数学における特質は何かといえば以下の様にいえるでしょう。

①授業時間数(中1・3で+35時間)や学習内容(単元やその項目)の大幅な増加

②学習内容のレベルで発展的学習の拡張、つまり、上限撤廃への第一歩

③具体的には、指導要領中の内容区分で「数量関係」が「関数」へと表記自体を変更

では、その一端をここでご紹介しましょう。

設例1)改訂教科書での発展問題…知識の習得

関数yaxで、xpからqまで増加したときの変化の割合はいくらか?

 

中学で学習する「関数の変化の割合」とは、xyの増加量に対する割合なので、(中2内容)

よって、変化の割合となる。

今回の改訂教科書の一部には、これを公式として取り上げるものがあります。

ところが、2011入試において、これを公式として認めず、実際の公立入試で誤り(減点)とされた答案もありました。(これは、塾では既知のものとして扱っていたためです。)

しかしながら、今後はここまでの知識習得を前提に出題されるため、正解となるでしょう。

設例2)発展問題からの授業展開…技能の習熟

図Ⅰで、放物線上の2点A、Bのx座標がpqのとき、その直線の傾きは?

これはよく考えれば、「直線の傾き=2次関数の変化の割合」

であることを示すものです。

多少厄介な問題ですが、塾では当たり前のこととして今までも授業内にて指導しています。さらに、数学が得意なクラスでは公式として切片=-apqまでの習熟を図り、放物線上の2点のx座標から、その2点を通る直線の式:までを学習対象としています。

設例3)実際の入試問題…活用能力を試す

図Ⅱより放物線と平行な2直線の交点で、点Sのx座標の値tはいくらか?

設例4)さらに発展・昇華させると・・・

図Ⅲの放物線上の2点A、Bを通る直線の傾きは・・・(そのまま高校内容まで突き進むと・・)

(図Ⅲの1)では、点A、Bのx座標から、その傾き=が導かれる。

ただ、ここで横軸、縦軸をそれぞれ時間軸、距離軸に擬えると、その傾きは2点間を進む「平均の速さ」を意味することとなる。さらに、ここで点Bを除々に点Aに近づけて、終に2点が重なるとき、つまり(図Ⅲの2)その直線は接線となり、その傾きは点Aにおける「瞬間の速さ」を表すことになります。すなわち、その傾き==2apとなる。

 

※実は、この曲線上の1点における接線の傾きが高校2年生で学習する「微分係数」と呼ばれるものです。ニュートンやライプニッツなどの巨人の肩を借りて得た微分・積分を理解することで、未知の世界(数学に限らず、広く現実世界)への扉を開き、さらなる道を探索することが可能となります。新たな世界に向けて大いなる一歩を踏み出しましょう。

※そして、これは小中高一貫教育を実施している開成教育グループだからこそ実現可能であるといえます。

 

最後に、若干、背伸びをしたきらいもありますが、もう一つの隠れたテーマである「理数科離れからの復権」を見通した教科書の基盤を少しでも予感していただければ幸いです。

開成ハイスクール数学科 矢倉 重人

定期テスト真っ盛り!!

2017 年 7 月 3 日 月曜日

新しい学年の2回目の定期テストがいよいよ始まった高校も多いのではないでしょうか。中間テストで思ったほど点数が取れず、悔しい思いをした方も少なくなかったかもしれません。特に高校1年生は中学校時代とは違い科目の多さに圧倒されテストの準備が不十分だった科目もあったかもしれません。しかし、中学校のときと同様で範囲内の勉強をきちんとすれば点数が取れるテストですから、試験前の準備が大切ですね。残りの時間でしっかり準備をしましょう。
定期テストが終わると夏休み。1学期の積み残しがある方、特に英数に課題を多く抱えている方は夏期講習会を利用しましょう。復習はもちろんのこと、2学期の準備もいち早くできるのでこれからの高校生活も安心です。詳しくは各教室にお問い合わせください。
さて、その夏休みですが3年生にとっては受験生として実力をつける絶好の機会です。塾の自習室にこもって朝から晩まで勉強しようと既に計画を立てている方も多いと思います。
大正解です。この夏の充実度合が2学期からのあらゆる模試で結果として出てきます。楽しみですね。量、質ともに確保してこの夏を乗り切ってください。
では1年生、2年生はどうかといえば…こちらのお話は何度も、いろいろな先生から、先輩から聞いている話だとは思いますが、もう一度ここで言わせてもらいます。大学受験のほとんどが「高1、高2の内容」です。今の高1生が最後のセンター試験受験者となるわけですが(ちなみに私は最初のセンター試験を受けました…)センター試験の数学は「数Ⅰ・Ⅱ」「数A・B」です。すべて高校2年生まで、実際は高2の秋までで終了する内容です。となれば今習っている内容が大学入試でも必要になるわけですから、今のうちに片づけておくことが必要なのは、もうみなさんもわかっていることと思います。クラブも忙しい、思い出作りも忙しいけれども大学受験の土台作りにも時間をかけましょう。そうすれば第1志望校への道を周りのライバルより先に進むことができると思います。
 と偉そうにお話をしてきましたが、かく言う私は思うような結果にはなりませんでした。高2まで夏休みをクラブで過ごしてしまったからです。高3の夏だけでは間に合いませんでした。
 みなさんの夏はこれからです。今年は特に暑いとの予報です。涼しい自習室で快適に夏を過ごしませんか。

開成ハイスクール 数学科 秋田純一